北海道Tour10 #7 滝上→浜頓別

雨の浜頓別バスターミナル 1日掛かってようやく到着 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路

 昨夜夕方からの雨は、一晩中降り続きつつ強さを増し、起きてもまだ降り続いている。もともと全道で雨の予報なのだが、特に道南や日高、旅程前半で通ってきた根釧台地では、洪水警報すら出ている。道北は比較的雨が弱いようで、今道北にいることはラッキーであると言える。しかしそれでも内陸部では降水量150mmとのこと。晴れを願う気など失せてしまった。
 浜頓別まで全区間バス輪行なら、7時にはバスに乗らなければならない。一方で宿主さんに積載状態の自転車を撮っていただく約束をしているが、バスの始発場所は宿から少し離れているので、自転車で宿からそちらへ向かい、自転車を解体する時間を見込んでおきたい。バス社内でバッグは荷造りするとして、想定輪行時間は20分、宿からバス乗り場まで10分。というわけで6時半には出発する必要があるが、早めに荷物を積み始めた私と外の大雨を玄関から眺めていた宿主さんが、見るに見かねてお車で送って下さることになった。ならば撮影後は速攻で自転車解体である。

 車で着いたバスの始発場所は、滝上の町の一番奥の外れ、辺りは町と言うよりむしろ茂みの中。以前、確か旧国鉄北見滝上駅跡の公共施設からバスに乗り込んだような記憶がある。しかしここは、北見滝上駅跡からもだいぶ奥、記憶とはかなり異なる場所と雰囲気だった。バスの運転手さんに尋ねると、だいぶ前にこちらに変わったらしい。去年こちらの場所も、営業所から停留所に格下げとなって、ここには運転手さんの宿泊施設があるだけとのこと。前回滝上からバスでとんずらしたのはいつだったか、つい最近だったようにも思うが、よく考えると1990年まで遡らないと記憶が無い。そう言えば昨日調べた浜頓別までのバス乗り継ぎも、以前似たことがあったと思って思い出してみたが、やはり1988年まで遡らなければならなかった。まあ旅の記憶なんてそんなもんかもしれない。

 7:00、滝上発。
 バスに乗り込んでからもまだ「それでも走った方が良かったんじゃないか」等という気持ちが残ってはいたが、バスが町外れから畑区間に入るとともに雨は強くなり、その気持ちは完全に失せた。

 大雨の中、バスは国道273を快調に時間通り進み、時々旧国鉄渚滑線の駅があった集落に寄り道し、辺りの谷間は次第に広くなっていった。

 

 8:05、紋別着。
 これから2時間も待ち時間がある。とりあえず近くのコンビニで朝食を仕入れて食べるうちに、45分ぐらいは何とかなるだろう。コンビニの場所をGPSでチェックすると、意外に遠い。片道10分弱ぐらいのセブンイレブンと、逆方向のもう少し遠くにセイコーマートがある。一方、紋別は大きな街だけあって、滝上より雨がだいぶ弱くなっている。多少歩いても大丈夫そうなので、ここは是非セイコーマートへ。

 と思ってセイコーマートへ向かったが、その間雨は強くなり、バスターミナルへ帰る時には、バスターミナルの近くにGPSに入れていなかった某チェーンコンビニも発見。「時間を潰す」という消極的な目的が達成された買い出しとなった。

 しかし、カップ麺にパン程度で、残り1時間半もの退屈さが満たされる訳は無い。何となくもう少し何か食べたいような気もする。土産物屋に入っても件のマイナーコンビニに入っても、何か目的意識が空回りしてむなしい。

 

 結局手ぶらでそれぞれの店を出て、小雨のバスターミナル周辺をうろついていると、「銀色の道」なる碑を発見。塚田茂作詞、宮川泰作曲の「銀色の道」という歌が、紋別市鴻之舞の住友金属鉱山鴻之舞鉱山の「鴻紋軌道」をモチーフに作られたというものだった。
 鴻之舞と言えば昨日も通ったオホーツク内陸コースの長大無人地帯で毎回の定番経路。いろいろ鉱山の施設跡はあれど、もはや全て森と茂みの中、大雨でも雨宿りの場所すら無いぐらいの山深さが印象に残っている。一方、「銀色の道」はやや抽象的な歌詞と木訥で力強いマイナーメロディがやはり心に残る歌なのだが、歌詞に出てくる「遠いはるかな銀色の道」とは一体何なのか、歌からは全くわからなかった。
 この二つが今、唐突に結びついた。わかってどうなるというものではないが、小雨の中を何か止むに止まれずふらふらした結果だ。目的に近づけない日でも、前向きに行動すると、それなりに何か返ってくるものがあるのだと思った。

 などと感動しているといつの間にか時も過ぎ、10:04、紋別発。

 

 紋別の街を出ると、バスは国道238をオホーツク海沿いに走ってゆく。窓の外は、鉛のように重たい金属色の海と、雨で暗く重たい色ながら、やはり海よりほわんと明るい空。他には一直線の道、陸側の草原と茂み、時々現れる民家や建物。オホーツク海独特の景色はひたすら単調で、やはり北海道そのものの景色で、近づいては去ってゆく似たような景色をぼうっと眺めていた。こちらの道は今回の予定コースじゃなかったが、ここはここでやはり走りたかったな、と思う。ただ、興部までのこの道は、車は少し多い。

 

 興部では停車時間が3分。速攻でトイレとソフトをこなしておく。間違えて名寄方面のお客さんが乗ってしまったようで、バス出発後、わざわざ一度バスターミナルへ戻り、その後沢木までのちょい坂で遅れ回復。優しい運転手さんに心温まる出来事だった。
▼動画3分18秒 沢木までのちょい坂
▼動画45秒 日の出岬へ
▼動画1分10秒 日の出岬から国道238へ
▼動画10秒 南雄武 国道238陸側の風景

 

 11:15、雄武着。
 バスターミナルが道の駅を兼ねているのはよくあるパターン。バス乗り継ぎの補給や時間つぶしにも大変都合が良い。そういえば前回1988年には、ここには確か小さな待合小屋しか無かったように思う。道の駅様々である。
 が、雄武ではたった30分しか乗り継ぎが無い。大急ぎでソフト、ドリップコーヒー、揚げたての魚肉練り製品などを食べておく。売店のカレーの文字に後ろ髪引かれつつ、11:45、雄武発。

 

 雄武から枝幸までは、道は海岸ぎりぎりではなく、少しだけ内陸を通ってゆく。茂みやら何やらに遮られて海が見えなくなり、道は微妙なアップダウンとともに茂みの中を上下する、という景色が続く。しかし海が見えない代わりに、陸側が見える。内陸部の山々は、低山ながら草木が生い茂り、どこか山深く険しく厳しい佇まい。大部分が低い雲に隠れながらもその厳しさは何となく伝わってくる。
 また、牧草地には、結局開通することの無かった国鉄興浜線のコンクリート橋やら築堤が断続、緑の茂みの中に埋もれつつあった。そんなわけで、基本的には要素が少ない景色の緑色は目に優しくはあるが、過ぎてゆく景色は単調でどこか圧倒的で、たまーに現れる漁村に過去の訪問を思い出し、気が付いたら居眠りしていた、というような時間が過ぎていった。

 

 12:55、枝幸着。
 さあ、いよいよ本日のハイライト、3時間乗り継ぎ待ちである。バス到着5分後には待合室は完全に無人になってしまった。とはいえ事務所には手持ちぶさたそうなバス会社の職員さんが3人、時々待合室に掃除のおばさんが忙しそうにやってくる。バスターミナルのすぐ隣にはかなり大きなスーパーがあり、中にはファミレスまであって、とりあえず食べ物には全く困らない。そもそも枝幸はこの地方の中心地で、支庁がある程の町。市街地の孤独というか、物には困らないはずなのだが、何か手持ちぶさたなだけなのだ。

 

 さすがに枝幸まで来てファミレスでは食事する気は無い。近くにあった蕎麦屋に「幌加内産蕎麦粉」の文字を見つけて適当に入ると、ここの蕎麦が当たりだった。細めのきりっと腰のある蕎麦にだしたっぷりのお汁、「幌加内か。明後日はまたソバの花が見たい」と思いつつ幸福感をたっぷり味わうことができた。

 

 ふらついて蕎麦屋を見つけて食べ終わって外に出て、しかしながらこれでまだ30分も経っていない。北海道じゅう大雨の今日だが、道北、とりわけここだけは雨が降っていない。じゃあ自転車に乗って浜頓別に向かおうか、という気もするが、浜頓別から来たバスの乗客に聞くと、どうも浜頓別方面はけっこう雨が降っているとのこと。一方、バス会社の事務所で、徒歩10分強ぐらいの市営公衆浴場がこの時間に営業していそうかどうか尋ねると、「やってるんじゃないかと思いますよ」とのこと。良いお湯なら風呂で居眠りして風呂上がりにビールでも飲めば、楽勝で1時間は経つ。行くしかない。

 ところが、真っ昼間から閑散とした町中を10分以上、辿り着いた程良い規模の市営公衆浴場は、16時から営業とのことだった。あと1時間以上もある。そもそも16時から風呂だと、風呂10分着替え5分徒歩10分で、バスの時刻16:25ぎりぎりだ。

 仕方無くバスターミナルへ撤収。往路の途中で見つけた激安系酒屋でサッポロクラシックなど仕入れ、あおりながら閑散とした町中をとぼとぼバスターミナルへ。白昼町中で缶ビールをあおって歩くおやじなど、子供の頃は、いや、けっこう最近まで目を背けていたものだ。いつからおれはこんなになってしまったのか。こんなこと地元じゃやらないだろう、旅先なら何をしてもいいのか。等と他人事のように思いながらふらふら歩く、手持ちぶさたな枝幸の町中なのだった。

 

 16:25、枝幸発。去年通った国道238の景色が、次々と去ってゆく。
▼動画1分24秒 問牧→目梨泊
▼動画23秒 目梨泊

 え、もうここなの、と見覚えのある漁村を眺めて思うが、そのうちにほぼ中間地点の神威岬を通過。記憶に間違いは無く、まあ当たり前のようにバスは速いだけである。
▼動画1分1秒 頓別

 17:10、浜頓別着。1日雨が降ったからか、浜頓別の雨は小雨に変わっていた。自転車を組み立て、ちょうど雨が弱くなったタイミングで出発、18:00、トシカの宿着。

 

 クッチャロ湖岸の茂みに建つこの宿、周辺の茂みからやってくるカやアブが非常に多い。こちらにはムシペールがあるので、カやアブぐらいなら怖いことはないが、それにしても今回は荷物を外す間に湿地帯特有の大きくて動きのとろいシマカが大量にやってくる。更に、いつも自転車を停めておく倉庫では、扉を開けた途端に大型のガが5、6匹高速で飛びだしてきてたまげた。湖岸の森に面するこの倉庫、多分良からぬ昆虫どもの巣窟になっているのだろう。

 夕食はいつもの時間通りにジンギスカン。車、オートバイ、JR・バス・徒歩、そして自転車と、いろいろなお客さんが賑やかだ。
 宿の方とお話しすると、確かに今年はこの暑さで去年の5倍ぐらい虫がいるとのこと。数日前の暑かった頃は、浜頓別でも30℃以上出たらしい。確かに今日も浜頓別でも寒さを感じない。
 もうひとつ、どこでも感じる観光客の少なさは、浜頓別でもやはり顕著とのこと。オートバイは特に減っているというのも、今回どこでも聞いたり実感したりする話だ。
 その他、今年は北オホーツク自転車道に熊が出て閉鎖中とのこと。まあいつ来ても、全区間約30kmのどこで熊が出ても不思議ではない道だし、実際毎回どこかで熊情報を見かける。でも今回は、何と浜頓別の町からかなり近くで出たらしい。つまり、このトシカの宿の至近で熊が出たということでもある。

 明日の天気予報は久しぶりの晴れ。道北のこの辺りは晴れ始める時間が遅れるようだが、それでもお昼には晴れるらしい。ならば最初小雨でも何でも、ちょっとぐらい早出して、なるべく時間を稼ぐ方が良い。

記 2010/9/26

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Last Update 2019/8/1
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