徳本峠小屋
(以上#2-1)
徳本峠小屋→明神橋
(以下#2-3)
→明神池→河童橋
(以下#2-4)
→上高地温泉→上高地バスターミナル
11.4km
RIDE WITH GPS
峠のすぐ下から、もう路上にこってり雪が溜まっています。それは見たところところどころ1mにも達しそうなほど。通常の登山道は、部分的にコース変更を余儀なくされている箇所もあるようです。宿主さんの事前情報通り、北側斜面は南側に比べて遙かに雪が溜まっているのでした。
ただ、まだ6時台にもかかわらず雪面は凍結せずに程良く緩んでいて、標準コースタイムよりやや難儀しそうなものの、軽登山靴でも何とかなりそうではあります。この分だとまあ7時半までには上高地に降りられる。その時はまだそう思っていたのですが…。
何度か足を滑らせながら登山道をトレースしてゆくと、盛り上がった雪に続く足跡の行方が、開けた急斜面の雪渓へ放り出されていました。
本来の登山道がつづら折れを描く急斜面。そこがまるっきり雪面になっているのに、その斜面をストレートに、しかもアイゼン無しの軽登山靴で下らないといけません。そして50mぐらい下の方には、我々より先に出発していた登山者の皆さん3、4グループぐらいが、あまりの急斜面に難儀している様子で、団子状態に溜まっているのでした。私もあの辺まで辿り着くのは10分後ぐらいでしょうか、それとも20分かかるのでしょうか。
とにかく前に進まないと、いつまで経っても上高地には着きません。そろりそろり、深めの足跡を数歩辿ったところで、つるっと足が滑りました!そのままずずずーっと滑落、停まらない、停まらない!
2〜30mぐらい滑って、自転車を何とか楔にしてやっと停止。
足場を踵で探して掘ってなんとか安定させ、自転車を起こして身体を起こします。何だか頭にコブができているような気もしますが、まずは深呼吸、辺りを見回します。立ち上がっても、ウインドブレーカーとニッカー、そして冬用手袋は今の滑落でちょっと湿ったものの、雪の侵入は防いでくれているようでした。
一方この滑落で、思いがけず距離を稼げていました。停まれさえすれば、むしろ斜度が落ち着く200mぐらい下まで、滑っては停まりして進むしかないのかもしれない。ただし、小刻みに停まれればの話ですが。
等と目論むほど急斜面の雪上は甘くありません。正面には昨日眺めた明神岳が、明るい青空の中で立ちはだかっていますが、今は眺め入る余裕もありません。可愛らしい山ガールが「自転車ですか!すごーい!写真撮っていいですかー?」等と声を掛けてくれますが、応える余裕すらありません。
数歩進んでは恐怖の滑落を繰り返し、ふと辺りを見回すと、先行グループの皆さんが雪の溜まっていない登山道「夏道」へ向かっています。私も命からがらそちらへ向かったのでした。
ちなみにこの間、アイゼン装備のとしさんは、安全に雪面を担ぎで下っていたのでした。つくづく自分の軽装備を反省。
先行グループの皆さんの中にも軽登山靴で難儀されていた方がいらっしゃったようで、「アイゼン無しの軽登山靴で登ってきた方がいましたよ」などとお話しして下さいました。しかし、一度始まったはずの夏道は、再び大雪渓の中へ続いていました。世の中そんなに甘くない。
またもや雪渓を滑落込みでこなし、夏道に復帰するのを繰り返すこと2、3度。終わり頃にはようやく雪渓の斜度も落ち着き、何とか自転車をピッケル代わりに接面に打ち込むようにして下れるようになってから、雪渓区間は完全に終了。
雪の世界が終わった途端、辺りは青みの濃い新緑の世界に変わりました。足下には昨日の峠下のようにニリンソウが群生で満開、可愛らしいことこの上ありません。
その先は次第に斜度が緩くなり、道も直線基調に。ようやく地図通りの道に下れてひと安心することができました。
途中からは道幅が一気に拡大。ごく普通の林道っぽい表情の道になりました。ここからようやくこちらも自転車に乗車。さっきまでの滑落の恐怖を思い出すと、なんだか自転車に乗れること自体に違和感すらあります。道って有り難い。
雪渓区間を先行していたとしさんとも、途中の分岐で合流。橋から見える明神岳に見入ったりして、緑の森をすぐ先の明神館へ。
記 2014/6/16