10:05、豊富発。道道444でサロベツ原野を横断して、日本海側へ向かう。
牧草地の中を通って西豊富の丘陵を抜けると、灌木帯の向こうに一面緑の草原が拡がった。サロベツ原生花園である。
外周の低山にぐるっと取り囲まれた草原が、この晴天でとても鮮やかになっている。
青空の下、緑の原野に一直線の道道444が伸びてゆく。草原の上は濃い青空、今日も真上に昇ってしまった太陽でどんどん気温が上がっていて、じりじり干上がりそうに暑い。
空の中には真っ白な雲が速く動いていて、時々雲が高く登った太陽を隠すと、涼しい風が吹いてきた。
遠くの海岸部との境は森になっている。その向こう、海上らしい辺りにはまだ雲が低く残っていた。
この辺りも朝のうち曇りだったのかと思いながら、雲の中にひときわ盛り上がっている部分をよく見て気がついた。雲ではなく、利尻島がかなり巨大に間近に見えているのだった。
去年も思ったが、ここからの利尻島は草原の奥、森の向こうにいきなり立っているように見える。その近い位置と距離感には、陸地の山に見慣れない新鮮さがある。
取り巻く景色を見回しながら草原を突っ切り、そのまま縁の森の丘を越えると、海岸部の草原が拡がって、その向こうに道道106と日本海が見えた。11:05、稚咲内着。去年は道道106をずっと南下してここから内陸へ向かったのだが、今年は去年を南下を引き継ぐことになる。
海岸の砂浜と無人の草原の境に、果てしなくどこまでも続く1本道、道道106。一直線の道、電線、日本海、陸側の草原、ひたすら同じ風景が続く。
横を向くと、海の中ほぼ正面に利尻富士が見えた。過去最大級にはっきりと巨大なその姿は、ちょっと不自然なほど明瞭である。裾に溜まっている雲の見え方、海岸部の漁港なども異様なほど近くくっきり見える。あるいは何か蜃気楼のようなものかもしれない。
こちらから眺める利尻富士は、北側は美しい曲線で海面から頂上部まで山肌が続いている。まさに利尻「富士」の名前にふさわしい。一方、南側の稜線は頂部からぎざぎざに鋭く尖った岩場が続き、その岩肌もやはり荒々しくはっきり見える。
今まで利尻にこんな稜線を意識したことはなかった。それ程今日は景色がはっきり見えているのだ。
利尻富士のど迫力に隠れていたが、よく見ると礼文島も利尻島の影に見える。いや、二つの島が重なって、一つの島みたいだ。
浜里辺りから、この道では有名な音類の風車群、オトンルイ風力発電所が遠くに見え始める。その姿は余程巨大なのか、姿が見え始めてからなかなか近づけない。
それでもやがて風車郡の下を通過すると、間もなく天塩川を渡り、天塩の町並みが草原の遠くに見えてきた。河口で眺める天塩川の流れはゆったりと穏やかで広々としている。日本第4位の大河というのを納得させられる。
12:10、天塩着。この地域では大きな漁業の町である。何と言っても天塩支庁の名前となっているのだ。
海岸の道はこの天塩以南では国道232となるが、その国道232へ合流するためやや内陸へ向かう道道106を見送り、旧道らしき道でお昼の静かな町中をショートカット。お昼時ということもあって、前回2003年の時に目を付けていた、「道の駅てしお」の食堂で昼食とする。ニシン焼魚定食の脂の乗った半身がとても美味しい。
記 2007/9/29