北海道Tour08 #1-1
2008/8/2 八雲→島牧

八雲→(道道42・263)日進
→(農免農道金原今金線・道道810)鈴金
→(道道232)北檜山→(国道229)元浦
(以下#1-2) →(国道229)島牧   100km

赤は本日の経路 八雲から瀬棚経由で島牧へ 赤は本日の経路

 9:03、八雲着。
 特急北斗星から八雲駅のホームに降りると、雨は降っていないもののなんだか薄暗く、予想よりいくらか肌寒い。ここ数年間北海道の夏も普通に暑くなっていたが、これはそれ以前の感覚に近いと思った。身体の中の、空調では取れない夏の熱気が少しずつ抜けていくのを感じる。やはり大気全体が涼しいのは良い。いやまあしかし、この冴えない天気ではそれも当たり前にも思えるし、ちっとも嬉しくない。

  自転車組み立て完了 しかし天気が決定的に悪い… RICOH GR DIGITAL 2 GR5.9mm1:2.4

 駅前を見回すと、11年前泊まったまるみ旅館が新築の建物に変わっている。確か食事はたっぷりだった印象があるが、丁寧な良い商売で繁盛しているのだろう。
 自転車を組み立て始めると、ちょっと水滴を感じた。列車から見えてはいたが、見上げる空にはかなり低く厚そうな灰色の雲が、どしっと今にも落ちてきそうだ。こういう状態だと、問答無用で今日はもう道道42と263で北檜山に出る最短コースに決定だ。天気予報では午後は雨だが、何とかこれぐらいで島牧までもってほしいものだ。
 少し肌寒さすら感じるこの気温で、地元のおばさんは「なんか暑いねえ」などと会話している。そうか、これで暑いんだ。地元のおじさんも登場し、例によって自転車に興味を持って話しかけてきた。毎度のことで毎度のように応対するが、「今日はこれから日本海側が荒れるらしいよ」とのこと。有り難い、良い話を聞けた。いや、荒れるのそれ自体は有り難くないね。事前に覚悟できるだけだ。そうこうするうち、雨がぱらついてすぐ止んだ。気持ち的にはこれでもうとどめである。

八雲から道道42・263経由で北檜山、瀬棚へ 赤は本日の経路  

 八雲から北檜山へ渡島半島の背中を越えるパターンは、86年夏、初北海道ツーリングの初日以来でなかなか感慨深い。青函連絡船で函館に朝4時過ぎ到着、6時に出発し、国道5で八雲まで来て、八雲から先は濃霧と向かい風の渡島半島越えの後、一転して青空となった日本海沿岸の岩場の風景に度肝を抜かれたのだった。今日も青空の岩場と青い日本海が見たくて仕方ないが、限り無く望み薄だ。
 大部分が過去に通ったことがある今日のルートで、過去と重ならないコースを選べるのは渡島半島越えの部分である。峠部分の手前で道道42から道道263に向かわず、そのまま道道42へ進むと、更に100m登るものの、北檜山へはやや距離が短いというメリットがある。しかし、それもこれも現地のお天気次第だろう。

 

 9:45、八雲発。いよいよ北海道での旅程開始だ。天気に係わらずこれはやはり嬉しく、気分は盛り上がる。が、町外れで早くも雨がぱらつき始めた。しまった、八雲発でも雨雲に捕まったか。

 辺りはすぐに平野から山裾の牧草地へ。その間天気は道が乾き始めるところまで一度復活したものの、と思っているうちに山裾から谷間に入ったところでざーっと音がし始め、本格的な雨になった。

 途中で交差する大成経由大回りコースの国道277へ向かえば未済の道を通れるのだが、こんな状態ではとてもより雨が降りやすい標高の高いコース取りはできない。ここは道道42の継続だ。

 遊楽部川のそう広くない谷間の牧草地や森の中を、道道42はひたすら遡る。峠まで標高370m程度、延々と平坦に近い道が緑の景色の中に続くのがいかにも北海道の道らしい。一方、雨はもう止むことは無さそうだ。強いときは完全に水が道を覆い、雨足で波打ったり、弱くなると何とかしとしとっぽかったりするものの、基本的に大雨が続いていた。

上八雲から道道42・263経由で北檜山、瀬棚へ 赤は本日の経路

 上八雲の先、辺りは森となり、緩いながら登りが始まった。それでも登っているようで全然登っていないぐらい。

 

 谷底の茂みみたいな密度の濃い森から山肌区間に移ると、周囲が開けて谷を囲む山がその全貌を現した。なかなか、いや、かなり山深い森である。山々もきりきりっと立ち上がり、高く見上げる程。道はその間を上手く抜けて標高300m台に抑えられているようだ。こういうことだから渡島半島は横断ルートが少ないのかもしれない。晴れているとこの山々も更に見事な景色なのだろう。
 峠の少し前で道道42は分岐して、更に脇の山間へ登ってゆくが、行く手の山々に真っ白に取り付いた雲を見るにつけ、そちらに足を向けるわけには行かない。一方そのまま直進する道は道道263と番号が変わり、こちらも更に行く手に登ってゆくが、道道42より峠部分は100mほど低いし、それより何より雲が多い高い場所からなるべく早く里に降りたい。

 少し進むと、雨が弱くなってきた。しめた、いいぞ、雲は低く見えても峠のあっち側は降っていないのかもしれない。その後峠部分から下り基調の稜線部へ、ピークが判然としない何回かのアップダウンの間、雲は依然として濃い灰色で低いものの、ついに雨がほぼ上がった。周囲の低山の拡がり、山々の稜線をほんの少し上から見渡す形になり、眺めは良好である。
 景色の記憶がほとんど無かったはずのこの辺りだが、当たり前だ。前回86年は霧で一面真っ白だったのだ。霧の中で何だか終わりの無いアップダウンにうんざりしたのだけを覚えているのが、我ながら可笑しい。

 

 山の森の中から丘陵の農地へ放り出される日進には、スノーシェッドがある。前回はここで急に霧が晴れ、突然ジャガイモ畑が現れて驚かされた、印象的な場所だ。ところがここで、晴れてはいたがどす黒さを増し更に低くなっていた頭上の雨雲から、ついに糸が切れたように水滴が落ち始めた。と思ったら一気に大雨になってしまった。結局こうなるのか。
 この先里の方向を眺めても、雲が薄くなる気配は全く見られない。今はそれでも先へ進まないといけない。都合良く記憶通りに現れたスノーシェッドへ逃げ込み、一度仕舞った雨具をまた着込み、間髪入れす再び下りを再開。

 

 日進の先は道道263から分岐、農免農道〜金原経由の道道810方面へ。まあこんな状況で過去の未済経路と少しでも違うコース取りができるのはありがたい。しかもこちらは谷底へずっと下りっぽい。こういう時はとにかく登り返しなど避け、楽をしたいのである。
 台地上の牧草地を下って段丘の森へ、更に下りきって谷底が拡がると畑、田圃、牧草地などの農地が代わる代わる登場する。金原、鈴金と谷間を下りきり、後志利別川下流の平野へ出て、北檜山へ向かう道道232へ。この間ずっと雨は降り続いていた。いや、下って平野に降りるほど、というよりどうやら日本海岸へ近づくほど雲は低く黒く、気が付くと更に大雨に変わっていた。少なくとも、里の方が少しは雨が軽いなどというのは、今日に限っては完全に思い込みの妄想であることがはっきり理解できた。

 

 11:30、北檜山着。セイコーマートの庇下へ逃げ込み、少し休憩とする。
 屋根の下で落ち着いて空の中や水たまりを見るに、結構な大雨である。うーん、この先日本海岸の瀬棚辺りから、一気に天気が挽回してくれるととても有り難い。しかし妄想空しく、屋根の下から伺う西の空にはその気配は全く無い。そんなことを考えて補給している間に何と雨はますます強まってしまった。気が重い。しかし、こってりした雲を見るに付け、待っていても雨が弱まることはあり得なさそうだ。
 11:55、北檜山発。数km先の瀬棚へ向かう途中、日本海の海岸へ下る辺りから雨は更に強くなってしまった。雨足がよく見え、路上に溜まった水たまりに跳ねる雨が賑やかである。脇を通りすぎる車が、バケツで掛けるように水をはねてゆく。悪態を叫んでも、この雨ではドライバーもワイパーの限界で視界は一杯一杯だろう。
 こんな状態では、せっかく本日の目玉、日本海岸の追分ソーランラインも、ちっとも嬉しくない。

 

 瀬棚は何となく流されるまま機械的にそのまま通過である。瀬棚を抜けたところで、更に雨は強力になった。雨の強さ自体もさることながら、この真っ平らの海岸で国道が川になってしまっている景色や、強めの風で横からも水がばしゃっと掛けられるように襲ってくるのにはもうヴィジュアルだけでびびってしまう。その強い雨に加え、路上の水たまりから自分が跳ねた水で、靴の中に水が溜まり、フロントバッグやサイドバッグの上面に水たまりができていた。強めの追い風気味なのだけが救いではあったが、いや、救いも何もとっくの昔に思考能力など無くなっていた。
 いや、それでも粛々と地道に走っていれば、というより足さえ動かせば、あと何時間か後に風呂でも入って頭でも拭きながら「いや〜、凄い雨だったな〜」などとつぶやける時が来るはずなのだ。

 

 岩場の道には漁村が断続し、番屋みたいな家屋が絶えることが無く続く。その中の一つに「浜の母さん食事処」なるお店が登場。とりあえず雨を最低限に凌げそうな庇を見つけた瞬間、さっき北檜山で補給したばかりだったが、ハンドルを向けて逃げ込んでいた。地の物も食べられるだろう。
 狭い店内は魚介類の販売所と食堂に分かれていた。貝の炭火焼き「貝尽しセット」を食べることにしたが、生ホッキ貝、生サクラ貝、生ツブ貝、生ホタテ貝の炭火焼きせっとでたったの\500。これがまたみんなでかくて旨いのだった。この際海鮮汁\200も一緒にいただく。熱いおつゆが体の中に浸みていくのに、改めて雨に打たれた自分の身体が冷えていたことに気が付いた。

記 2008/9/6

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Last Update 2019/7/26
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