高知空港→土佐山田→土佐山
(以上#1-1)
(以下#1-2)
→河口→★
(以上#1-2)
(以下#1-3)
→郷の峰峠→小松
83km
ルートラボ
9:35、高知龍馬空港着、荷物を受け取ると9:55。いくら5時台に家を出ても到着はどうしても10時前だが、これは仕方無い。
自転車を組立て、10:25、高知空港発。
空は天気予報通りの晴れ。微風がからっと涼しく、緑が少ない空港でも明るい日差しに新緑が鮮やかでうきうきする。5月の緑と明るさには、何か心をかき立てるものがあると思う。
やや広めの空港取付道路では、信号待ちの車が数台連なっている。こちらは早々に細い脇道から用水路沿いに北へ向かう1本道へ。農道を舗装しただけのようなこの道は、少し北で県道31となり、土佐山田を経由して高知平野北部の谷間へ続いてゆく。空港から山間までの平穏な道を探していたら、すっと一直線に北へ向かう道が目に着き、GPSトラックに組み込んだのだ。近年はこの方法で平地の幹線道路をしばらく走るということがとても少なくなり、非常に助かっている。
細道を北上してゆくと、田んぼや草むら、集落の緑が道と一体化しているように近く、その色が高知空港より遙かに明るく軽やかに感じられるのが大変嬉しい。
空港近くの平野部だというのに、四国特有の、田んぼや農家敷地を囲む石垣があちこちに目立つ。水が張られてはいるものの、まだ田植えが済んでいない田んぼからは、蛙の声が賑やかだ。サナエトンボの姿も見られる。もう10時過ぎ、追い風気味の風はからっと爽やかだが、日差しはやや暑く、自分は今ツーリングに来ているのだと実感する。
細道は高知東部自動車道をくぐり、国道55と交叉で通過。次第に幅が拡がって、普通のローカル県道風の表情になっていった。ただ、車はと言えば乗用車や軽トラがのんびり通るばかり。のんびりと緩めの良い道だ。
高知空港から土佐山田までは1/5万地形図縦半分未満。意外に早く北側の山々が近づいてきた。
土佐山田で10mぐらいの低い大地に乗り上げると、周りは住宅地に入ったのか、明らかに住宅の密度が増した。家並みには、昭和の木造民家が高度経済成長もバブルも経由せずに時を経たような、落ち着いた伝統在来工法の民家が目立つ。住宅メーカーや新建材より、地元の大工さんが作る方が安い土地柄なのかもしれない。土讃本線を渡るとそんな住宅地が町中に変わり、セブンイレブンを発見。食材や水を補給し、11:00、土佐山田発。
町中を出て、県道31はやや交通量が増えてきた。ここでも県道31をショートカットするような経路をGPSトラックで組んである。
何となく選んでつなげた細道は、初っぱなからしてダートだったり、路面が舗装に戻ってからも畑や田んぼの中で心配なぐらいに細くなったり、土手へ登って川を渡ったり。かなりのんびりと開放感のある道だ。
再び近づいてきた県道31の北側、久礼田の集落で道沿いに自販機を発見。これから向かう山間区間に向けて少し脚を停めてみる。自転車を停めたところで、販売機が「合田鮮魚店」という店に立っていることに気が付いた。もしやと思って店に尋ねると、やはりじゃこ天を売っていたので、有り難く仕入れておく。
久札田西からおもむろに県道33の谷間へ。まずは本日1発目、標高400mの峠越えだ。
宍崎でほんの数百mぐらい重複する国道32は北側の山中へ去ってゆき、西へ向かうこちらの谷間は比較的静かになった。すぐに谷が狭くなり、片側1車線ずつの道巾は1車線に替わった。脚にも次第に坂の抵抗を感じ始め、フロントをセンターに入れてのんびり進むことにする。
今日はどうせ10時発なので、というより今回の四国では全体的に余裕をみた行程にしてあるので、気分は楽だ。いつものように余裕の無い行程に胃を痛めながら、ノンストップで進まなくてもいいし、もうそんな走り方はできない。
奈路で谷底から斜面へと道が折り返すと、道幅は更に細くなり、もはや単なる集落の細道となった。斜度も上がって汗が出始めたが、いや、まだまだ風は優しい。明るい緑を眺めながら夏はこんなもんじゃないよと思う。それに斜度はせいぜい7%止りだ。
集落から杉の森へ入ると周りは涼しく、小さな沢の脇では更にひんやりとした空気が有り難い。沢の風が有り難い季節になった、と思う。
登り途中の細道には、田野々、中谷、上倉と、農家や畑の手入れが行き届いて全体的に小綺麗な集落と、森が峠まで断続した。
農家の庭先には、この季節らしく、鯉幟も目立つ。大きなものを一発揚げる家、庭一杯に小さな鯉幟を沢山揚げる家。子供の成長への大きな希望、美しい農村の平和な家庭、新緑に包まれた日本の5月が存分に感じられる。住んで暮らすことにはいろいろあるのだとも思うが、ツーリングには来て良かったとつくづく思う。
峠の下り側でも、蟹越・竹崎・土居と、渓谷に集落と森が断続。
大分下った川戸の道端、落ち着けそうなやや広い木陰で少し休憩することにした。
やや放置気味っぽい廃校を川の向こうに眺めながら、コンビニおにぎりとさっき買ったじゃこ天をここで食べておく。じゃこ天はごぼう入り、素朴でなかなか美味しい。
もうお昼。日なたはやや暑いが木陰は涼しい。風がどこかからカジカの声を運んできてくれている。
下ってくるに連れ川幅は拡がっていたが、その透明度はなかなかで、カワトンボやサナエトンボも路上にしばしば登場。
50歳を越えても田舎道はステキなのである。
12:20、土佐山西川川戸発。
もと村役場がある土佐山からも谷間自体はどんどん下ってゆくのだが、途中の向屋敷から県道33は貯水池の土佐鏡湖へ向けて軽く登り返しとなる。
湖を乗り越え川口へ急降下すると、標高はもはや10m台。さっき400m以上まで登ったのに、今度は740mまでまた登り返しだ。まあ良かれと思ってそういうコースを組んでしまっているのだし、時間はたっぷりある。
川口からは県道6で郷の峰峠へ。
山間の町はすぐに終り、県道6は丁寧に手入れされた農村や畑と森が断続する渓谷の田舎道となった。
こういう道をのんびり走りたくて、四国へやってきたのだのと、また思わせられる。
14:00、湧き水を見つけて小休止。朝から意外に道端の湧き水が多い。集落が続くので自販機にも困らない。そして車は少ないが皆無というわけでもない。山間の美しい風景を眺めながら、人里でのんびり落ち着いてツーリング、いや、旅ができる道。そして宿は(私の知る範囲では)お遍路さん対応のためか一人旅に優しい。四国、まさにツーリング天国である。
こちらの谷間はさっきより周囲の山が高く、峠へ向かってやはり終始5〜7%止まりの斜度で高度を上げてゆく。
そして最後まで集落と森は断続した。
白岩、谷口、トキト、それ以降の数々の集落には、少々空屋や休耕田畑もみられるものの、最後まで小綺麗な美しい集落が続いた。
そして斜度が緩い代わりに、時々つづら折れが登場するのも、さっきの県道33と似た傾向だ。
トキト、トチガナロ、コオナロとカタカナの集落もみられるのが、高知や愛媛の特徴かもしれない。
のんびり登って15時を過ぎるとピーク部分も間近、日差しはやや傾き色は赤味を帯び、その日差しで新緑は、透けるような光り輝くような色に変わり始めていた。
道は標高745mのピークを越え、明るい杉林の中を下り始めた。こちらの下り側で杉主体の森を明るく感じられるのは、斜面の落ち込み方がかなり急なので木々の外側がすぐ開けていて、谷がざっと300〜500m程度は落ち込んでいるのがちらちら見えるためだ。
深い谷底には、やや広めの道が日差しに照らされて大きくカーブしていた。こちらは山中の細道でも、谷底まで下ればああいう道が続いているのだろう。こちらは森の中なのである程度の安心感はあるものの、やはりできることなら早くこの稜線近くの区間から谷底に下ってしまいたい。
明るい杉の森をしばらく下り、15:50、郷の峰峠を通過。「国道439」という文字と↑が描かれた細道と交叉したとき、森の向こうに見下ろしていた深い谷間の広い道が何だったか、やっとわかった。あれは国道439だ。2001年、雨の与作を、私は郷の峰トンネルで通過したのだ。
標高615mの郷の峰峠から先は、再び760mまで登り返しとなる。100m以上登り返しなのは事前のルートラボ計画でわかっているものの、16時過ぎの登り返しが気持ち的にはやや厳しい。そして今日の宿泊地、大川村小松までは、下り基調とは言えまだまだ距離がある。
登り返しの序盤、峰石原の集落で一気に森が開けた。
周囲の斜面集落が手前の山腹にぐるっと続き、谷底ま全く見えないほど落ち込んでいるようだ。
谷間の向こう、振り返る方向には、さっきの郷の峰峠らしき稜線凹部が見える。谷間の反対側には、一面杉の森の山肌が、真っ正面に立ちはだかっていた。さすがに600m以上の展望は見応え十分だ。
峰石原から稜線を回り込み、北の斜面へ。
森の向こうに外側の山々をちらちら眺めつつ、標高750mを越えた道はおもむろに下り始めた。
登り同様に下りも斜度は比較的緩めで、下っていて怖くなる程の斜度ではない。
穏当な斜度ではあるが長い間下りは続き、いつの間にか降りてきた谷底には、渓流から渓谷に変わった川原が更に延々と続いた。「瀬戸川渓谷」という看板も所々にみられる。谷間の空気はいかにも山奥らしくきりっと涼しい。モミジを始め淡い新緑の落葉樹が多く、きっと紅葉が見事なのだろうと思う。
しかし、車でもここまで来るのはしんどいかもしれない。自転車では楽しい細道県道6は、車だと何かと気を遣うだろう。それに逆方向の本山からだって、結構な山間だ。
下っても下っても、瀬戸川渓谷は延々と続いた。GPSの道の形と地図で自分の位置はわかるので、さめうら湖までの距離も大体把握はできているのだが、それにしても山深い場所だ。
もうこの先さめうら湖まで下り基調に任せるだけと思っていると、期待に反して最大数10m程度の登り返しも現れた。
しかし、登り返しと共に川幅が谷底一杯に拡がって、やっと湖が登場。
そして七尾、細野とようやく空き家が多めの集落が断続しはじめた。
大川橋でさめうら湖を渡り、17:25、小松「筒井旅館」着。
小松は標高340m、さめうら湖岸に張り付く大変小さな集落だ。しかし村役場がある。大川村は日本一人口が少ない村であり、「筒井旅館」はその役場の隣に建っている。食堂も併設していて、東京で言えば帝国ホテルのポジションにあるような旅館だ。
商人宿っぽい部屋からは、目の前のダム湖と対岸に壁のように聳える山々、そして明るい夕方の空がよく見えた。部屋は少し暑いぐらいで、早速網戸にしてからお風呂で汗を流すことにした。
高知県西部では日中29℃まで気温が上がったとのこと。なるほど。暑かったわけだ。しかしここ小松では、夜から早朝は冷えるらしい。夕食には猪鍋も出た。
明日の天気予報は晴れだが、明後日以降は出発前5日までは晴れ続きだったのに、曇り後雨に悪化していた。まあ、明日が晴れならとりあえずは問題無い。明後日の話はまた明日考えればいい。
記 2017/5/21
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