2008/7/20 朝日スーパー林道 鶴岡→村上 #4

鶴岡→(県道350)外内島→(国道112)下山添
→(県道383)宮ノ下(国道112)朝日→(県道44)行沢
→→(県道349:朝日スーパー林道)大鳥 (以上#1)
→(県道349:朝日スーパー林道)林道元屋敷線分岐 (以上#2)
>→(県道349:朝日スーパー林道)猿田川野営場
→(県道206)猿田発電所
(以上#3)
→(県道206他)村上   90km

越後平野外れの三面川 すっかり平地の川 RICOH GR DIGITAL 2 GR5.9mm1:2.4 猿田発電所から三面ダムへ 赤は本日の経路

 道が一気にするする下り始め、木々の間に猿田ダムを見下ろし、谷底で再び川となった猿田川を渡ると、また登り返しだ。もうこの先は小刻みなアップダウンの連続なので、腹を据えて掛かるとしよう。

 一度腹を据えると諦めも付いて景色を楽しむ余裕も出てくる。

 谷底の川原に巨大な岩の転がる「野猿の岩場」辺りでは、記憶以上に大きかった岩と再会できた。狭い谷間にごろごろと、ちょっと見ているとスケール感が狂ってくらくらしそうなほど大きな岩が転がっているのである。

 12:00、奥三面ダム分岐着。

猿田発電所から三面ダムへ 赤は本日の経路

 前回はここから分岐し、奥三面貯水池から蕨峠へ向かったのだった。そういうわけでこの先は初めての道になる。きりきりっと岩場を登って行く奥三面貯水池の道は、何度見てもしんどそうだ。

 

 一方、こちらは三面貯水池となって再び始まった広く静かな水の上を一度対岸へ渡ると、霧立った岩場に細道がとりついてのたうち回り、木々が覆い被さっている。

 見るからに楽しそうな道で、3回の登り返しはしんどいらしいが、期待は盛り上がる。最後まで楽しめる良い道だ。
 とその時は思った。

 

 湖を横切る橋が森の向こう、遠くに見えてきた。地図通りだが、まだこんなもんか、という位置ではあった。あとちょっとしたアップダウンが3回あるのだ。まあまだ12時過ぎ、のんびり行けばいい。お昼は村上の町で食べられるだろうから、それまでおにぎりとバームクーヘン1個ずつあれば十分だろう。

 少し先で道は向きを変え、橋が目の前に現れた。ところが、幅広で今日渡った橋の中では一番長いその橋の手前には、その橋の幅一杯に、何と足場用鋼管で組まれたフェンスが立ちはだかっていたのだ。高さは軽く2mを越えるだろう。自転車を持ち上げたって、越えられるものではない。
 いかんせん鋼管で組まれたフェンスなので、隙間自体は人間一人なら楽勝でくぐり抜けられる。問題は自転車だ。ホイールの直径より隙間の高さは少し低く、ハンドルの幅より隙間の幅は少し狭い。自転車をばらしても前後ホイール、フレームは、3回に分けてフェンスを越す必要があった。やってできないことは無さそうだが、けっこうしんどい作業だ。
 その前に、そもそもここを越えて向こうに行くことに意味はあるのか。このフェンスの向こうには車は入ってきているのだろうか。
 偵察する必要がある。もしここを越えても無駄なら、すぐに引き返して蕨峠に向かわないといけない。

 単身でフェンスを抜け、橋の向こうへ渡って路面を観察すると、タイヤの後らしい物は見られるものの、そう新しいものでもなさそうだ。これだけなら絶望的だが、路面それ自体はしばらく通行止めになっている割には意外なほどに綺麗なのだった。もっと言えば、誰か清掃に来ているっぽい。けっこう微妙な状況である。
 進退の判断に悩んでいると、バイクの音がして、元来た側のフェンスの向こうにバイクが現れた。財布は一応持っては来たが、いかんせん距離があるので、物でも盗って逃げられたらかなわない。「おーい」とか叫んで手でも振りつつ急いで戻ると、バイクの人はヘルメットを脱いで待っていてくれた。良かった、いい人で。

 少し話をすると、その人はどうやら元屋敷林道から入ってきたらしい。さっきの奥三面ダムの脇を通ったとき、たまたまいたダムの職員らしき人に、「村上側は崩落で通行できない。歩きだと何とか行けるが、車やバイクは通れない」と聞いて、とりあえず行けるところまでと思って来てみたそうだ。
 なんでも小国への蕨峠も派手な崩落で通行止めとのこと。ええ〜!!ということは、この後村上側へ行けないとすると、県境近くまで登り返し、元屋敷林道へ下り直さないといけないのだ。今後の可能性が足下から一気に崩れ去ってゆくのを感じた。思えばさっきから見かけた車、バイクは、みんな村上側から来たものではなく、多分県境付近で分岐していた元屋敷林道からやってきたものなのであった。
 まあそれも良いかもしれない、時間さえあれば。もうお昼過ぎ。今から登り返してどうだろう、16時前かもしれない。それから林道へ下って里へ下りて、さらに海岸の羽越本線のどこかへ着くと、19時ぐらいにはなるかもしれない。ぎりぎりだ。何だか嫌な感じではある。
 「徒歩は行けるみたいだよ」とそのおじさんは繰り返して言う。少し考えたが、ここは突破が一番手っ取り早そうに思えた。「ぼくがここ登って自転車向こうに渡してあげるよ。だからあなたこっちで自転車持ち上げて、向こうで受け取って」と、とても有り難い申し出もしてくれた。自分が辿り着けない分の希望を私に託してくれているのである。こういう大義名分ができてしまうと、もう行くしかない。

 フェンスを越え、岩山に張り付く登り返しを登ると、やはりさっきの奥三面貯水池と同じく、対岸の入り組んだ山肌、そしてこちらとあちらの山肌の間に形作られた縦長の空間が迫力満点だ。一方、路面には枝は落ちているものの、やはり意外に綺麗だ。しかし、さっき登ってきたの山形県側みたいに、昨日通ったと思えるような形跡も見られない。いまいち今後の確信が持てない、微妙な状況と言えた。

 それより路面は相変わらず猿の糞が多く、こんなに景色の良い道が台無しだ。半分猿の生活の場だよな、こりゃあ。この分だと、アップダウンの最後のトンネルには、車が通らないのを良いことに何か獣が住んでいるかもしれない。熊じゃないと良いが。
 と、そこまで考えてようやく気が付いた。長期通行止めの場合、トンネルの入口は塞がれることがある。ここも何かの方法で塞がれていないのだろうか。その塞ぎ方次第では、また撤退しないといけないかもしれない。あの執念深いさっきのフェンスを見れば、ますます心配だ。もしそうなら、今度こそ元屋敷林道へ登り返しだ。崩落箇所がこちら側からみてトンネル手前にあれば、トンネルはまず通れるだろう。問題はトンネルの村上側に崩落がある場合だ。
 その崩落箇所自体が、果たして通行可能なものかどうか、確信が持てない状況なのだ。

 いつ崩落箇所が現れるかおそるおそる先へ進む。あまり用心しても意味はないのだが、何と無く下りペースも必要以上にそろそろ気味になってしまう。

 意外にもいつまで経っても崩落箇所は現れない。アップダウンの3回目、ダム湖岸の営業休止中らしいキャンプ場を過ぎ、しばらく登り返したところで登場したトンネルには、どうやら何もフェンスらしき物は無かった。やったやった、これでとりあえず第一関門は無事クリアだ。

 無事にトンネル出口を抜けると、いよいよ三面ダム外側、道はもう下る一方のはずだ。そこで件の崩落箇所は現れた。細かく入り組んだ山肌に張り付いた急下りの狭い道、その幅半分ぐらいまで崩落土砂が溜まったままで、そのど真ん中に直径3mぐらいの巨大な落石が埋まっている。日曜日なので工事は今日はお休みのようだが、通行止めの理由がよくわかった。
 その外側に、1m以下の幅でアスファルト路面が綺麗に露出している。確かに車は通れない。しかし歩行者、そして自転車も問題なく通行可能である。バイクはどうかと言われると、徐行は可能だろうが、こういう場合はバイクはダメなんだろうなあ。

 ダム部分の脇をトンネルで抜けてしまうのは、ダム外周道路にありがちなパターンだ。時々振り返ると、勢い良く下る道の外側、山と森の真ん中に、ちょっと古びた三面ダムがそびえていた。

 切り立った斜面に張り付いて、森の中、そして時には高い茂みの中を、谷底に向かって道はどんどん下って行く。やはりありがちなパターンで谷底もどんどん下っているようで、意外に下りでがある。行く手には村上へ続く平野がもう見えていたが、さっきまでいた山奥の道を思い出した。前に見えるあの平野からこれぐらい登っただけで、あんなに山奥に来てしまうのだ。下りでもあろうというものである。

 千縄からは三面川河岸の杉林の道。布部で田圃の中へ放り出されると、そこはもうすっかり新潟の片田舎である。

 田圃や農村をつなぎながら三面川を渡ると、豊かな流れと鮎釣りの釣り人がいかにも夏の景色らしい。

 すぐだと思っていると意外にこの平野で距離があるようだが、もうそんなもんどうでもいい。

 田圃、集落、ひたすらのんびりと田舎の平野をてれてれ流し、13:55、村上着。

鶴岡から朝日スーパー林道経由で村上へ 赤は本日の経路

 すぐに時刻表をチェックすると、次の電車は15時前、1時間ある。こうなるととたんにやる気が無くなって、単なる輪行作業に10分以上掛かってしまうのが我ながらおかしい。駅前の片隅でてれてれ自転車を解体、その解体中ちょっかいを掛けてきた部活帰りの学生からお奨めラーメン屋情報を入手し、遅めの昼食へ。

記 2008/8/1

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Last Update 2019/7/25
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