盛りだくさんだった今回のツーリングもいよいよ最終日。松山空港発は14時半。まあ最低でも14時には空港に着きたい。できれば松山で道後温泉にも入りたいので、松山着のタイムリミットは大体12時となる。
八幡浜から松山までは鉄道輪行。是非とも特急宇和海に乗り、JR四国が世界に誇る2000系の爆走を楽しみたい。特急宇和海は1時間当たり1本で、八幡浜発は毎時18分、松山着は約1時間。つまり、八幡浜発11:18で松山着は12:18、昼食時間は全く無いし全体的にぎりぎりすぎてちょっと厳しいが、何とか辻褄は合う。八幡浜10:18だと松山11:18。これだと松山駅から道後温泉まで30分、温泉30分、空港までまあ1時間として13時半前。飯を食べたら14時半の飛行機には余裕ゼロでぴったり。これなら松山か空港で余裕ができて、お昼も食べられるだろう。更に1時間早い列車だと更に余裕はできるものの、八幡浜到着を早める必要がある。
とりあえず八幡浜10:18に乗ることを考えると、50km先の八幡浜へ10時着。出発7時で八幡浜まで3時間で行けないことは無いと思うが、やはり宇和海の素晴らしい景色を前にして、余裕の無い行程で後悔しないようにしたい。そして、八幡浜や宇和海沿いでは、できれば揚げたてのじゃこ天を食べたい。というわけで出発はやや早めの6時ということになった。当然6時に出発できるように、起床は4時過ぎとなった。
自転車に荷物を積んでから、宿の前の国道378を海側に渡ってみた。さすがは四国、5時半過ぎなのにまだ完全に明るくなっていない。しかし、決して寒くはない。今日の天気予報は、というより今日こそは本当に晴れそうなのだが、一方黄砂もやって来るとのこと。砂浜に向かって外海を眺めると、遠くの島影はややぼんやりと淡いシルエットで、空も透明感が無い。天気というより典型的な黄砂の影響だとは思うものの、これは晴れというより曇りなのではないか、という気はする。
やはり最後まですっきり晴れとは行かないのだった。
5:45高山「民宿 故郷」発。
高山を出るとしばらく海岸が岩場となり、集落が途切れ、眺める風景は道、海、岸壁、遠景と、その構成要素が単純になる。
たとえ空がどんより気味でも、海面は静かだ。毎日7時前のスタートだったせいか早朝の空気が爽やかに感じられる。ましてや宇和海の海風だ。
田之浜を過ぎると、明浜・八幡浜間で一番大きな半島の突端部を越える、国道378最大の登りへ。
海岸部の登りは登り総量の見通しがいいので何となく視覚的にしんどいものの、最高地点でも標高120mちょっと。
宇和海区間のこういう坂は、今回の計画段階ではことごとく忘れていたのだった。
登ってみればまあ順当に120mなりの登りだし、小半島横断系細道県道にありがちな直登や10%勾配も無く、経路短縮の命題と基準勾配7%を守りつつ、細かく入り組んだ山肌に律儀に道が貼り付いてゆく。
そんな岬越えの道には、確かに少しだけ16年前の訪問時の記憶があるように思えた。
最高地点を回り込んで半島の北岸へ。
道が下り始めると、今までにも増してみかん畑と、運搬用のリフトや小さい倉庫が道端に目立ち始めた。
山肌のみかん畑が、昨日通ってきた宇和島南部より、この辺りには多いように思われる。2001年も蜜柑畑がこの区間で印象的だった。
6:45、下りきった漁村の下泊で自販機を発見、コーヒー休憩とする。
空の雲はやや厚いものの、今のところはまあまあ順調だ。そしてこの先もう大した登りは無い。10時の特急宇和海はまずイタダキだろう。松山以降の自由度が拡がった。
皆江、蔵貫浦、有太刀と静かな内海の小さな湾に賑やかな漁村が断続する。入り組んだ海岸線に切り立つ緑の山、海には小さな漁船がびっしりと停泊している。
西伊豆やどこかのリアス式海岸線で見ているような景色ではあるが、これだけ平坦に細道が続き、これだけ漁村が賑わっている場所は、実はあまり他ではみかけない風景であるように思われる。そしてやはりここまで見てきた農村風景と、どこか雰囲気が共通している。
三瓶は八幡浜までで最大規模の漁港だ。小さな奥まった湾に、ここまでの漁村にも増して密集した賑やかな民家や商店、漁業関係施設が続く。
湾の一番奥から折り返す港には、やや大きな船が泊まっていた。宇和島以来ここまで見なかった大きな船であるのみならず、何と客船だ。そういえばこれだけ大きな港も宇和島以来だ。港にはドラマや1970年代の映画で見かけるような木造の乗り場もみられた。宇和海に浮かぶ島へ向かう船なのかもしれない。
ようやく日差しが現れ、空も一気に青っぽくなってきた。日差しが出ると海、山の色が一気に鮮やかになる。行程的には相変わらず順調だし、最終日ぐらいこのまま最後まで晴れてほしい。
垣生、二及、長早、周木と、道は三瓶湾内から再び外海側の海岸部へ進んでゆく。
中程度の半島越えなど、多少登り下りはあってももう40mも登らない。
地図ではしばらく集落が途切れても、正面には宇和海の海岸線、海上には比較的間近に島が見えている。
半島の先端部などでしばしば感じられる先端部的雰囲気というか、陸地と海の境界というような強烈な緊張感は無い。
穴井はそう大きな規模の漁村ではないが、賑わい、生活感の密度が濃厚に感じられ始めた。それは明らかに八幡浜が近づいていることの現れであるように思えた。真網代は穴井より更に大きな規模の、賑やかな漁港である。道端には「真穴みかん」の文字が見えた。真穴みかん、そういえば確かに真穴はこの辺りだった。
真穴みかんは酸味と甘みがバランス良く濃厚な味で、1個1個に赤い小さなシールが貼ってあるのも印象的だ。私の地元では冬の12月一杯ぐらいまで売っていて、美味しくて毎年の冬の楽しみにしているのだ。
竜崎、ねずみ島という名前の小さい島は、そう思って見れば確かに丸い背中の鼠みたいにも見える。そういう地名にも、親しみ深い人の営みが感じられるようになってきた。
上泊、川名津で、漁村は更に賑やかになった。
さっきから漁村が賑やかになっているが、木造民家や生活空間と一体になった道の風景が都市化しているというより、落ちついた生活感、雰囲気のままそれらの密度が上がるという方向なのが特徴的だ。
やはりそれは、元気な漁村の姿であるように見える。
2001年は八幡浜から南下したこの道、今回津島、宇和島から逆方向に辿ってみても、前回印象的だった八幡浜〜明浜がやはり独特の落ち着きと活気を兼ね備えた風景となっていることが確認できた。
合田から栗野浦は八幡浜までもう最後の港町。朝日に照らされて明るい港町の上に、半島の山を乗り越えて八幡浜へ向かう道が見える。地形図によると標高差は60mぐらい、見上げる道に車は決して少ないわけじゃない。そして半島を乗り越えて港から八幡浜に入るあっちの道は、確か16年前に通っている。道がどんなだったかは思い出せないが、半島を越えてから向こうでもう1回20m程の登って下ってがある。登り総量、短縮効果、車の量などを考えると、海から離れて内陸部を越え、最短距離で八幡浜の裏手に出る国道378の榎峠でショートカットしちゃっていいんじゃないかという気がしてきた。
というわけで脚を向けた榎峠は、しかしながら車は多かった。そして直登気味の登り坂で真上から日差しが現れ、汗が一気に吹き出してきた。やはり失敗だったかもしれないとは思いつつ、下り始めれば想像以上にすぐに八幡浜の町中に到着してしまった。
8:40、八幡浜着。前半曇りだったお陰であまり立ち止まって写真を撮らず、高山から3時間掛からなかった。輪行して切符を買って駅前の売店でじゃこ天を食べて30分、余裕たっぷりかつ必要以上に時間を持て余すことが無かった。半島越えだったら、もう少し時間の余裕が無かったかもしれない。
八幡浜を出発した宇和海8号では、今年から順次引退予定の2000系が、最高の走りを見せてくれた。登りなのに、しかも速度を出せば出すほど加速がいい。カーブ連続の線形も、相変わらずぐいんぐいんの振子で物ともしない。いったいどういう奴なんだ、もうこんな熱い走りをする車両は当分現れないだろう、と思う。
▼動画分秒 打子→伊予市 ターボノイズきんきん振子ぐいんぐいんで20‰爆走 ▼動画分秒 伊予市→松山 平地でも爆走 ええもん見してもらいました
次に特急宇和海に乗るときは、多分もう新型の2600系に変わっていることだろう。2600系は通称なんちゃって振り子の車体傾斜装置で傾斜角度1.5°らしいが、2000系同等の走りが本当にできるのだろうか、とも要らぬ心配をする。
松山では念願の道後温泉本館へ。近くのホテルの日帰り湯でも雰囲気はあるので悪くないんだが、やはり木造本館は価値がある。西湯の方がぬるくて好みなのも相変わらずだった。
記 2017/7/4
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