紀伊半島Tour06 #2-2
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(以上#2-1) |
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しばらく山の森の中、狭め2車線のくねくね道が続いた。交通量は十二分にサイクリング許容範囲だが、さすがに国道、さっきまでの静かな県道778の静けさとはやはり比較にならない。風景も閉鎖的で、時々海の展望が開けると、ダイナミックな熊野灘の岩場や遠くに霞む海岸線に思わず立ち止まる。
三木浦から小脇町へ、再び道は海岸沿いまで降りてゆく。静かな漁村には、しかしながら漁港や商店、学校に家並み、どことなく生活感というか、力強い親しみやすさを感じる景色が拡がっている。
名柄町で現れた、白い砂浜とエメラルドグリーンの海の美しさは素晴らしい。志摩半島と違い、その景色の向こうに力強い熊野の山が聳えていて、その山が燃えるような新緑で彩られていて、美しい海と独特の風景を作っていた。
10:10三木里発。素晴らしい景色に夢中になっている間に、熊野市到着希望時刻が来てしまった。地図上のボリュームを見ると、入り組んだ海岸線にまだいくつも上り下りがある。タイムリミットの11時到着もほぼ絶望的だ。熊野市に着いた段階で、何らかの下方修正措置を前向きに考えよう。
湾内の漁村を過ぎると登りになり、高台や小半島を越えて次の漁村に降りる。この繰り返しが際限無く続いた。湾に降りるときに、次の登りが美しい湾を挟んで新緑の山に登っていくのが見えるのが、何ともやる気を削がれる。実際に登るとそう大した登りではないのだが。
賀田で国道42へ向かう県道70が分岐。ここでもともと十分にサイクリング許容範囲内だった交通量が一気に減った。
賀田から甫母町まで、手持ちの1/5万図では国道未開通で、2001年のツーリングマップルでは海中に掛かって建設中の道が強引に描かれている。インターネット地図でトンネル開通が確認できたので、どうやら最近開通したらしいその実態、周辺状況には興味津々だった。
実際の道は、まあ入り組んだ山中を長大トンネルでばんばん抜ける、ありがちな雰囲気である。交通量が少ないのが有り難いぐらいな程度か。
ところが連続トンネル区間が終わると、下っていく湾内の展望が開けた。例によって新緑の半島とエメラルドグリーンの海が素晴らしい。
一番奥の漁村へ向かう下りの途中では「全長8m制限」の看板が登場、道幅が急に狭くなった。高さ・重量制限はよく見かけるが、長さ制限というのは珍しい。
切り立った崖に張り付いて、ジャングルのような木立の中を抜ける道は、海側には突起状の縁石しか無い。
まもなく下りきった一番奥の漁村、甫母町では、国道311は4mぐらいの幅なのに、道端に防波堤監視施設のような建物があり、更にそこで道が直角に曲がっている。これが8m制限の理由か、と思った。防波堤と監視施設に挟まれて、長い車は回れないのだ。
その後も静かな道が小さな漁村ごとに海面まで降り、その度に岬越えアップダウンと湾内の素晴らしい風景が入れ替わり立ち替わり現れた。
しかし、少しづつ進んでいる道路改良により、漁村の上の高台を新道で通過する箇所も多い。
二木島では、岩場の漁村を見下していると、JR紀勢本線の特急南紀が手前のトンネルから飛び出し、漁村の上手を横断。またすぐに次のトンネルに突入していった。
遊木町で漁港の脇を通過すると、湾の奥の新鹿町へ。
旧道の細道から高台の新道へ。再び細道に変わって湾の奥へまっしぐらに下ってゆく。
海が美しい今回の道程の中でも最上級のエメラルドグリーンと白い砂浜。まるで絵に描いたような色である。
しかし一方、新鹿町でもはや11時過ぎ。希望到着時刻から2時間、タイムリミットからでも1時間遅れている。具体的な下方修正が必要な局面を迎えていた。
まあしょっちゅう登りが現れるので、現実としてはは急ぎたくても急げるわけも無い。波田須町、磯崎町と、最後の最後までしつこく現れるアップダウンを、ひとつひとつ粛々と確実にこなすしかなかった。
行程を焦る気持ちはあったが、次の大泊町でこの熊野灘の道も終わりなのである。そうなると、むしろいつまでも目の前の素晴らしい景色をのんびり眺めていたくもあった。
記 2006.5/13