「画期的な八高線」対応時刻の3時半に一度起きたのに、何となく溜まっていた寝不足と「南関東曇り&雨、群馬日中晴れ」という嘘臭い天気予報で寝覚めは悪く、目覚ましを4時半にセットして2度寝してしまった。新幹線で何とかなる等と思うとダメである。
その一方で都合のいい天気予報にはかなり疑いを持っていたが、高崎では予報通りに青空が拡がっていた。力強く明るい朝日に、天気予報の「最高28℃」を納得する。そんな甘いもんじゃないとも思う。
あまり暑くなっても困る。今日向かう御荷鉾林道は、全長約65kmの間全く水場が無いらしいのだ。
1.5lのペットボトルに目一杯水を入れた上で、更に500mlのペットボトルをもうひとつ仕入れて、8:40、下仁田発。
去年田口峠に向かったとき真っ赤に染まっていた谷間が、まあ当然のように緑に覆い尽くされている。緑はもはやすっかり色も密度も濃くなっていて、谷間の冷んやりした空気の中にもむっと湿気が濃厚だ。
塩之沢峠方面への分岐の磐戸、大仁田方面への分岐の大日向、岩場に鏑川が狭く深く落ち込む蝉の渓谷を過ぎると、谷間がぐっと狭くなってきた。この先田口峠方面の迫力満点の岸壁を思い出す。
9:30、観能着。昨秋田口峠行きの時に見つけておいた、集落入口近くの「御荷鉾林道」の看板を目印に、おもむろに道ばたの坂道へ。
取り付きの例によって、きりきりっと登るとすぐに高度が上がり、ついさっき通ってきた道が見下ろせるようになった。気温は下仁田からここまでの間にどんどん上がっていて、蒸し暑さすら感じる。この先早く涼しい辺りまで登ってしまえると良いが。
林道は基本的に閉鎖的な森の中を進んでいる。森の木は杉だったり広葉樹だったり密度が濃く、頭上には木々が張り出したり日差しが当たったり、一方下の方に時々谷間がちらちら見える。
濃い青空から照りつける太陽はかなり厳しくなっているが、木陰では木立の冷んやり涼しい空気に包まれる。その体感気温が、しかしながら5月の涼しさとは明らかに違う。木立はさっき下仁田で感じた通りに濃く勢い良く生い茂り、木漏れ陽には緑が透けるような印象は無い。もう6月なのだ。
少し山の中に入ると、ヒメハルゼミが鳴き始めた。いつも初夏の気分で一杯にさせられるお馴染みの鳴き声に、何とも気分がいい。
緑の中を登り続けていた道が下り始め、わかりにくい分岐で地図を確認。山の中のくねくね道では、GPSの経路記録が心強い。
10:00、更に下って現れた橋へ分岐、再び登り返しである。
入り組んだ山肌に沿って、相変わらず閉鎖的な道がしばらく続いた。だらだら坂が続いてはいるが、見事なまでに展望が開けない。時々木々が開けて見える谷は、緑ばかりでどこの谷間かさっぱりわからない。そんな山の中に、すさまじくでかい送電線の鉄塔が現れ、再び山の中へ消えて行く。
位置の感覚が無いままGPS画面を地図と照合すると、意外なほど位置が進んでいない。この先まだまだ登りが続くはずだ。気長に行こう。
それでも時間なりに足を進め、再び下り始めた道は突如下手から現れた大仁田林道と合流。ここから塩之沢峠までちょっとボリュームのある登りだ。幸いこの区間は去年の秋に偵察することができていたので、当たりは付いている。
11:05、大仁田ダム着。便所のある道ばたのダム施設には、去年訪れたとおりに水場が無い。巨大なダムのコンクリートは殺風景なだけである。
記 2005.6/22