北海道Tour18#1
2018/8/9(木)釧路空港→開陽

本日の起点と終着点
雨の厚床駅 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 釧路空港からは釧路市内、釧路駅への連絡バスが出ている。以前から興味はあったので、実はバス輪行時の予習も出発前に済んでいる。釧路空港から中標津に向かうには、結論から言えば厚床廻り一択で、すぐに空港を出発すれば中標津バスターミナル到着は15時前。バスターミナルがある中標津市街から民宿地平線まで最後の約20kmぐらい、もしかしたら走れるかもしれない。その時の天気次第で決めればいい。

 10:15、釧路空港発。

 

 バスは道道65から国道240と38を経由し、駅の北側を廻って釧路市街へ向かっていった。その間雨は弱まることもあったものの、概ねバスのワイパーは動き続け、路面は乾くことが無いぐらいに降り続けてもいた。自転車で標茶への丘陵を走りたくなくなるのに十分なぐらいの雨であることは間違い無い。

 10:55、釧路駅着。バスの到着場所は、釧路駅前のロータリーから信号を渡った北大通りの駅寄り街区。期待していたロータリーよりやや遠いものの、まあ駅前には違いない。バスに自転車を載せて釧路駅前に辿り着けたこと、たまたまバス到着時に雨が弱まっていたことは有り難いことにも違いない。そしてこうして少しだけでも北大通りを歩けるのも、もう10年以上ぶりのことだ。いや、思い出してみたら少なくとも1996年以前。軽く20年以上が経っている。少なくとも、というのは、夜行まりも乗車前か何かに歩いたような気がしていて、その辺の記憶があまり定かじゃない。

 釧路からは根室本線へ17分の乗り継ぎ、列車は11:12発の快速ノサップだ。もともと単行か2両編成の少ない車両に、今日は更に雨で自転車が大量に乗り込んでいる可能性が高い。乗り継ぎはてきぱきと済ませ、約1時間半の乗車時間に備えて座席を死守する必要がある。寒いのでラーメンぐらい食べたいし、駅の外に駅弁老舗の釧勝軒を見つけて一瞬脚がそちらに向かい始めたものの、いやいやいや席の確保が最優先である。それが30年以上前から青函連絡船乗り換え民族大移動を生き抜いている者の行動というものだ。まあ釧路の駅前に釧勝軒のお店があると思ってさえいれば、天候に左右されたりその時々の条件に流されたりして、お店を訪問できる機会も意外に近々現れるかもしれない。

 とりあえずの急務は快速ノサップ乗車だ。厚床までの切符と駅弁を買ったら残り時間はもう5分ぐらい。急いで列車に向かったものの車内は意外に混んでいて、向かい合わせの4人席に座っていたお母さんと幼い子供2人の一角に辛うじて座ることができた。自転車を載せるところで、運転手さんと同乗の係員の方が自転車の置き場を少し悩んで下さった。列車本数が少なく単行列車が多いJR北海道での、雨の日の輪行実情は大変厳しいことを改めて思い知った。

 

 気持ちと身体が多少落ちついて、Tシャツの上に半袖ポロシャツを着たところで11:12、釧路発。仕入れた駅弁は「鯖の踊り寿司」という、初めて見る新顔だった。これがなかなか美味しい。
 東釧路から先、根釧台地裾の密林に根室本線は続き、雨と低温の霧の中を、キハ54は黙々と森の中を進んでゆく。森の狭間に狭い谷間が現れ、国道44やら尾幌、上尾幌、門静やら、見たことがある風景が時々現れる。その度に、またいつか自転車ツーリングで来よう、と思った。
 外気温が低いのか、窓が結露で曇り始めていた。前の子供は、指で描き始めた絵がすぐに曇ってしまうので、やや不満そうだ。子供とお母さんの平和な空間に他人としてお邪魔するのはやや心苦しいものの、旅先で子供の行動や表情を(気付かないように)ちらちら眺めるのは大変楽しい。しかし気が付くと、私は意識を失うように寝てしまっていた。東京の暑さでかなり疲れているのだった。

 11:58、厚岸着。停車時間は上り列車との交換だけの短い時間だ。厚岸駅と言えば駅弁のかき飯である。ちょうどお昼前なので、停車時間が短くて駅弁の買い出しができないのは残念な気がする。しかし、根室本線の乗客が少なすぎるせいか、駅弁とはいえかき飯は厚岸では受注販売(?)となっているのみならず、駅を出て駅前の店まで買いに行く必要があったはずだ。そして何と、現在は東京駅の売店で、常時かき飯を買えるようになっている。

 
 

 根室本線は厚岸から先、厚岸湾の湿地を糸魚沢まで突き進んだ後、根釧台地上へ乗り上げる。風景は湿地独特のやや背の高い茂みから開けた牧草地に替わり、そのまっただ中を快調に進んでゆく。かつてやや鈍重な走りをしていたキハ40のイメージがどうしてもあるので、キハ54の軽やかな走りが大変頼もしい。
 しかし茶内、浜中、姉別と、一向に雨は上がらない。相変わらず窓は曇っていて、外気の気温もやや低いままのようだ。東京はあんなに暑かったのに、とまるで別世界の出来事のように思い出す。道東にいる限り、ああいう暑さは多分もう別世界の出来事なのだろう。帰ったら8月20日。さすがに8月ももう下旬だから、いい加減ほんの少しでも涼しくなるだろう。なっていてほしい。
 12:41、厚床着。根室行きの列車は駅舎側のホームに到着した。小雨の中ホームの砂利面に降りて、周囲を少し見渡してみる。駅舎まで短い距離を歩くのに問題無い程度の小雨ではあっても、雨の日には助かる。ただし、今日は雨粒は細かくても密で、気温もやや肌寒い。
 今は2面2線のホームは、標津線があった頃2面3線だったことを思い出す。もうその頃から30年近く経とうとしている。感傷に浸りつつも、やはり扉が閉まる駅舎の屋内の方が、空気が落ちついていて外よりは暖かく有り難い。寒いのでフリースを着て、缶コーヒーなど飲みながら、標津線にほぼ沿って走るバスを待つ。

 厚床・中標津間の根室交通バスは、中標津バスターミナル行きの便が、標津線廃止時点のダイヤをほぼ踏襲している。実はこの他に中標津空港行きの便が、ほぼ同じ経路で終着だけ中標津空港行きとして運行されているが、何故か時刻表は別になっている。こちらの便を知っていると時々助かる場合がある。

 

 標津線の廃止時点では、お昼の列車は確か14時台だったような気もする。現時点では快速ノサップからの乗り継ぎが20分。まあ道内ローカルでこの乗り継ぎ時間はありがたい。
 10分ほど経つとバスが来た。早めに乗り込もうとすると、やはり運転手さんがやや煩そうに「自転車は後ろに乗せてくれ」とのこと。近年、道内では公共交通機関でこういう反応をされるのが現状だ。北海道自転車ツーリングが盛んなのは喜ばしいことだが、輪行移動についてそろそろみんな真剣に考え直さないといけないように思う。

 13:00、厚床発。乗客はとりあえず私の他に2人。厚床から国道40を渡った途端、路面の濡れ方が急に増した。道を1本越えると急に天気が変わるのは、北海道の田舎、時に根釧台地ではしばしば見られる現象である。道が通っている場所は、気象上を含むいろいろな事象の境界だったり、そういうそれなりの理由がある場合があるのだと感じられる。

 

 何度か台地を降りて低地の湿原を渡り、また台地上を進み奥行臼へ。
 奥行臼では国道244がオホーツク海岸へ分岐するが、道としては一続きのはずのこちらが直角分岐するように造られている。標津線は道道沿いに中標津へ向かっていたという印象がどうしても先に立つので、分岐のこぢんまりした広場、ほぼ自販機だけのような商店を眺めていたら、バスがいきなり直角に曲がった道を進み続けて少し驚いてしまう。思い出してみればその通りのことを、改めて地図を確認して思い出し、何年ここ来てなかったかな、などと少し考える。そう言えば奥行臼にも、しばらく木造の駅舎が残っていた。昔は砂利道を馬が荷車を曳いていたんだろうな。

 別海、平糸、上春別、共和と、バスの乗客は少しずつ増えてゆき、信号があるやや大きな交差点を渡ると、ひたすら森と牧草地と低湿地だった周囲の風景が急に人家混じりの草っ原になった。分岐してゆく小道も現れ始め、まだ周囲は開けていてももう中標津市街の端なのであり、国道272を越えたのだとわかった。
 しかし、意外にも中標津市街外れの段丘の下りまでは、印象よりもう少し距離があった。近年の中標津市街の拡大ぶりが良く伺える。

 

 14:26、中標津バスターミナル着。民宿地平線までもうあと20km。
 雨の日の輪行時でも、町では雨が上がる場合は多い。しかし今日は中標津に着いても、未だに雨は降ったり止んだりが続いていた。釧路でも小雨だったしな。今日はもう1日雨なのだろう。などと考えて外の軒下で空を見上げていると、「ガオー」というような声を上げて大きな物体が低空を通過したので驚いた。大きな鶴だった。或いは丹頂鶴かもしれない。優美なルックスと、やや大きな鳴き声や小動物の食いっぷりがアンバランスな皆様ではある。
 止みそうだった雨が再び降り始めた。薄ら寒い外ではなく、建物の中で自転車を組もうかどうしようかと悩み、手持ち無沙汰でターミナルの売店でスナック菓子を食べたりするうちに時は過ぎていった。中高年老いやすく学成り難し。そのままあっという間に15時を過ぎたところで、もう民宿地平線の石川さんに連絡して、車で拾っていただいてそのまま町営温泉へ向かう方が良いことに気が付いた。

 

 16:30、中標津保養所温泉着。そのまま明るい内からのんびりお風呂に入って、そのまま宿へ。
 明日の天気予報は雨後曇りとかなり冴えない。初日が全輪行になってしまったというのに、少なくとも明日の202kmコースも絶望的なのだった。

記 2018/11/1

#2-1へ進む    #0へ戻る    北海道Tour18夏 indexへ    北海道Tour indexへ    自転車ツーリングの記録へ    Topへ

Last Update 2019/3/3
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。
Copyright(c) 2002-19 Daisuke Takachi All rights reserved.