北海道Tour07 #1-2
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10:50、松前着。
そう大きな町ではないが、新しい建物はみんな黒い瓦葺き風屋根に漆喰風白壁で、蔵っぽい。城下町らしい町並み景観づくりがされているようである。その道の正面には、高台に建つ松前城が、町を睥睨している。北海道では見慣れない、城下町らしい風景だ。
まだぎりぎり10時台。ここまでずっと雨ではあるが、ほぼ平地主体のためペースは順調で、予定通りの行程である。適当そうな飯屋もあり、ここで昼飯を食うと調達の観点からは都合が良さそうだ。でもまだまだ先は長いし、この先余裕ができたと言うほど早着という訳でもない。とりあえず町外れの国道228取付の激坂から登った台地でセイコーマートに遭遇できたので、そこでお茶を濁すことに。
ちょっと休んだつもりでもあっと言う間に25分が過ぎ、11:25、建石発。
ここから館浜、札前、赤神、静裏、茂草としばらく日本海側の漁村断続区間となる。手持ちの地図では集落沿いに国道228が続いているが、実際にはその旧道に付かず離れずで、国道228は台地上のバイパスとなっている。台地と言っても登ってみればそう高くない程度、天気さえよければ草原と海と山々の景色を楽しめた記憶がある。
しかし、今日はその全てががどんよりした雲の中へ消えている。こうなると、漁村を辿る旧道の方が圧倒的に楽しい道だ。
北海道の旧道は、内地でみられるいわゆる旧街道、連続している生活空間の表情とはニュアンスが異なることが多い。というより、もともと交通量が少ないため、旧道は管理されずにすぐ荒れ放題になってしまう傾向がある。
しかしこの日本海側最南部では、旧道は漁村の中の道だ。
密集した民家や干してある漁具の間の狭い道に、自転車や軽自動車がのんびり通り過ぎる、生き生きした生活空間としての道の表情が見られる。
北上区間に入ってから、雨は相変わらずというより、強くなったり弱くなったりだったのが均等にしつこく変わっていた。
小浜からは漁村が途切れ始め、高台の道となった。時々集落で少し高度を下げるが、こうなるともう旧道へは行かないのが我ながら現金だ。
原口の先からはしばらく完全に集落が途切れ、道は台地上で更に高度を上げてゆく。
最高地点でもたかだか標高80mとかそんなもんだが、それでも行く手の緑の草原と森の中をぐわっと高度を上げる道に、気持ちはちょっと引き締まる。
そうでなくても海岸にますます山が迫るこの区間、濃い木々に覆われた緑の急斜面は迫力のある景色で、特にところどころで橋で渡る川では、ぐいぐい山の中へ遡る緑の谷が素晴らしい。一方、そういう場所では海側にも一瞬視界が開け、荒々しく真っ逆様に落ちて行く岩肌と、向こうに拡がる日本海を眺めることができる。
次第に強くなる雨の中、晴れたら素晴らしいだろう景色の中を、粛々ととぼとぼと一人アップダウンを消化する。
石崎で再び海岸近くに降りると、再び汐吹、扇石、木ノ子と漁村が断続し始める。
砂浜沿いの大安在浜を過ぎた辺りから、今までも強くなったり弱くなったりしていた雨が再び強くなってきていたが、もう松前からの海岸線が一段落する上ノ国が近い。
とりあえず一気に台地の大岬、原歌を回り込み、再び低地に下って上ノ国へ。
久々のまとまった町である。日本海北上コースとしてはこの上ノ国と、すぐ近接するこの地方最大の町の江差で一つの区切りと言えるが、今日はそのまままだ先に進まないといけない。あまりうだうだできないのだ。
ふと目についた公共施設の大きな軒下の庇に反射的に雨宿りしているうち、有り難いことにすっと雨が弱くなってきた。もう一気に江差へ向かってしまおう。
上ノ国から江差へは、この日本海側の海岸通り中では珍しい、鉄道沿いの区間だ。さっきまでの松前からの道に較べて、何と無く景色も交通量も慌ただしい印象があるが、それだけ江差はこの辺りでは大きな町なのだ。
その通りに、行く手に現れた江差の町には、近づくに連れてまるで軍艦の艦橋みたいな町並みがよく見えてきた。海岸の狭い平地から台地へ駆け上がる急斜面に、漁業関係なのか倉庫や加工場、もちろん公共施設や普通の建物が張り付いているのが、何だかものものしいのだ。
記 2007/8/30