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下るに連れ谷間が拡がり、中央を流れる小平蘂川と両岸に拡がった広葉樹林が、少し高い位置の道道からよく見渡せる。その谷間の向こうに小平蘂湖が見えてきた。
9:00、小平蘂湖着。
護岸コンクリート壁が目立つ人造湖ではあるが、今までずっと低山の間の狭く鬱蒼とした谷ばかり通ってきたので、広々とした空間、青空を写す静かな湖面、それらをダイナミックに横切る道や大きな橋の水平線が新鮮な印象だ。
湖上の橋、湖の反対側には、岩山の間から湖に流れ落ちる滝もあるようだ。両側から落ち込んだ岩山の稜線の間、木々に囲まれた岩とその上のVの形に切り取られた空が何とも山深い。あの岩の上にも、奥羽幌の稜線へ続く大樹海が拡がっているに違いない。
小平ダムを過ぎて少し道が下ると、達布である。
ここからは更にもう一つ小さな峠、霧平峠から国道233へ向かう道道867が分岐しているが、今日はこのまま小平に抜けることにする。
町で目に付いた農協スーパーでちょっと休憩。古びた店の構えには、小集落にありがちな小さな店舗という印象があったが、これが想像以上に中が広いのだ。いや、内装が新しいとか増築しているとかではなく、もともと奥に長い木造店舗らしい。広い店内には棚にまばらに、それだけに丁寧に置かれた商品、店員は二人のおばあさん。一人は会計卓で何か帳面を付けている。
何だか時が止まったような雰囲気だ。なかなかの不思議スポットだが、改めてこの達布という場所の地図上での位置を思い出す。何と言っても小平まであと20kmもあるのだ。
ほとんど平坦に近い緩やかな下りを延々20km。少しずつ広くなる谷間には農村、畑、途中から蕎麦畑と田圃が続き、海が近づくに連れ向かい風の海風は強く、そして気温が急に上がった。
10:40、小平着。
両側の台地に挟まれて、平たく張り付いた町のすぐ上から、すかっと青空が拡がっている。低い町並みで直接切り取られたスカイラインに海を直感する。国道232に合流すると、道の両側に張り付いた古びた木造家屋が、何とも道北の西端、最果て感というか日本海沿岸らしさを濃厚に感じさせる。
でも、交通量は意外に多い。それも札幌ナンバーの自動車が目立ち始めている。札幌からここまでかなり距離があるが、思えば札幌から留萌までは、日本海際を国道231の1本道なのである。
そのまま国道232で日本海沿いに南下する。留萌が近いだけあって車の量は圧倒的に増えるが、どうせそれも留萌までの10km足らずだ。
道のすぐ外側には日本海が間近に迫り、広々と新鮮に感じる。強烈な太陽に照らされた海は、青というより明るく濃く鮮やかな紺色になっている。空もまぶしいほど鮮やかな青で、かなり上がってきた気温と共に夏ツーリングの気分が一杯である。
留萌の市街地をくねくねと港側からショートカット、高台の街中で再び国道231に合流。わずか8km北の小平の印象とは全く違う、この地域の中心市街地らしい拡がりと密度を持つ街だ。しかし、街外れの台地を下って再び海岸沿いに出ると、再び漁村と青い海、青い空の道だ。
正面には、雄冬から切り立って暑寒別岳へと続く、青い影が大きくなってきた。久しぶりにあっちの海岸線へも行ってみたいが、まあ今回はまだ通っていない道道94へ向かうという指命がある。
12:20、元阿分発。ここから道道94に分岐する。
海岸に張り付いた漁村を抜けると、周囲は急に畑が拡がる低山の農村風景になる。その風景には、さっきの小平蘂川の谷のような羽幌方面の面影は無い。むしろポプラも農家のシルエットも、そこはかとなく石狩っぽい。
標高320mの御料峠までは、速度が上がらないので坂だとわかるぐらい、登りというより登り基調と言った方がいいような超だらだら登りが、やはり今までにも増して延々と続く。
周囲は畑から牧草地、そして植林帯、低木の茂みと変わっていった。周囲の山々も、透明度の高い空気を切り裂くようなごつごつのぎざぎざに変わってきた。もうすぐ峠かという気持ちにはなるが、相変わらず果てしない超だらだら道が延々と続く。
結局御料峠の手前まで、坂だか何だかわからないだらだら道が続いた。
記 2004.9/5