松阪→(県道37・756・他)伊賀町→(県道701)相可 |
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過去2回の紀伊半島アクセスは、無印出雲で深夜京都で降り、近鉄の始発で奈良盆地南端へ朝到着、というパターンを使っていた。これだと初日から奈良南部の山間を走れるメリットがあったが、いかんせん京都着は3時台。近鉄始発までの約1時間は、駅のどこかでごろ寝することになる。
ところが、新幹線を使うと、東京19時前発で松阪着は何と22時過ぎ。ビジネスホテルに泊まれば、3時半に起きるよりもはるかに楽なのであった。
なにしろ激速ののぞみ効果が大きい。そういえば去年もこの時期、四国へ行くのに新幹線&岡山泊で、寝台のサンライズを使うより早く阿波池田に着けたのだった。
6時前に外に出ると、何だか空気が生暖かい。全国各地で最高気温が25℃を越すだろうという天気予報を思い出した。暑くなりすぎなければいいが。
宿周辺で買い出ししているうちに時間が過ぎ、6:20、松阪発。落ち着いた表情の旧道っぽい裏道を眺めながら伊賀町へ。里山の麓から櫛田川沿いの県道701で相可に出る。
この辺りは手入れか元々の造りがいいのか、若しくは気候がいいのか、昔ながらの美しい佇まいの建物が多く、集落が落ち着いた雰囲気だ。集落を抜けると、朝のほわんと明るい光の中で、近くの林や山の明るい新緑の色が輝くようだ。田圃では田植えが終わったばかりのようで、泥水の中の稲が摘めば抜けそうにひょろひょろ植わっている。
相可から櫛田川の谷はやや狭くなる。やはり住人の丁寧な手間仕事が感じられて、人なつこく美しい表情の丹生の集落へ。
次第に周囲は山間になり、谷間の空気がひんやり感じられるようになっている。丹生からおきん茶屋へ出て、国道42に合流。栃原までほんの少しと自分に言い聞かせ、大型車と交通量を我慢。
待望の栃原から宮川対岸の県道747へ。野原、野添と、宮川の河岸段丘上に拡がる茶畑と集落の中を通る。
新緑の茶畑に、周囲の斑の山々が、いかにもこの時期の景色らしい。この辺りは松阪牛の産地でもあるようで、そんな看板も目立つ。お茶の加工場なども時々見かける。新茶が飲みたくなった。
ところが、打見から更に進んだ瀬戸で、何と工事通行止めの看板が。もう少し進むと件の通行止め工事現場があり、自転車でも通行不能とのこと。何でも去年の台風で大規模な崩落があったようだ。
知識としては知っちゃいたつもりではあったが、改めて去年の台風の猛威を痛感した。痛感していても始まらないので、とっとと茶畑の農村を逆行。道自体は楽しいが、これで約20分のロスだ。
打見で宮川対岸川添に渡り直す。ここから宮川に沿って、さっき通行止めだった対岸のの県道747と平行して県道770が、更に蛇行する宮川を内陸でショートカットする国道42が通っている。
出発時と今のタイムロスでちょっと予定より行程は遅れ気味だ。この先、宮川ダムから登る県道603の水呑峠を越え、海山に11時ぐらいまで着ければ、ぜひ大杉林道の千尋峠に向かってみたい。越えた先は延々と大杉渓谷を登った後山の中で林道区間が終わるので、トンネルの先には今日は行くつもりは無い。しかし、ぜひ峠の短いトンネルの向こうに拡がる大杉渓谷の風景を見てみたいのだ。年間降水量全国最多のこのエリアが、今日は天気も申し分無さそうだ。条件はばっちりなのだ。
今の行って戻ってでこの辺りの茶畑も楽しめたので、ここは我慢して国道42へ向かうことにする。
数km先、三瀬谷で旧道の県道770へ入り込むと、再び昔ながらの家並みと細く静かな道が始まった。
三瀬谷から先、鉄道と国道42は宮川の谷から逸れてゆく。谷間の風景は今までにも増して静かにのどかになった。
県道31の木々の間から、広々とした宮川が見え隠れしている。その水面は、まるで絵の具のような水色である。静岡県の南アルプス方面や熊野川でもこんな色を見た。多分鉱物の関係でこんな色になるのだろう。その色とごつごつした岩岸がちょっと独特の荒れた雰囲気ではある。
8:40、真手着。三瀬谷で聞いていた物産館でこの先の大杉渓谷の状況を聞く。さっきの通行止めがあったので、念には念を入れ、ぐらいのつもりだった。
「すいません、この先水呑峠から海山へ行こうと思ってるんですが、海山から登り返す千尋峠の状況、ご存じ無いでしょうか」
「ああ、去年の台風で宮川ダムの先の橋が落ちて、全面通行止めです」
「ええっ、ダメなんですか?」
「ええ、海山にはいけません。大杉渓谷からこの辺の山全体がやられちゃったんです」
何と手前の千石越えもダメらしい。つまり、物産館の方のお話通り、「大杉渓谷からこの辺の山全体がやられちゃった」のである。水呑峠を越えた後、千尋峠へ向かおう等という野望は、朝9時前にしてここに完全に潰えたのである。絶句。
…わかっちゃいたはずだが、またまた去年の台風の凄まじさを痛感。思えば目の前の宮川川岸の荒れた岩も、台風の爪痕なのかもしれない。
しかし素早く気分を切り替えないといけない。結局かなり戻って、滝原から七保峠を越えて藤坂峠へ向かい、その後は熊野灘沿いの海コースに切り替えることにした。
滝原までは紀勢本線沿いに田圃や森の中を進む。以前の乗車時に、のどかな車窓風景に興味を持っていた道だった。
七保峠は標高差はいくらも無く、ほとんど丘越えのような峠だった。杉林の登って下っての後、藤で藤川沿いの谷に合流。この先の藤坂峠を越えれば、熊野灘の海岸線までは下りだけだ。
記 2005.5/2