北海道Tour22#7 2022/8/16(火) 大村→仁宇布

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 

 雨だろうと何だろうと朝はやって来る。4時に起きてカップ麺2つをメインディッシュに準備のような行動を進めてゆく。しかし、外では雨が、ざーざーと音が途切れない本降りだ。つくづく昨日タクシーを予約して良かったと思う。
 6時からのニュースで、JRの運休情報を知った。何と函館本線と根室本線が運休、つまり、一昨日良い気分で乗ったおおぞらととかちが運休になっているのである。原因はもちろん台風12号崩れの大雨だ。JR北海道の2大幹線が運休になっているほど、全道は大きな影響を受けているのだ。こういう状況で、今日乗る予定の宗谷本線はどうやら問題無く動くようだ。危ねえ危ねえ。
 しかし、JR北海道のサイトで運休情報を確認する過程で、今日乗る宗谷本線も、つい最近の8月10・11日に音威子府・筬島間で運休していたことが判明した。やはり大雨による被害が原因とのことで、線路の路盤がかなり綺麗にすかっとなくなってレールと枕木が宙ぶらりんに繋がっているいる写真と、12日から復旧したという記事を読むことができた。それだけの工事をわずか2日で済ませたのだから、むしろこちらに驚くべきかもしれない。頭が下がる。一昨日の15日に利用したおおぞらも、やはり12日に大雨の影響で一部が運休していたようだ。
 という具合に、今年も首の皮一枚で私の旅は繋がっているのだ、ということを理解した。今年も、というよりこういうことは、もう夏の北海道の常識になってしまったのかもしれない。

  発着地点 到着早すぎ案 実施案
美瑛発
富良野線
旭川着
8:01

08:34
9:52

10:26
12:25

13:01
旭川発

宗谷本線

美深着
9:00

宗谷

10:15
13:35

サロベツ1

14:50
美深発
名士バス仁宇布線
ファームイントント着
11:10

12:20
15:50

16:20

 サイドバッグをまとめてフロントバッグを閉め、輪行袋を玄関に置いてほぼ出発準備完了。8時からブランルージュで朝食だ。例によって朝食もとても美味しい。
 今日はもう7日目。とはいえ今日を含めて旅程はあと5日。例年の10日行程と今年の11日行程の差は1日だが、その1日はかなり大きい。例年11日行程にできる訳じゃないし、今年だって11日が可能そうならそれこそ半年以上かけて着々と全力を尽くして確保している、まさに血の1日だ。その11日行程で、これから道北を回り、また4日後にここに戻って来る。それが何だか不思議で非現実的で他人事の様にすら思えるほど、落ちついて不足の無い朝食を迎えることができている。しかしやはりそれは旅での現実であり、認識が追いつかないのは歳のせいなのかもしれない。とにかく明日以降も毎日の予定を粛々と着々とこなし、それが4日続いた後再びここに戻って来る計画なのである。そして時は刻一刻と過ぎてゆく。4日後だっていつかは、というより意外とすぐやって来るのだ。
 天気予報はこのあとずっと晴れの予定だ。そんなにうまい話は無いぞとは思うものの、今年の私には気象神社が付いている。期待はできる。

 

 8時50分に宿の前の広場に出た。外は軽く雨がぱらついている。ぱらついてる程度とは言え空は暗く、やはりこの雨の中を美瑛まで下るという気はせず、全く何の前提条件無しに自走かタクシーか選べと言われればやはりタクシーを選ぶだろう。
 9時に予約したタクシーは8:55にやって来た。サイドバッグはトランク、輪行袋は後部座席、フロントバッグと私は助手席で、昨日来たの道を美瑛の町へ。途中では雨が強くなったりして、やはりタクシーで良かったと思えた。

 雨がぱらつく美瑛駅で約1時間、列車を待つ。朝食を済ませたばかりなのに、手持ち無沙汰になって頭に浮かぶのは早くも食欲だ。何か軽いものでいいのだが、それでも軽いものも重いものも、手に入りそうなものは駅前広場の向こう側に洋菓子兼パン屋さんぐらいしか見つからない。どうせ何も買わずに出るんだろうなと思ってお店に入ると、やはり実際に食べたいと思うようなものは無い。お店のせいにしてはいけない、おれは何がしたいんだ一体。
 という一見手持ち無沙汰な時間と無駄な抵抗も、近年は旅先ならではの贅沢で有り難くかけがえのない時間として楽しめている。そして何より、いつかの大雨の時のように、待合室の床があめでびちょびちょということが無い旅先の安全が、大変ありがたい。何と言っても、今美瑛に来ているのだ。

 9:52、美瑛発。美瑛始発の2両編成は意外な位に混んでいる。富良野線、さすがJR北海道の数少ない黒字路線だ。
 10:26、旭川着。13時半過ぎのサロベツ1まで、3時間の旭川滞在だ。とはいえ旭川は雨。どうせ開店まで並ぶ必要がある蜂屋に向かう気はしないし、雨の街を放浪して、蜂屋以外のラーメン屋を新規開拓する気も無い。駅だけで何とかする必要がある。
 まずは江丹別蕎麦で蕎麦を食べ、イオンで昼食用のデリカ弁当を仕入れてから、この際駅ナカ食堂「菜の花」でラーメンを食べておく。イオンができて、旭川駅も大分潰しが利くようになった。

 その後ホームに登り、ベンチで少し30分ほど居眠りした。寝ている間にこちらのホームには特急大雪1が到着し、アイドリングのエンジン音を賑やかに鳴り響かせていた。大雪1は、昨年生田原から乗った183系の列車だ。183系も今年いよいよ引退だそうで、500番台が華々しく北斗で登場した時の白赤オレンジ塗装を復活させた車両もあると聞いている。そして183系の後釜は、あの地上最強の狭軌車両とJR北海道が断言した283系らしい。振り子機構さえ効いて、速度制限が無ければ最強なんだがなあ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 13:35、サロベツ1で旭川発。一昨日のおおぞらに引き続き、無印キハ261系の先頭車、キロハ261のグリーン席に乗車した。JR北海道のグリーン席は、意外にも普通指定席プラス\800で乗車できる。愛するJR北海道のためなら決して高い金額ではない。そんなこと言いつつ、自分じゃ鉄道に乗らない旅をしているのだ。それぐらい列車に乗るときにはお布施しておきたい。お布施したくても、路線が無くなってしまっては元も子も無いし、宗谷本線はいつ区間廃止されても驚かないような状況にある。
 JR北海道の事情に依らず、無印261系の走りは特急料金に値する、なかなかいい走りだ。旭川から蘭留までの平地区間でパワフルに爆走し、塩狩峠もぐいぐい快調に攻めてゆく。ややおっとり気味に塩狩を通過するのは余裕を感じさせるし、和寒への下りで再びトップスピードに上げて、から士別、名寄と走り抜けてゆく。最高110km/hと思えないいい走りである。でも最高110km/hなんだよな。
 14:50、美深着。美深はやはり小雨である。デマンドバスまで1時間、待合室は終始鉄だらけだった。夏だけの訪問客という意味で、自分も似たようなものではある。それどころか鉄道で旅していた頃は、ワイド周遊券しか使っていなかったし。グリーン車に乗ったぐらいであまり大きな事は言えない。

 小雨の駅前広場に出てみたり缶コーヒーを煽ってみたり。待合室での1時間は徒然と過ぎ、時間になったらおもむろにデマンドバス5便がやってきた。こういうバスの挙動には、いつもバスって偉いなあと思う。15:50、美深発。
 美深の平野部、谷間入口の辺渓、そしてペンケニウプ川の谷間へ。2年前に自転車で通った記憶の早送り再生に比べてしまうとバスの走りはゆっくり気味ではあるものの、自転車での下り時間の2倍、30分で仁宇布に着いてしまう。まあそんなもんなのかもしれない。
 同乗した中学生っぽい少年は、やや大きな土産物袋を抱えていた。少年は仁宇布の交差点近く、里山留学の合宿所っぽい建物で降りていった。建物の中で「ただいま〜」という元気な声が聞こえた。

 16:20ファームイントント着。
 2年振りのファームイントントである。「高地さん、去年来なかったっけ」と女将さんに言われたが、いやいや5月に電話したファームイントント、その他の宿が営業しなさそうだったのが、去年北海道へ行くのを止めた理由の一つだったのだ。
 今回の私の部屋は珍しく牧草地側だ。山々を背景にした牧草地の眺めは、道内の宿でも最高級の部類に入るのではないかと思う。この眺めが早朝から存分に楽しめる部屋を、贅沢に一人で占領してしまうのは大変申し訳無い。でも、山側だって仁宇布の白樺の森なのだ。やはりここだけの、道北ならではの森なのである。
 まずは荷物を部屋に置いてから、明日の早朝出発に向けて玄関の庇下で自転車を組立て、その後は食堂の窓側に陣取ってアイスを頂く。コロナ禍になってから、私はビールを呑まなくなっているのだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 夕食は18時。待ちに待ったファームイントントのジンギスカンだ。

 

 夕食中に宿主さんから、来年以降は若い方に後進を譲るとのお話しを伺った。遂にこの日が来たか、とは思ったものの、実は前回辺りからそういう日が来るようなニュアンスのお話しは伺ってはいたので、大きな驚きは無い。基本的には宿は閉めることは無いとのことだが、ファームイントントの大きな楽しみがお二人にお会いしてお話しできることだったので、それは大変残念だ。しかし残念がるより、むしろこの宿に泊まれる現在を大切にせねば。近年、私の旅先で、長らくお世話になってきた宿がどんどん閉まっている。これはもう仕方の無いことである。これで2023年秋の北海道Tourと、その行き先はほぼ確定した。

 もうひとつ、熊について女将さんから驚愕の事実を伺った。明日は朝から晴れの予報である。6時に朝食を頂きその後出発するとなると、西尾峠は早朝と言っていい時間の通過だし、その先下り基調とは言え、上徳志別まで無人の森林を通過することになる。キタキツネにワシにエゾシカぐらいは普通に現れるだろう。熊には出てきてほしくない。
 今年は熊どうですか、と質問したところ、 「この辺では特に変わったことは無いが全道で熊が大変多い。特に道東、別海では牛を食べる熊が出ているらしい」 とのこと。通常ヒグマは乳牛を襲うことは無い。怖ろしい話だ。肉の味を覚えた熊は、人を襲うようになっても不思議じゃないし、過去にそういう熊が起こした事件がよく知られている。石川さんが熊除けの蜂スプレーを持たせてくれた理由がやっとわかった。この話を知っていたら…それでも202kmコースには出かけたかもしれないな。そして202kmコースは今年もとても素晴らしかったし。
 更にその後、秋頃にNHK特集でこの熊がOSO18として乳牛の被害が重なっていることがわかった。かなり用心深く素速い奴のようで、年末の段階でもまだ駆除されていないらしい。

記 2023/2/5

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Last Update 2023/4/15
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