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ぐいぐいっと登って高塚の集落を過ぎると、ほぼ平坦な細道がくねくねとかなり狭い谷間に続く。コンクリート舗装とダート、棚田と密に生えた木々がが入れ替わり登場する、そのコンパクトな距離感、箱庭感覚は、あまり他では見かけない独特な雰囲気だ。
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行く手の道には時々猿が、自転車が近づくのを確認して山の中へ消えて行く。そう思って気を付けると、上の方の茂みの中から、姿は見えねどがさがさと獣が移動してゆく音が聞こえる。一方、谷の向こうの山の中では、何の鳥か、大群で谷に響きわたるほど大騒ぎしていた。あの大群、まさか猿ではないだろう。
やがて始まった激坂の、一番下から見える最後の急カーブのすぐ向こうに素堀のトンネルが登場。そう長くないが、ライト無しで抜けるにはつらい程度の長さである。くずてつさんによると、暖かい季節には吸血コウモリが飛び交うそうだ。まあ何もコウモリが吸血しなくても、狭くて暗くて不気味なトンネルではある。おまけに登り坂だ。
いくつか短い素堀トンネルが続き、苔生した砂岩と路面を眺めながら再び始まった激坂をもう少し登ると、杉の向こうに棚田が見え始めた。釜ノ台の集落だ。
集落に入ると、急に周囲が拡がった。棚田の隙間を道はくねくね登り、農家の庭先を擦り抜け、稜線近くの尾根道となる。道を進むと斜面の集落が刻一刻と表情を変え、なかなか楽しい。
道の脇には梅の木が多く、白い花が満開だ。ごつごつした桜の低木が並木状に立っている場所もある。春先から新緑の季節にはまたがらっと表情が変わるだろう。
集落の中でも相変わらず激坂は断続したり、稜線近くの等高線に沿ってくねくね進み続ける。変化に富んだ細道が何とも楽しい。
保田見(ぼてみ)の集落が終わる辺りで、南の谷に降りる分岐に入りたかった。が、ころころ変わる周囲や時々開ける谷間の展望に見とれているうち、どうも見逃してしまったようだった。過去2回来ていても、実はいつもどこに分岐があったか、未だに把握できていないのだ。
仕方ないので大分通り過ぎた辺りで、涙を飲んで今登ってきた激坂を戻ってみたが、結局わからない。一往復して、結局もう少し進んだ辺りで畑の脇に入ってゆく道に突入。地図上では破線だし、そう距離もないので、あまり大したことにはならないだろうと思った。
しかし「もう少し、戻るのも何だし」等と思っているうち、行く手の道が途中で完全に消えていて進退窮まった。
結局途中の分岐まで戻り、何とか謎の集落には出ることができて一安心だったが、その後合流したのは、何と出戻りの保田見林道だった。
保田見林道の最後は、毎度のことだが恐怖を感じる激下り。その後はさっき通ってきた志駒川渓谷の県道182に合流する。
記 2005.2/23