4時に起きてはみても、前日の天気予報通り大雨だ。体を起こして薄暗い窓の外を伺っても、辺りの森には霞みすら掛かっている。おまけに低温というのか、極端に寒い。今日は絶対に走れないだろうと確信させる天気である。
夜に降り出した大雨に、昨日の内にチェックしておいた音威子府村交通ターミナル行地域バスの時刻は8:30。これで札幌行きスーパー宗谷に連絡するとのこと。道北はもう雨のまっただ中、天気予報以上に空を見上げればそれは明らかである。旅程も今日を含めてもうあと2日、この際早めに道北から脱出する方がいい。
朝食は頼んでいないが、温泉は入り放題だ。とりあえず朝早いし、温泉にでも浸かって居眠りでもしよう。
8:30、天塩川温泉発。小型の地域バスは律儀に咲来の集落奥まで行って戻って、音威子府の役場と病院前を経由し、音威子府村交通ターミナルに到着。交通ターミナルというと何だか訳が分からないが、その実態は音威子府駅である。地元の方にとっては、普通列車が一日数本の鉄道の駅ということよりも、地元周回のバス停を含んだ総合機能にこそ意味があるのだろう。
9:06、音威子府発。山間区間から美深、そして名寄盆地へ、スーパー宗谷は激走する。名寄から先は高速化工事完了区間、更に激走の度合いが増すのが凄い。
カーブでなんちゃって振子機構を効かせ、もう冗談みたいな勢いでぐんぐん突っ走り、塩狩峠もあっと言う間に通過。一体これは気動車なのか。新方式の電車か京浜急行の快特ではないのかなどという疑問をよそに、スーパー宗谷は旭川盆地に降りてから更に恐ろしい勢いで突っ走るのだった。▼スーパー宗谷激走 動画1分50秒
その途中、音威子府の山間から盆地へ出ても、大雨は止むことが無い。道は黒々ぬらぬら、国道では大型車が白いしぶきを上げている。走らないで良かった。
10:47、激走にも係わらず、スーパー宗谷は3分遅れで旭川到着。
旭川の街中は降ったり止んだりのようだったが、相変わらず雲は低い。街を出るとすぐにまた大雨になりそうである。何と無く流されるままに駅から街に出てみても、案の定すぐ雨がぱらついて、仕方無く駅近くのビル地下でラーメン屋へ。
目的意識の無いラーメン探訪は、徒労と無駄なカロリーに終わることが多いように思う。入ったラーメン屋さんでは、店員さんの態度はきびきびと気持ちよかったが、結論から言えばカロリーと塩分補給はできたものの、あまり味自体は好みではなかった。ならば最初から狙い定めて既知の店に向かえば良かったものだが、まあそれも何だか面倒臭く、行きずりの出会いに身を任せてしまったのである。
この期に及んで焦っているわけではない。自転車に乗っていないと何だか手持ち無沙汰で、疲れているのに気持ちが落ち着かなくてこんなことになってしまう。思えば本当に鉄道の旅行が苦手になってしまった。
12:25、旭川発。ずいぶん旭川出発を引き延ばしたつもりだったが、13:00には早くも美瑛に着いてしまった。
今日の宿、遊岳荘に電話を入れるが、駅へのお迎え車は17時前とのこと。それまで待つしかない。いや、待つつもりだったが、結局耐えきれなくて遂にタクシー輪行、15:10、憩「遊岳荘」着。
建物は新しいが、この宿、実はまだとほ宿がまだとほ宿という呼ばれ方ではなく、YHとの区別で「旅人宿」と呼ばれ始める前からの歴史のある宿だ。個人的にはここに泊まって、いや、ここ憩に移転する前の遊岳荘に泊まり、夏や冬に地形改良の前のダイナミックな美瑛の丘を回った、そんな思い出のある宿だ。もう20年前のことである。
時期によってはかつての常連さんが申し合わせたように同時に集まる日もあるが、今日の遊岳荘はお客さんは4人と少ない。しかし、宿主さんが夜の団らんタイムをお客さんとずっと一緒になって語らうのは、まさに旅人宿そのものの雰囲気である。かつての北海道旅行を少し思い出したような気がした。
早寝の私は、当然のごとくそういう語らいには参加できないのが少し残念だ。
明日はいよいよ最終日。天気は朝のうち曇りがお昼から晴れとのこと。最終日にふさわしい、麓郷や北落合の景色に出会いたい。
しかし、真夜中にも大雨の音が屋根から止むことは無かった。
記 2008/10/18
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