函館→(国道5)亀田町→(国道228)渡島知内
→(道道698)湯ノ里→(国道228)松前
(以下#1-2)
226km
窓の外が薄明るい。時計を見ると4時ちょうど。まだもう少し寝たいが、何ともう30分強で函館到着なのだった。淡々と、しかし快調な走りの窓の外、山や谷間、農家の雰囲気、もはや津軽海峡線の函館近くである。景色には霧が掛かり、路面はどうやら黒々と濡れているようだ。だめ押しで時々渡る川が泥水の濁流になっている。昨夜の雨は全然止んでいないのだった。
仕方無い。ここまで来て、走るか止めるかと問われれば、もう走るしかないのである。それにその雨も、腹を決めたら何とか凌げそうな位の弱々しい雨のように見える。ような気もしないでもない。かな?
窓の外の住宅はいつの間にか切れ目無く続き始め、4:33、北斗星1号は函館定刻到着。薄暗いホームにしばらく停車する列車の脇を、何と無く眠そうにとぼとぼ歩く函館下車の乗客達。後に付いて改札へ向かった。
改築工事済現代風の駅舎それ自体には、かつて青函連絡船で到着した函館駅の面影は全く無い。ところが、待合室、駅前には、冷凍マグロ競りのように横になった駅寝者がうじゃうじゃ。それどころか、きっちり固めて並べられた待合室のベンチなど、どう見ても駅寝を意識しているようにすら見える。連絡船待ちの乗客が駅で仮眠した函館駅、妙なところにそんな伝統が残っているのである。
駅の軒の外では、顔に霧雨の水滴がぽつぽつ感じられる。天気予報によれば、今日は1日雨。これより強くならないと良いが、そういうわけにもいかないだろう。
はっきりしない天気であまり気分も盛り上がらないが、のろのろやってもほぼ40分ぐらいで自転車組立は完了。が、せっかくなので市場で朝食を摂ることにした。記憶にあるかつての市場が建て替えられたのか、だいぶ綺麗になっていて、ご丁寧に駅側には丼飯屋が固まっていた。もう少し市場の内側でそれっぽい店を見繕い、それっぽい三色丼を所望。
そんなことをしていると、あっと言う間に時間が過ぎてしまうのはいつも通りだが、時間が過ぎたお陰で幸い霧雨は止んだようだ。空は雲でやや薄暗いが、今日はもしかしたら朝のうちの雨ということだけで行けるかもしれないのかもしれない。
6:00函館発。国道5で街中を進み、亀田町の跨線橋から国道228へ。海岸沿いの1本道とは言え、上磯のセメント工場までは市街地が続くのは前回の記憶通り。まあ北海道の市街地らしい道がしばらく続く。
そのセメント工場を過ぎた先から、辺りは急に漁村沿いの地方国道らしい風景となる。函館を出発してから少しづつ減っていた交通量も、ここまで残っていたダンプカーが一気にいなくなるため、まあまあツーリング許容範囲内の落ち着いた雰囲気となった。
せっかく道が落ち着いたところで、一旦明るくなった空から、顔に少しずつ水滴を感じるようになってきた。やばいかな、と思ってしばらくそのまま進むが、いつの間にか近くの海面に水滴の後が目立ち始めている。やはり今日は雨なのだった。
雨は渡島当別を過ぎた辺りでいよいよ大雨に変わった。たまらないのでようやく雨具を着込んで先に進む。
岸の山が海岸に近づいたり少し遠ざかって平地が現れても、道は海岸沿いの一番低い場所に淡々と平坦に続く。漁村は地図通りに現れたり地図通りに途切れたり、交通量は相変わらずまあそう慌ただしくない程度に静か。ずっと強くなったり弱くなったりの雨の中。淡々と雨具の中で足を回して汗をかき、時間と距離が過ぎていった。景色はずっと道と海と緑と漁村、平行する津軽海峡線に時々通過して行く列車が、変化と言えば変化かもしれない。特に貨物列車は異常な長さで、さすが津軽海峡線と思わせられた。
海岸に迫っていた山が退いて、函館からここまで見慣れなかった平野が拡がると、渡島知内である。ここから渡島福島までの海岸線には、道が通じていない。北海道の日本海川の海岸線で、こういう区間はここと明日通る予定の大成・瀬棚間と積丹半島の先っちょだけだ。これらの区間で海岸沿いの道を造っているという情報も、もう20年以上前から聞いたことが無く、地図からもそれは読みとれない。恐らく凄い岩場が続いているのだろう。
このため、国道228は海岸線から内陸へ入って、標高わずか160mの福島峠越えとなる。
平野部で内陸へ向かうだけあり、渡島知内から少し谷を入った湯の里まで裏道の道道698を経由することができるので、気分転換でそちらへ進んでみた。畑の中の広々とした静かな直線道路はいかにも田舎道道らしく、気持ちが落ち着く。
しかし辺りの雰囲気は変わっても、雨は微妙に続いていた。路面こそ乾きつつあったが、微妙な霧雨が途切れることが無かった。
湯ノ里から早くも国道228へ復帰。締まりの無い谷間というか、だらっとした低山の山間にだらっとした道がしばらく続き、最後はトンネル越え。
再びだらっと下って農村から海岸へ出ると、渡島福島である。
「横綱の里ふくしま」という名前の道の駅で休憩。そう広くない駐車場には、派手な幟が何本も立っていて、やや小さめの建屋が完全に負けている。「千代の山」「千代の富士」という2横綱が徹底的に奉られているようで、隣の町立体育館には九重部屋が合宿に来ているようだった。
雨の海岸道路はその先も続いた。
岩場が増えた見通しの良い道の行く手はなかなか見事な眺めで、ここまで雨だともはや天気が残念だとも思わず、素直に景色を楽しめるようになっていた。この辺りまで来ると、海の向こうの霧っぽい水平線に、津軽半島の大きな陰が浮かんでいるのである。
白神岬をぐるっと回り込むと、今までずっと南下だったのがいよいよ北上を開始。函館からもはや80km超、漁村の道の数kmも体感上あっと言う間ではある。
記 2007/8/30