2004.10/16
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湯檜曽→(県道63)粟沢→(町道)一畝田→(県道63)坤六峠 |
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高崎のホームで感じた肌寒さは、上越線の普通列車が北上するに連れて増していった。水上での乗り換え時など、もうホームに長居できないぐらいなのだ。
一方、事前の天気予報では日本中激晴れだったのに、沼田辺りから頭上に急速に雲が拡がり始めていた。早朝気温が低いのはまだ理解できなくもない(それでも10月にしちゃ寒い)が、これではこの後気温が上がらないではないか。
後閑を過ぎると、時々冠雪した上越国境の山々が姿を現し、何かとてつもなく寒くなってしまったと思わせられる。
8:19、湯桧曽着。トンネル駅の断面の円弧がシンプルで美しい。地下通路を通り、登山者が駅寝をするという無人の待合室で自転車を組み立て始める。今までが寒かったから当然だが、やはり寒い。果たして今日は走っていいものかどうか心配になる。
それでも自転車を組み立てる間に少しは気温が上がってきたようで、何とかフリースとレッグウォーマーで凌げそうな雰囲気にはなってきた。
8:45、湯桧曽発。
両側近くに急斜面が迫る谷間、農家や民宿が断続して張り付く県道63を少し遡り、粟沢から藤原湖畔の一畝田へショートカットする道へ向かう。
去年通った県道63も、集落あり覆道あり湧き水有りで、途中の藤原湖の展望も楽しかった。こちらは藤原湖の中程へショートカットはするものの、狭い谷間をひたすら遡る閉鎖的な風景が続きそうだ。
まあ今回は日が短いし、そうでなくてもいずれ一度はこちらへ向かうことになるのだ。前向きに考えても今回はこっちでいいだろう。
地図の印象通りに谷間を遡り、トンネルを抜けて藤原湖西岸に出る。見下ろす藤原湖の谷間、対岸の集落は、どんよりした曇り空の下、谷間の広がりに広葉樹がそろそろ色づき始めていた。休日に雨の日が多く、一気に来てしまったように感じる今年の秋だが、それにしても「もうこれかよ」という気がする。
9:30、一畝田着。そのまま県道63へと再合流。くねくねと急斜面に張り付いた登りを進んでゆくと、谷間との標高差は次第に大きくなり、澄んだ空気の中遠く見上げる山肌の、木々の間に雪が目立ち始めた。
森の中や、時には展望が開けたりしながら、県道63はどんどん標高を上げる。落差の大きな谷底に集落が見えた。どういうわけか、まだ刈り取りが終わっていない田圃もある。休日に雨が多かったせいか、いきなりやってきた感がある晩秋の趣に慣れない頭には、そんなところで秋の訪れを感じさせられる。
道が急に谷底へ下り始めると、斜面を巻いたところで目の前に石を積んだような巨大な壁が姿を現す。奈良俣ダムだ。一方、ちらちら見えていた洞元湖が、対岸の奥へ消えていった。その奥にはもうひとつ矢木沢ダムが控えているのだ。有名な矢木沢ダムを以前から一度見てみたいと思ってはいるが、今日はちょっと寄り道する余裕はないだろう。
その奈良俣ダムの前を回り込むと、温泉旅館が数軒並ぶ湯ノ小屋を過ぎ、紅葉で有名な照葉峡に突入する。いよいよ坤六峠の峠区間である。
渓谷の両側から広葉樹が迫り、木の根沢は次第に狭く道に近づいてくる。しばらく進むと、道もぐっと狭く木々に包まれているような道になる。
手前の方では、紅葉はまだ緑の中に所々色付いた部分がある程度だ。その紅葉も、今年は夏が暑かったためか、色がどこかいがらっぽく、近づくと葉っぱ自体がちょりちょりにひからび気味ではある。
一方、いかにも紅葉の名所らしく、この狭い道には多くの自動車が繰り出していた。どこかの信号で溜まったままの団子状態なのか、何台も連続して車が通過する。バイクも多い。こちらからやってくるだけではなく、上からも下ってくる。
路上にもところどころで三脚を立てて紅葉の写真を撮っている。かく言う私も同じく紅葉見物目的ではあるが。
次第に標高が上がって渓谷は次第に狭く浅くなり、周囲の木々が名実ともに色付いたと思えるようになると、道は離陸するようにすっと谷から高度を上げ始めた。
茶色がかったような赤く色付いた巨木の間の中、断続するつづら折れから広々とした武尊山の裾野がよく見渡せる。遠くの2000m級らしき山々が冠雪しているのも見える。
これでもう少し空が明るいと爽やかな風景だがとも思うが、まあ曇りの紅葉もしっとりと味がある。
断続するつづら折れのピッチが少しずつ細かくなり、11:45、坤六峠着。
ブナをはじめとした背の高い広葉樹に囲まれた峠は、煙草をふかすバイク乗りが占拠中だった。仕方無く、隅の方でこそこそおにぎりを食べる。
峠からは、谷を挟んで同じような高さの鳩待峠が、地図と同じようによく見える。あの向こうを少し下ったところが尾瀬なのだ。
記 2004.10/25