越後湯沢→(県道351・国道17・町道)石打 |
山肌に沿った大きなカーブの向こうに、車が何台か停まっている。通行禁止のはずだが、案の定道の状況はそんなもんなのだろう。
近づいてみると、これも期待通りに湧き水の水を汲みに来ていたようだった。峠には近づいていたが、水がそろそろ無くなってきていて、深坂峠の広場でおにぎりを食べるのがしんどいな、と考えていた。それに、水汲みを口実に休むこともできる。
ワゴン車の脇にはポリタンクが10何缶も置かれている。自転車を見て、水汲みを割り込ませてくれた。持ってきた1.5lのペットボトル一杯に水を汲んで、飲んでみると冷たく、それ以上にうまい。何と言っても、どうかすると7月まで雪が消えないこの辺の稜線のわき水なのである。
水場のすぐ上の尾根を回り込むと、すぐ先に路盤が少し陥没しかけているような場所があったが、自転車なら全く危険は無い。開けた尾根道の行く手、強引に取り付けたような最後の急坂の上にもう深坂峠が見えていた。14:45、深坂峠着。峠の広場の手前に通行禁止のバリケードがあったので、通行禁止区間の反対側に出たことになる。
さっきより雲は晴れて、峠直下の中原から松之山町の天水越辺りまで見渡せる。以前に見たような大展望、緑に覆われた頸城の丘陵、延々と重なる山々の風景は望むべくもないが、標高差300〜600mぐらいの見晴らしはかなり感動的だ。※参考資料:深坂峠の看板
ここで残りのおにぎりを全部消費することにした。さっきの湧き水が美味しく、なかなかいい気分だ。
15:15、深坂峠発。長野県側に入ってブナ林の中を少し下り、野々海池のキャンプ場を通過、野々海峠までのダートに入る。今まで秋の後半にしか通ったことがなかったこの道だが、広葉樹林の下草が道に張り出しそうな勢いで、まるでジャングルのようだ。ここでメーター部のセンサーが不調になり、何度か停まって電池を交換したり位置を調整する羽目になった。
緩い坂にくねくね道が少しの間続き、周囲が開けたと思ったら唐突に舗装区間となり、道はおもむろに下り始めた。ここから再び新潟県だ。
尾根部平場のブナ林の向こうから、北側の急斜面に張り付くつづら折れが始まった。下り激坂に、タイトなつづら折れが続く。ガードレールもないのに、わき水で道がじっとり濡れている。スリップして投げ出されると、崖下へ一直線に落ちて行くだろう。
北側斜面は再び雲が多くなっていて、雲の中を下るような急下りがしばらく続く。が、やがて雲の下に出たようで、視界が急に晴れた。菖蒲高原牧場のキャンプ場がすぐ下に近づいていた。
16:00、菖蒲高原牧場をそのまま通過。更に少し下ったところで、安塚町方面からの林道との合流点に着いた。
このまま大島へ下るより、もう少し足を延ばし、行ったことがない伏野から安塚へ降り、そのまま虫川大杉に降りるのが妥当だろうと思われた。多分それで17時過ぎぐらい、その辺が潮時だろう。
菱ヶ岳林道は、軽い登り返しを挟みつつもほとんど下り基調で、信越国境の山肌に忠実に進む。振り返ると野々海峠方面の高い部分を除き、空から雲が消えつつある。杉林や草むら、菱ヶ岳のスキー場などを挟んで向こうの低山や棚田、集落を、次第に赤くなりつつある夕方の太陽光線が照らしていた。
伏野からは集落の中の道だ。急斜面と言っていい傾斜地に拡がる木立や畑、黒ずんだ木材の堂々とした民家。典型的な頸城の風景の中を下りきると、信濃坂で国道405に合流。
谷が開けるにつれ、周囲の風景にはますます赤みが加わっていった。もはや空にはほとんど雲は消えていて、ますます鳴り響く蝉時雨も田舎の夏の夕方らしく、何かそんな遠い記憶があるような懐かしさを感じる。
17:10虫川大杉着。時刻表を見ると、17:35に越後湯沢行きがあった。列車の時刻としてはほぼ理想的である。ちなみにこの後はいきなり飛んで19時台。
車窓からはますます赤みを増す農村風景や、対照的に真っ青な山々のシルエットが見物だった。
記 2003.7/31
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Last Update 2005.6/4