鶴岡→(県道350)外内島→(国道112)下山添
→(県道383)宮ノ下(国道112)朝日→(県道44)行沢
→→(県道349:朝日スーパー林道)大鳥
(以上#1)
→(県道349:朝日スーパー林道)林道元屋敷線分岐
(以下#3)
→(県道349:朝日スーパー林道)猿田川野営場
→(県道206)猿田発電所
(以下#4)
→(県道206他)村上 90km
舗装路面にはやや落ち枝や落ち葉が増えていたが、まだまだ時々清掃されていることが伺えるレベルだ。道両側の草も刈り込まれていて、この状態なら全く平常時と同じだろう。もともと斜度はこの谷の奥までかなりだらだらだったはずだし、しばらく心配なのは手に負えない崩落だけだ。
西大鳥ダムを過ぎ、舗装路がダートに変わった。それでも路面は良好、タイヤ跡は未だに続いていて、そのタイヤ跡のエッジが効いていたり、葉っぱや枝を踏みつけた感じがどう見ても昨日ぐらいの新しさだったり、しばらくは楽しく道を遡れた。
が、道路脇の刈り込みが見られなくなった辺りから、道の雰囲気は少しずつ変わり始めた。人気の代わりに明らかにしっとりワイルドな雰囲気が漂っているのである。
途中からはいままで刈り込まれていた形跡があった道ばたの草は生い茂り放題となり、背の高い草、木の枝が両側から道路に覆い被さり、薄暗く湿った路上の空間には寝ぼけた羽虫が飛び交っている。手に取ってみると、何だか発光しない大型のホタルのようだ。
また、途中の崩落撤去跡っぽい土が残った場所を過ぎた辺りから、やや斜度が厳しい箇所が少しずつ現れ始めた。
そういう場所に限って、良好だった路面も深い砂利の道となり、仕方なく押しを強いられた。
一度舗装路面が復活し、再びダートとなる辺りからその傾向はますます顕著になってきた。
気が付くと明らかに昨日通ったと思えていたタイヤ跡の鮮度も、先週1回ぐらい車が通ったかもしれない、という程度に変わっていて、所々の崩落片づけ跡でも次第に路肩に土砂が増えてきていた.
茂みはますます深く、所々で路上に溜まっているのふきの茎を巻き込んで泥除けがひしゃげたほどだ。忘れた頃に起こるこのトラブル、前回は2005年の夏だった。平均2年置きにこれが起こるので、今回は長持ちしたと言える。そんなことを考えていないと、何だか心細い。いつ大崩落が現れてもおかしくないし、雰囲気的にどんな野生動物が現れても不思議ではない。
仕方ないのでベルを鳴らしながら進むが、それもあまり落ち着かない。なぜ熊鈴を持ってこなかったんだろう、とちょっと後悔。
びくびくしながら、しかしここまで来るともうかなり谷の奥まで来ているのである。さっきから辺りの雑木林はブナ林に変わっていて、道は支流の谷間で高度を稼ぎながら登る一方である。
斜度が厳しくなってから辺りはやや開け始め、今来た道を見下ろせるようになっていた。
そうなると、もうあとは県境の峠まで曲がり角のカウントダウン状態である。
時々妙に暗くなっていた向こう側の曇り空も、何とか心配ないぐらいに明るくなっていた。
9:25、県境着。押しが入ったためか、だいぶペースはゆっくり気味だ。県境自体は切り通しで、苔生したコンクリート擁壁に張り付けられた県境標識以外見るべきものは無い。しかし、行く手のカーブの外側、木の向こうに、大きな空が拡がっているのが見た瞬間わかる。
木の間隔がそう広くないため視界は遮られるが、切り立った山々とすとんと数百m落ち込んだ谷間が現れた。前回も確かここで度肝を抜かれたと思ったが、やはり言い景色は何度見ても良いのである。おまけに今回は真夏で緑の勢いが良く、切り立った斜面の雪崩のために露になった岩肌と好対照だ。
県境から先、尾根を乗り越えて今までの登りがほぼ平坦の下り基調となった道は、しばらく稜線近くで尾根道ダートとなる。高い草のためにさっきちらっと見えた谷間の見通しは無いのが惜しいが、空に開けた開放感は今日始めて感じる感覚だ。
谷間の景色、荒々しい山肌は、途中の展望広場でもう一度眺めることができた。
灰色の雲と霞で空気に透明感は無いが、生い茂って谷間を埋め尽くし、山肌を駆け上がる濃い緑の木々、急斜面に現れた荒々しい山肌、それが霞の中に続いて行く。前回の快晴も良かったが、今日みたいな曇りも迫力があって悪くない。
展望広場から路面は舗装区間が始まるが、その展望広場のすぐ向こうはせっかくの舗装路面が小崩落で完全に埋まっていた。多少大きな落石もあり、これは乗用車は越えられないだろう。
万が一バウンドして路面から転落すると、状況的に谷底へ真っ逆様だ。だが、自転車なら担いで通ることができる。
やっぱり身軽は良いね、などと考えながらそこさえ過ぎれば、さすがに尾根道、やや多めの落石とやや多めの猿の糞以外に行く手を遮る物は無い。
猿の糞はけっこういっぱい路面に落ちていて、色は全体的に緑っぽい。植物主体の食事なのだろう。なかなかヘルシーな奴らだが、路上に糞を落としっぱなしな割にはその姿を見せやしない。
通行止めフェンスが2ヶ所、そのうち1ヶ所はコンクリートキューブが並べられていて、普通の乗用車では手も足も出ないだろう。
しかし、そのコンクリート塊の向こうに、ライトバンが停まっていた。ようやく通行止め区間を抜けたのだ。
記 2008/8/1