浜鬼志別→(村道エサヌカ線他)浜頓別
(以上#8-1)
(以下#8-2)
→(国道275他)中頓別→(道道120)兵知安
→(道道647)上頓別→(国道275)音威子府
(以上#8-2)
93km
ルートラボ
(以下#8-3)
仁宇布→(町道他)ファームイントント
(以上#8-3)
3km
ルートラボ
夜明けの時刻になっても、窓の外はいつまでも薄暗い。雨は降っていないようだが、部屋から見える道の駅の駐車場、その向こうに国道238、更に向こうのオホーツク海の上空全てに、厚い雲が低くどんより溜まっている。今日もこんな天気なのか。内陸へ入るとからっとするパターンだといいのだが、生憎天気予報は枝幸町歌登、美深町の両方で曇り時々雨、降水確率50%だ。大変漠然とした予報は毎日同じであり、現在の天気は確実に良くない傾向を示している。それならば、予報が示すわかりにくい実態、そして裏切られる希望的観測も多分同じなのだろう。いい加減嫌気が刺し始めていた。
コース上の歌登まではエスケープが可能であり、現地の空模様を見て輪行するかどうかの結論を先延ばしできる。到着時刻で言えば10〜11時ぐらい。それならば、歌登までは走行予定の時刻に沿って進むべきだろう。しかし良くて仁宇布直行、天気が良ければもう少し回り道したかったとか、計画時に目論んでいた希望的観測などは程遠い状況である。
駐車場に出てみると、薄暗いのみならず肌寒く、細かい霧粒が舞っている。ここが道北オホーツク沿岸もかなりの北部であることを改めて思い出す。薄暗い風景を部屋から眺めていたのでTシャツの上にポロで出てきたが、早々にレインジャケットを着込むことにする。
5:35、ホテルさるふつ発。
走り始めると水滴の密度が濃くなってレインジャケットの表面に結露したり、また霧粒が薄くなって乾いたり。しかしジャケットの中は適度に暖かで適度に通風があり、着重ねの圧迫感が少ない。大変頼りになる。
国道238では、薄暗い灰色の空の下、オホーツク海も牧草地の草原も全て彩度が減衰した灰色の風景が続いた。早朝なのでこの道の印象よりはるかに車が少なく、ライダーハウス、猿払パーキングシェルターと、人気の無い施設が点在し、通り過ぎてゆく。記憶通りに順当な順番と距離感覚で各要素が登場した後、「通称エサヌカ線 2km」の標識が登場。もう分岐の浜猿払手前なのだろう。通称とはなかなか粋な標識である。正式には道の名前は村道エサヌカ線ではないのかもしれないが、全国からこの銘道を訪れる人々のために、標識はこういう呼称にしてあるのかもしれないからだ。いつまでも中津川林道と呼ばれている道を思い出す。
その標識によると、エサヌカ線の起点は実は2km先とのこと。ということは、浜猿払を過ぎ、国道238が内陸へ向かい始めて森の外れにある看板から直接入るのが正解なのかもしれない。何だか浜猿払の集落からエサヌカ線に入る方が、道がより海岸に近く、集落を通る道筋こそが本来の道のあり方であるような印象がある。それに、できればより早く国道238から静かなエサヌカ線に入りたい。
等と思っていると、浜猿払の地名標識が登場。見えてきた橋の向こうから、浜猿払の集落へ。ホタテ御殿、漁港を過ぎ、海岸に続く草原の道が始まった。
雨は降っていないものの、雲がかなり低い。もう頭のすぐ上まで雲が降りてきている。薄暗い雲の低いコントラストに目を凝らすと、動きがかなり速い。よくこの低さで雲が落っこちてこないものだ。頭上の低い雲が周囲の牧草地を覆い尽くし、遠景がまるでダメだ。
極限まで低い雲は、やはり時々地面まで降りてきた。霧粒のような細かい水滴が、小雨ぐらいの雨に替わり、また軽い雨粒ぐらいに替わる間、薄暗い空は決して明るくならなかった。かと思うと、たまに遠方の空が明るくなってまたすぐ暗くなったりもしていた。雲は低く濃密だが、意外にそれほど厚くないのかもしれない。
もともと開けた牧草地の中に起伏も無く延々と続く道なので、雲が低いと更に遠景の変化も感じにくい。雨に耐える気分が、行程の単調さを助長する。
一直線の道に何度か登場するクランクカーブが、進行状況を教えてくれるものの、浜頓別が近づいても前方遠くに現れるはずの山はいつまで経っても全く見えない。浜頓別で天気が少しは変わることを期待していたが、やはり向こう方面も雲が濃いのだった。
今日はやはりどこかで撤退しなければならないかもしれない。しかし輪行に切り替えるとしても、列車の乗車駅は音威子府一拓であり、浜頓別からもまだ予定コースを進む必要がある。
7:10、浜頓別着。町外れのセイコーマートで小休止。今日の行程上には、浜頓別、中頓別、歌登とお昼頃までにセイコーマートが頻発する。今朝は今朝で昨日鬼志別のセイコーマートで仕入れたネタでたっぷり朝食を摂っているので、本来ここではあまりすることは無い。ただ、明日明後日の2日間、コース上にセイコーマートはそう多くないので、そろそろセイコーマートで思い残しが無いようにしておきたい。そんなことを考えて、もう8日目、あと2日しか残っていないのだ、と改めて気付かされもする。
浜頓別から中頓別へは国道272。浜頓別は標高一桁、24km先の中頓別は標高20m台。2つの町はともに頓別川沿いにあり、国道272がずっと川沿いならば、途中にはほとんど登り下りは無い筈なのに、国道272は途中常磐手前で、浜頓別の丘を掠める、丘越えとか登りと認識したくないぐらいの起伏がある。丘を通り抜ける農道に入って北へ向かえば、道北らしい広々とした風景がたっぷり楽しめることはわかっているが、国道272は丘の裾を中頓別へ向かう道なので、その風景は楽しめないし、今日は浜頓別から粛々と中頓別へ向かう必要がある。
出発してからここまでずっと億劫でさぼっていた地図交換中、外国人ツーリストが追い抜いていった。さっきセイコーマートで休憩中、やってきた人だ。最近は北海道でも外国人ツーリストをよく見かけるようになったとも思う。地図交換後、こちらはGPS画面上に現れた農道らしき細道へ入り込むとする。国道272から少し丘側を経由して、国道272より少し先で頓別川の谷間に降りる、寄り道には大変都合がいい道のように思えたのだ。
実際に農道はとても静かな道だった。もともと国道272ですら交通量はそう多くなく普通にツーリング向きの道なのだが、農道はその国道272と、普通の国道と農道の差ぐらいはのんびりひっそりとしていて、看板の「熊出没」が怖い程だ。実際に浜頓別では元天北線の北オホーツク自転車道で毎年訪問の1ヶ月以内に熊が目撃されている状況だし、その辺りの茂みから臭いが漂っているような気もする。まあそのぐらいに静かな道である。
中頓別方面へのルートとしては多少大回りなのと、途中の登り斜度が国道272より厳しいので、時間のある今回のような場合限定かもしれない。
谷間に降りてからもう少し台地裾を経由して、弥生で国道272に合流。
国道272に戻ってはみたものの、この辺から普段はどかーんと正面に見え始めて気分が盛り上がる、敏音知など内陸方面の山々が、今日は裾まで雲の中。その低い雲がまた例によって濃い。見るからにダメそうな雰囲気が漂っている。
8:30、中頓別着。浜頓別から24kmだが、中頓別にはセイコーマートがあるのでここで休憩せねばならない。最近増えて来た国道272のツーリストも大体ここで休憩してゆくようで、ツーリストの駅みたいな印象がある。いろいろがっついていると、先の外人ツーリストが再登場。こちらはけっこう寄り道しているのだが、或いは彼も途中寄り道してたのかもしれない。さすがに3回目の出会いなので、彼とは少し話し込んだ。今日はびふか温泉まで行くとのこと。こちらは仁宇布だが、ほぼ輪行確定の身なので何となくばつが悪い。
じゃ、お互いそろそろ出発しましょうと9:15、浜頓別発。彼はそのまま国道272経由で音威子府方面へ、こちらは逆方向の市街地中央に向かう。とりあえず予定通りの道道120への分岐が市街地中央にあるためで、最終判断は歌登まで延ばせるし、道道120途中の兵知安では、敏音知の東側を経由して上頓別で国道272に合流する道道647にも分岐できる。敏音知の東側を経由する国道272より、道道120〜647の方が距離がやや短いことは、何度かの訪問で知っている。
道道120では、やはり周囲の低山が灰色の雲の中だった。兵知安まで8km、辺りはどんどん薄暗くなり、歌登に向かうまでもないことが実感された。そもそもこの天気だと、歌登まで向かう途中の兵知安峠からしてダメだろう。私にも判断能力というものが少しはあるのだ。
兵知安の歌登21kmの標識には心が動くものの、おとなしく道道647方面に向かうことにした。あちらには行けない。想定タイムリミットより早い決定だが、今日は明らかに音威子府直行の方がいい。ならばもうのんびりしようという気持ちになってしまっていた。
雲はますます低く、時々霧が雨粒に変わったりして推移していた。
もう一刻も早く輪行に切り替えたいと思いながら国道272に再合流、すぐに10:15、上頓別着。
歌登まで行ったとして、歌登からエスケープの道道12が国道272に合流するのも上頓別。かなりの交通の要所である。しかしもともと人口密度が少ないためか、上頓別の集落はかなり寂れていると言っていい雰囲気だ。かなり特徴的な駅前旅館の木造建築にも長い間心魅かれているが、明らかに営業していなさそうな雰囲気だ。その上頓別から天北峠への登りが始まる。脚を止める口実で自販機のコーヒーを飲み、やはりここまで億劫だった地図交換をしている最中、さっき中頓別で別れた外国人ツーリストがまたもや登場。お互い笑って挨拶、そのまま元気に走り去っていったが、逆方向に向かったはずのおやじが何故先にいるのか不思議だろうなと思う。事程左様に、国道272経由より道道120〜647の方が距離が短いのだ。
上頓別からは天北峠への登り。標高190mと決して高い峠ではないが、そもそも昨日の小石峠だって標高167m。道北の峠なんてみんなこんなもんなのだ。それだけに標高450m以上もある知駒峠の存在感は大きい。天北峠について言えば標高は高くないし、上頓別からの登りだって90m程。ちょっとした丘越えぐらいなのだが、途中からは斜度が7%と一応普通の登りだし、峠の音威子府側からは低地の密森がなかなかの迫力で拡がる。道北ではそれなりの峠なのだ。
その天北峠を越えると、何とここまでの天気が一転、急に晴れ始めた。あまりに予想外の意外な展開である。少しの間
「なんだ晴れるんじゃないか、これで音威子府までは降られることは無いだろう」
などと思いながら、下りかけたところで気が付いた。これなら歌登に向かうべきだ。
そこで又登り返して歌登方面へ戻ると、やはり相も変わらず辺りは雲の中であり、雨まで降り始めた。やはりあちらはダメなのだろう。何だか残念だが、今日はもう迷わず音威子府へ行くことにした。
天北峠から音威子府まで10km強。峠から続く7%の短い下りが片付いた段階で、あらかた空の雲は消え失せてしまっていた。こうなると青空に眩しい日差し、明るい緑の森の下り基調と、何の心配も無いお気楽ツーリングだ。
これなら国道40を走って美深に行けるかもしれない。しかし国道40、10年ぐらい前なら追い風基調だったものの1時間強で行けたこともあるものの、やはり車が多いのは嫌だし。一度輪行に変わってしまった頭の中はなかなか切り替わらない。止めておこう。
11:30、音威子府着。
天塩川の谷間に出てから、もうすっかり暑くなっていた。厳しい日差しの中で、駅前での輪行作業が暑くてたまらない。ちんたら輪行作業を終えても、まだ列車まで1時間近くある。こういう時に普段はなかなか訪れにくい音威子府蕎麦を食べるべきだ。いや、近年道北て天気が悪くて輪行ばかりなので、最近は毎年駅蕎麦を食べることができているように思う。その駅蕎麦が妙に混んでいる。そしてそれ以上に、普段お店を切り盛りしている老夫婦と、その娘さんお孫さんらしき方がけなげにもお手伝いしていた。最北駅蕎麦として旅行者に人気のこの音威子府蕎麦、少なくともこの期間だけはなかなか賑やかである。
13:07、音威子府発。今日の各停には輪行自転車は私以外乗っていない。当たり前だ、今日のこちらの天気なら、みんな国道40を走っていて輪行なんかしないだろう。しかし、美深に出て見上げる函岳の向こうには濃く湿っぽさそうな雲がたっぷり溜まっていた。あの中はどうなっているかわからないのである。
13:47、美深着。気温は31℃。しかし予約しておいたデマンドバスで仁宇布に向かうと、途中で見事に空が曇り始め、その雲は仁宇布近くでかなり低くなってきた。歌登から仁宇布へ向かったらどうなったかを想像し、やはり今日の輪行は間違っていなかったかもしれない、諦めるには十分な曇りである。
14:40、仁宇布「トロッコ王国」到着。去年と同じく15時便に間に合うことができたので、折角なのでここはトロッコに乗っておくことにする。
トロッコ自体が大変楽しいのは去年と同じだし、今回はトップバッターを拝命した。
しかし、トロッコ乗車中も結局雲は低いまま、途中雨がぱらっとは来たが、それ以上降らなかったのが有り難いというべきというぐらいの曇天だった。
16:40、ファームイントント着。今年もいよいよ終盤のファームイントントだ。トロッコに寄ってきた旨を報告すると、「トロッコ料金\1800がファームイントントで特別割引券\1200が買える」ことを教えていただいた。昨年も聞いたはずなのに、すっかり忘れていたのだった。まあ私にはトロッコは\1800でも安いと思えるので諦めは付くし、ファームイントントに寄ってからだとトロッコは1便遅れてしまい、風呂上がりに食堂でサッポロクラシックを呑みながら夕暮れの牧草地を眺めるのも1時間遅れてしまう。
女将さんによると、仁宇布は毎日こんな天気らしいとのこと。意外にもあまりまとまった雨は降っていないらしいが、西尾峠方面や山の中はわからないらしい。ただ、私が仁宇布から美深に向かった一昨日は、 「あの日は変だった。雷が怖かったよー。降った時間はそう長くはなかったが」 しかしそれでも、やはり山方面には黒い雲がいつまでも溜まっていたらしい。行かないで良かった。
ファームイントントには固定客が多く、以前一緒だったお客さんと泊まり合わせることが多い。今回は、去年ファームイントントで出会った家族と夕食時に再会できた。前回「アナと雪の女王」を、夕食中振り付きでフルコーラス熱唱していた4歳の娘さんは、今年は「ダーウィンが来た」に夢中らしく、平原綾香の主題歌をやはり振り付きで歌ってくれた。その後、番組で紹介された生き物の話に移行。DVDで繰り返し観ているらしく、こちらも日曜日に「ダーウィンが来た」を流し観することが多いので、いろいろな生き物の話で話は熱っぽく盛り上がった。
こちらがハチクマの話を出すと、その回はまだ観ていなかったらしく、悔しそうな顔をする娘さん。ハチクマというのは蜂の巣をを襲う鷹で、あの凶暴なスズメバチを物ともせずに襲撃する凄まじい映像が人気らしく、続編も放映されたぐらいなのだ。お父さんお母さんもその間合いの手を繰り出したり、面白がって「観ないといけないねー」などと話していた。ところが、北海道から帰宅した8月18日のダーウィンは、なんとそのハチクマの再続編だったのだ。娘さんはハチクマを観ることができただろうか。
前回の「アナと雪の女王」は、結局紅白歌合戦で3回も聞くほどの大ヒットで、耳にする度にファームイントントの夜を思い出せていた。今回も帰った途端にそういう復習ができ、何か毎年素敵なお土産を頂いた気分になれた。
明日から天気は少し良くなるようだ。何とか1日晴れて欲しい。そして、自走で美瑛に辿り着きたい。
記2016/1/24
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