海岸町→(道道87)相泊
(以上#8-1)
→(道道87)羅臼 45km
知床自然センター→(道道93)岩尾別 3km
当たり前だが帰り道は道道87を逆走。
空は基本的に往路より明るくなってはいたものの、山方面の空はどんより暗い。
南下するに連れ、海や道の上空には時々青空が現れすらした。
こういうのを見ると、今日はひょっとして行けるかなとも思うが、山の途中から上は相変わらずどんよりと、いや、絶望的なまでに暗いのだった。
7:50、海岸町「民宿おじろや」着。ちゃぶ台にはもう朝食が準備されていた。鮭、いくらの塩漬けがうまい。またもや一言で言えば、豊かな味、今まで食べたこと無い味なのである。羅臼の海はほんとに豊かなのだと思った。
ここで宿のおじさんにバスの時刻を尋ねると、9:10発の次が10:00、その次は13:10、13:45とのこと。バスなら知床峠を越えるのにどうせ1時間も掛からないし、今日の宿、岩尾別YHの夕食に間に合わせるためだけなら、全てのバスが問題無い。ただ、さっき温泉に浸かったせいもあり、なんだかとにかく身体全身が疲れている。岩尾別YHにはできることならなるべく早く着き、なるべく目一杯休みたい。
でも、そうでなくても少なくとも9:10発は早すぎるだろう。まあ10:00辺りが良いところではないのか。
飯を食って部屋に戻ると、もう眠くて仕方無い。ええい時間はあるのだ、一寝入りしてしまえ。この真夏に何だか寒いので、再び布団に入っていい気分である。やはり旅には余裕が大切だ。
再び起きるともう9時前。たとえば10時のバスに乗るとして、逆算すると、羅臼まで8kmほど走らないといけない。そもそも荷積みもしないといけないので、時間的にはいい時間だ。我ながら高地タイマーは優秀である。
9:20、海岸町「民宿おじろや」発。
羅臼までの道でも、空は曇ってはいたもののまあ明るい程度。この期に及んで輪行中止で知床峠越えか、と思う程だが、羅臼で山の方を伺うと、またもや標高150mぐらいから上がどんよりした雲に覆われている。やはりまずいだろうと思った。と同時に、「仕方無い」という大義名分付で休憩できてウレシイ気持ちは否定できない。
羅臼の町中だと思っていた羅臼バス営業所が、実は羅臼川沿いの少し上流で、捜すのに手間取ってしまい、9:40、羅臼バス営業所着。10時発まで20分しかない。しかし、20分なら過去何度か経験がある。とにかく速攻で解体するのみだ。サイドバッグを外し、自転車を解体したところで残り3分。これなら後はバッグを纏めるだけ、どうせ乗客は4人だけなのだから、そんなのバスに乗ってからやればいい。
10:00、羅臼バス営業所出発。前代未聞の自転車ツーリング最中のバス峠越えになってしまった。ほんとにいいの?と自問しつつ、バスが動いてしまえばあ〜れ〜、お代官様〜、とでもつぶやく他は無い。
果たして登り始めの温泉街で早くもバスのワイパーが動き始め、温泉街を出た辺りで路面がしっとりと濡れ始めて、そのまま雨雲の中に突入。知床大橋を渡ると、もう頭上は真っ暗な雲の中。ワイパーが忙しく動き続けるぐらいの雨と霧の中、バスはゆっくり粛々と登り続けるのだった。
ちなみに途中すれ違った自転車乗りは一人だけ。霧と雨の中、羅臼湖入口で乗り込んできた3人のハイカーは、口々に「寒い寒い」。これはどう考えても、前向きな結論として自転車に乗らない方がいい。
10:45、知床自然センター着。普通YHのチェックインは15時だから、少なくともあと4時間待たなければならない。自転車を組み立てて1時間も掛からないし、その後自然センターの食堂で食事をしてコーヒーでも飲んでも、まだお昼過ぎ。ついに耐えきれなくなって岩尾別YHに電話すると、もう寝室で寝ていてもいいとのこと。
外に出ると、雨は降ってないが、何だか強い風が吹き荒れていて、とても寒い。
何かぞぞぞーっと身体をはい上がられるような気持ち悪さ、これが寒くて絶えられないという感覚だと思い出すのに少し掛かった。東京の暑い夏では忘れていた感覚である。
12:40、岩尾別YH着。知床自然センターから一気に標高差100m強を下って、更に海岸に下って行く谷間に建つYHの周りは、さっきの知床自然センターにも増して何だか薄ら寒い。
「寒いですねえ」と話しかけた外に出ていた方がたまたまペアレントさんで、
「そうですねえ、今年はもう2週間で夏終わっちゃいました。早いですね。」
とのこと。
受付後、早速寝室へ向かい、相部屋へ。明日出発しやすいように入口側のベッドを確保してから、自販機でビールを仕込み、布団を引っ被って、真っ昼間から文字通り泥のように眠りこけた。寝ていると、足や腰が痛だるく、ますます疲れているのがよくわかる。途中で目が覚めたが、ちょっと離れた談話室で漫画を読んでまた寝た。談話室の漫画は何故か80〜90年代前半ぐらいが主体の漫画ばかりで、何となく懐かしくはあったが、そんな理由だけであまり漫画にかまけているわけにもいかない。
もう今日で8日目、15日間の予定もいよいよ後半である。疲れが溜まっているのは否定できないが、幸い関節やどこかがきりきり痛むということは無い。明日は斜里峠〜開陽台、明後日は津別峠〜チミケップ湖。その後も2日連続で道北まで内陸主体の道が続く。今日知床峠を越えられなかったのだ、今年こそは上紋峠に行かないと。今はとにかく休めるだけ休んで体力を少しでも回復しよう。明日晴れればまたサイクリングの日々が始まるのだ。ふと、さっき読んだばかりの「花の慶次」の前田慶次の名セリフを思い出す。「だが、それがいい」。
18時半からの予定の夕食が、いつまで経っても始まらない。外人の7人グループがどういうわけか屈斜路湖畔YHに行ってしまったとのことで、最小催行人数の設定のある夕食オプション「鮭のフルコース」の予約者は私を含めて2人になってしまった。ところが、70cm以上ありそうな大きな鮭はもう仕入れてしまったらしく、急遽ダンピングで追加申し込み者を募集することになったようだった。
結局19時半前から夕食がスタート。もう何年も食べてみたかった「鮭のフルコース」は、噂通り目の前で鮭を捌き、鮭の部位と用途別の解説と共に切り身を分けて行く。ある程度溜まったところで炭火焼きを開始、同時進行でちゃんちゃん焼き、にぎり寿司、いくら醤油漬け、石狩鍋が次々完成する。
デフォルト参加者は美味しそうな部位の優先権が設定されていたが、途中からみんな幸せすぎてそんなもん全然関係無くなってしまった。
新鮮な鮭はとても美味しいが、どれか一つと言われれば、やはりここ数日毎日食べて感動しているいくら醤油漬けが一番美味しく、途中からはひたすらいくら山かけ丼ばかり食べていた。またもや美味しいと言うより、過去食べたことの無い豊かないくらの味である。
記 2008/10/2
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