2005.6/5 御荷鉾林道 #3 |
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あとはもうひたすら下ってしまうだけなのだが、まだまだしばらくだらだら下りが続くようだった。
雲が多めの空の中に、奥多野街道の谷の向こうの上武国境の山々が時々見渡せるようになり、なかなか気分はいい。やがて舗装が復活。
塩沢峠を過ぎ、まもなく前方が開けた。ちょっと水墨画のように半分シルエット化した濃緑の山がもこもこ隆起する、その中へ道が下ってゆく光景は迫力がある。
その風景通りに、道がぐいぐい下り始めた。いつの間にか標高1000m未満、さすがに日差しが復活して気温が上がっている。所々で再びヒメハルゼミの声が聞こえてきて、そろそろ赤みが増した日差しは緑を鮮やかにしていた。
もはやひたすら下りが続く。森の中だったり時々周囲の山々が見渡せたり、相変わらず景色の傾向は似ていたが、周囲の山々は見下ろす位置から次第に山肌を横に見るような位置関係に変わっていった。さすがにそろそろこの長い林道も終わりに近づいているのだ。
そうなると何と無く景色の中には里の香りが復活し始める。分岐の標識も次第に増え、最後は神流湖を眺めながら16:10、国道462に合流。
神流湖の対岸には、さっきまで見下ろしていた上武国境の山が立ち上がっている。もう城峰山の向こう側、このまま関東平野に降りても秩父へ向かっても、そう大した距離は無いのである。
神流ダムを過ぎると、国道は向こうの谷底まで豪快に一気に下る。下りきると鬼石の外れで、もうそこかしこに関東平野の雰囲気が漂っていた。
16:35、鬼石着。ここで少し今後の進路について検討する。地図を見ると、一番近いのは八高線の児玉で、僅かに下り基調でたった約10km。ただ、所詮八高線、児玉駅からの本数が少ない。でも列車が一時間以上先なら、少し足を延ばして高崎線に出てもいいだろう。
一方、もう少し遠い西武秩父から輪行すれば、所沢で同じホームの乗り換え1回と、乗り換えは圧倒的に楽だ。ところが、西武秩父方面にどんよりと濃い雲が溜まっているのが見える。秩父までちょっと登ってちょっと下って20km強というところだろう。あの雲だと、雨が一時間持つかどうかはかなり疑問だ。
でもまあ秩父まで行かなくても、最悪長瀞か皆野で秩父鉄道に出ればいいのだ。これだと帰りは寄居から東武東上線というチョイスもある。もちろん八高線より本数は多い。とりあえずもう少し走った方がいいかもしれない。
鬼石の町外れから県道13のだらだら坂を少し登って杉の峠へ。見下ろす神流川は、青くなってきた山々のシルエットをバックに、夕方の空を曖昧な色で反射していた。
杉の峠から今村、出牛と県道13を進む。さすがに長瀞近く、谷間の道は田舎っぽくはあっても、多少埃っぽくもある。
こうなると、もうあとはひたすら下るだけだ。
17:35、皆野着。さすがにこの先は国道140、いつの間にか頭から輪行する気でまず列車の時刻をチェック。と、次の列車は約20分後なのだった。皆野から西武秩父最寄りの御花畑まで乗車15分、御花畑から西武秩父まで輪行状態の自転車を抱えて徒歩5分弱。つまり西武秩父着は17時10分ということになる。毎時24分には西武秩父から池袋行きの特急が出るので、余裕時間は10分強。間に合うっちゃあ間に合う。
でも、これなら絶対に走った方が早い。もう西武秩父まで10km無いのだ。
しかも、秩父方面に真っ黒な雲が近づいている。ここで輪行すると自動的に御花畑から西武秩父までは徒歩になる。雨の危険が増すより遅い時間に、歩かないといけないのだ。
というわけで埃っぽく排気ガスっぽい国道140をもうひとっ走り。17:55、西武秩父着。
幸い秩父到着まで全く降られなかったが、秩父の町は一雨過ぎたばかりのようで、道はうっすら濡れていた。その雨は列車が秩父を出発する前には、大雨になって秩父に戻ってきたのだった。
記 2005.6/22