キャンプ場の事務所で給水後、11:50小口発。
和田川の狭く屈曲した無人の谷間に沿って、登り基調のアップダウンで細道が延々と続く。谷間を挟んだ山というより岩が垂直に切り立ち、道の上にも下にも近くも遠くも、荒々しく迫る岩の表情が迫力満点だ。
おまけに伸び盛りの新緑が、谷間を埋め尽くす程ボリュームを増していて、渓谷が鬱蒼としたジャングル状態になっている。緑と岩の色は、雲一つ無い青空と鋭い太陽光線とで、景色を濃厚な色で埋め尽くしていた。
例によって川の流れは凄い透明度で、紀伊半島のこの手の川らしく、比較的平坦に、渓谷らしい表情と幅とともに曲がりくねって延々と続く。
こういう川には釣り人も目を付けるようで、時々道ばたには釣り人の物らしい車が停まっていて、荒々しい無人の景色の中でほっとさせられる。
曲がりくねった谷間のあっちとこっちの川に挟まれて、時々岩は屏風のようになっていて、道はそういう岩を短いトンネルで抜けて行く。このトンネルがまたことごとく素堀なのである。また、路上には落石や岩屑が溜まっていて、細く狭い登り基調なのもあってのろのろ進行だが、ガードレールも無いのに見晴らしのいい場所が多く、走りながら余所見をしないように注意する必要があった。
岩場では、時々まるで猿に上から狙われているかのようなタイミングで落石が落ちてくることがあって、そんなことにも注意が必要だった。岩の途中でイレギュラーにバウンドするので当たらない、と言う程度にばっちりのタイミングなのである。直撃したら、まずまともな状態ではいられないだろう。
地図上では何軒か建物が描いてある畝畑には、林業関係者というより木こりの住まいのような民家が1軒ずつ、間を置いて登場した。一番奥のホイホイ坂林道分岐では、森がほんの少し開けていて家も新しく、再び人の営みに出会えたことが嬉しく思えた。ちなみにこのホイホイ坂林道、その名前で有名だったが長らく建設中で、最近全通した林道だ。ホイホイ坂とは一体どういう坂なのか。ホイホイ登れてしまうのか。いや、この山の中、しかも地図を見るとますます険しそうで、そんな甘い話は無さそうだ。何はともあれ、話の種に一度通ってみたいとは考えている。でも、危険な香りが漂っていそうな気もしないでもない。
畝畑から先、切り立った岩に挟まれた狭い渓谷から谷間を見下ろす道へとやや表情を変え、谷はぐいぐいと登り続けた。前回こっち側は最上部のトンネルから小口まで全区間ダートだったが、今回はここまで来てまだダートを見ていない。5年の間に完全舗装されてしまったのだと思った。
それまでのくねくねで狭い谷間とは裏腹に、登り始めると一直線にどんどん遡るタイプの谷間だ。地図で眺める以上にしばらく登りが続いた。
結局最後まで舗装は完了していて、14:00、トンネル着。もう1時間早かったら安心なのに。朝寄り道してしまった報いである。いや、むしろ見込み全体が甘かった。
トンネルの向こうは古座川最上流部の谷。面白いぐらいにすとんと落ち込んでいる。
細道はしばらく例によって切り立った山肌に張り付いて、あっちこっちを行ったり来たりしつつ、谷底へ一気に降りてしまう。
谷底へ降りると古座川に合流。狭い谷間の暗い森の中をどんどん下り続けるが、この下りがまたとても長い。
杉林の小刻みカーブが長い間続いた後、松根に入って集落が現れたはいいが、地図を見てみると下りきる国道371合流までまだ半分も来ていないのだった。
小さな集落が断続して延々と続き、谷は少しづつ次第に開けていった。
最後は川幅が広がって七川貯水池の外れへ。
15:00、椀平で国道371合流。峠部分のトンネルから七川貯水池到着まで結局1時間掛かったことになる。
国道371の看板には「すさみ町」の文字があった。この道のそっち方面は、以前は未通区間を本山谷平井林道が結んでいた。ひょっとしてトンネルか何かで国道見通区間が開通したのか。なら行っても良いような気分である。しかし訊ねてみると、どうもそんな道は無く、未通区間の林道含みの看板なのだった。
記 2007/5/5