陸奥岩崎→(県道28)一ツ森峠
(以上#1-1)
→(県道28)天狗峠
(以下#1-3)
→(県道28)津軽峠
(以下#1-4)
→(県道28)村市
68.1km
RIDE WITH GPS
一ツ森峠を越えたからには、もう西目屋村の人里までこの先2つ峠を越えるのみだ。いや、ほんとはどうしても何らか事情があれば途中の谷間で途中下車できるのだが、まあなかなか順調な行程なので、このまま行ってしまうのがいいだろう。
そんなこちらの決意とは裏腹に、やや細かいつづら折れで密林を下ってゆく道は、やはりあきれるほど普通の森の道である。路面はガレることなく轍も穴ぼこも浮き砂利も無く、沢や湧水や夕べの雨のせいかやや泥っぽい以外、相変わらず極めて良好だ。斜度も全く地図で見てイメージしていたとおり。普通もう少し予想外のイレギュラーな斜度の箇所があるはずなのに、あまりの安定ぶりに拍子抜けする。
これが昭和40年代後半の新興林道、県道ダートたる所以だろう、と思う。
ただ、時々森の外に開ける、遠景へ続くブナ大森林、その青みの強い緑。そして道を取り巻く梢の下の広々とした薄明るい空間、そして頻繁に現れる大木は、他であまり見たことがないぐらいの堂々たる表情だ。白神山地を一躍有名にした世界遺産エリアを、実はこの白神ラインは全く通っていない。そもそも私はそれも去年初めて知ったほどの意識の無さなのだが、その私も、やはりこの森を前にさすが白神山地と言わざるを得ない。
中腹から谷底に降りてゆくと、道ばたのそこかしこに再び沢がみられるようになった。これなら水場が一杯、聞いていたとおり当分水場に困ることは無いだろう。それに登りの汗でずぶ濡れ状態になった全身がからっと快適に感じられるほど涼しい。大好きなハルゼミの声も聞こえ始めている。いい夏ツーリングではないか。
「MTB走行中」と札を掲げた車を先頭に、MTB団体が断続して下から登ってきた。恐らく地元のサイクリストだろう。中には「ランドナーですか!頑張ってください」などと声を掛けてくれる方もいらっしゃったが、挨拶を返しつつ、こちらが涼しい顔ができる下りで良かった、等とも思った。
標高200m台の谷底まで下り、9:35、追良瀬大橋通過。橋前後の路面は舗装だった。なんだまた舗装かよ、とも思うが、橋の向こうからすぐに登り始める道を眺め、大きく二つの谷を横切るこの道、まず一つ目の谷を越えたことを実感する。
事前のルートラボ検討では、さっきの一ツ森峠と次の天狗峠は、シンプル登りの2連発が絵に描いたような対称で並んでいた。実際の道も一ツ森峠の下りとそっくり、終始ブナの森の中。時々山々の景色が開け、安定した良好な路面と8〜9%の斜度が続く。
坂で一所懸命頑張るというより、脚を回すと淡々と高度が上がってゆく印象も同じだが、気温はそう高くないのに登り始めると汗がだらだら出始めるのは、やはりそれなりの斜度なのかもしれない、とも思う。あるいは私の身体自体が、先週の東京の猛暑によって汗が出やすく切り替わりつつあるのかもしれない。
まあ余裕をたっぷり見込んだ行程なので、そんなことはほんとにどうでもいい気分だ。ブナ独特と言われる広々とした森の中、緑きらきらの木漏れ日に包まれて、ハルゼミや鳥の声を楽しんで、のんびりと脚を進めてゆく。
天狗峠の手前で、道の外に白神山地が拡がった。世界遺産登録地域、向白神岳の裾野である。
▼動画30秒 天狗峠への登り 見渡す谷間 意外と?普通
稜線はまだ雲に隠れているものの、一ツ森峠の時に比べて雲の下が晴れ始めていて、広葉樹林が生い茂ってハルゼミや山鳥の声が響き渡る谷間が見渡せる。まだ雲が山々の稜線を隠しているせいかあまり迫力は無いが、雲の切れ間に見える残雪、裾野から谷間を埋め尽くすブナの森の密度は、さすが白神山地と思わせるものがある。
その辺りから道は舗装に変わり、結局それは天狗峠まで続いた。東日本有数のダートなんじゃないのかよ、とも思ったが、林野庁が造って県道移管されたこの大規模林道っぽい道、舗装も整備も維持管理も、現状維持と補修以外の何か突出した選択は無く、なかなか難しい事情もあるのかもしれない。
などと要らぬ想像をするうち、10:55、天狗峠着。あまり景色が開けないので、ついつい要らぬ想像をしてしまう道である。
そろそろ腹が減り始めていた。ここでおにぎりを頂いておく。いかにも緑一杯の岩崎産らしい、香りも食感もとても美味しいお米の、かなり巨大な塩おにぎりが2つ。おかずに付けてくださったこれもまた巨大な蜂蜜梅干しが、大変素朴で甘い。しかも朝食にも出た、味わい豊かな極上の鮭が切り身で1つ入っていた。
もともと登山客仕様の量が、さらにおまけで2倍の量になっているだけあり、2個食べたらかなり腹が満たされてしまったが、残りの2個のおにぎりとこの鮭は、あとで津軽峠で食べることにしよう。
記 2013/8/3