地蔵峠
小南峠隧道
谷瀬の吊り橋
竹筒
大塔温泉
川湯温泉
請川
宮井大橋
東野
上葛川
滝
阪本
川合
洞川温泉
下市
紀伊半島Tour03 #1
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下市口→(国道309・県道48)地蔵峠 |
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3:39、特急無印出雲で京都駅到着。降りたのは私の他に数名。京都に早く着くためだけに出雲に乗るなんて勿体無さ過ぎると言う人がいるが、私の他にもちゃんとそういう需要があるのだ。
この後近鉄の始発に乗るわけだが、あえて改札の中でしばらく仮眠させていただく。近鉄京都はまだシャッターが閉まっているし、去年はその閉まったシャッターの前で、多くのホームレスがたむろしていたからだ。
果たして1時間強後、5時の入場開始に間に合うように着いた近鉄の駅前には、去年よりもはるかに多くのホームレスが転がっていた。近くでうろうろしていた一人など、ぶつぶつつぶやきながらいきなり嘔吐を始めた。JRの中でしばらく休んで良かったと、心から思った。
近鉄に乗車して、居眠りしながら西大寺、橿原神宮前と乗り継いで吉野へ向かう。時々目覚めると、朝日の中の田園風景は新緑に包まれていて、霞の向こうに山々のシルエットが浮かんでいる。天気予報通り、好天が期待できそうだ。
8:05、下市口発。
吉野川を渡り、木造家屋の残る町中で国道309から県道48に分岐。しばらく併走していた国道と予邑で別の谷に分かれた途端、県道の谷間は田舎っぽくなる。端の田圃は水が張られて、田植えが終わったばかりのようだ。川端の雑草もすでにおい茂る、という言葉が自然に出るほど、勢いがいい。5月らしいまぶしい太陽光線、ホトトギスの鳴き声、飛び交うツバメが何とも季節を感じる。鯉幟が建っている家も多く見られた。
立石から杉林の中の登りが続く。地蔵トンネル手前で分岐する旧道を少し登って、鳥住の集落のつづら折れを過ぎ、間もなく地蔵峠着。看板の「吉野を一望」に惹かれ、ここから分岐する尾根道の行く手、そう遠くないと言う鳳閣寺へ進んだ。こういうちょい林道の例に漏れず、取付からかなり激しい坂が続いたが、まあそれでもすぐに鳳閣寺に到着。
ちょっと狭目の寺周辺よりも、むしろ途中の林道で霞んだ吉野の盆地が一望できた。手前には青々と新緑に包まれた山々が、すぐ下には今登ってきた道に、その上には鳥住の集落が。
地蔵峠に戻り、そのまましばらく下って9:30、寺戸着。県道48通りに再び登りとなる道を進む。目指す道は寺戸の集落の外れで分岐する細い道なのだが、それらしい入口に、「車は国道309号方面へ」という看板が立ててあった。通れないとやばい。近くで庭草の手入れをしていた地元のおばさんを捕まえて尋ねると、自転車は通行可能とのこと。
まあ細道県道なので当たり前なのだが、取付近くに書かれていた幅員2.3mの表記に恥じない細道と、例によって例のごとく激坂が始まった。鬱蒼とした杉林の中の登りが続くのは、前の地蔵峠と似ている。
標高1000mを少し越えるだけあって、坂は長い間続く。が、多くの鳥の声が何とも楽しい。特にホトトギスが目立つ。標高が上がると、緑の色は次第に青みの強い新緑の色から芽吹き終わった頃の黄緑色になり、風は涼しくなった。山桜にもぎりぎりの散り際で間に合い、桜の花びらがフロントバッグの上にひらひら落ちてきた。しかし、今日は天気がいいからか、Tシャツ1枚で十分過ごせるぐらいの気温だ。11:05、小南峠隧道通過。
素掘りの隧道を抜け、今までよりも多少広葉樹の増えた道を少し下り、洞川温泉の温泉街に出た。何か山の中の狭い平地に温泉街が並んでいるこの洞川温泉は、地図で見て、どんな場所なのか興味をそそられていた。実際に行ってみると、温泉街自体はまあ高級そうな旅館が並んでいて、普通の温泉街という感じではあったが、何より間近にそびえる山々の眺めが素晴らしい。
少し温泉街の中を遡って、正面の山上ヶ岳を眺めた。急に斜面が立ち上がる大きな山の形が、お昼のまぶしい光の中で緑が鮮やかだったが、そう足止めを食うわけには行かない。すぐに大塔村へ出発。
期待に反して、県道21は拡幅済の幅広い道が混じる道だった。その広い道が、山の中をけっこう長い間下る。過ぎてゆく緑の色が何とも鮮やかだ。
役場がある川合では、一瞬国道309と合流して再び分岐する。山間の小さな町の家並みの向こうに、まるで長野県辺りで見かけるような、高い山々が立ちはだかっているのが途切れ途切れで見える。明るい日差しの中の新緑の山は何とも美しく、山深さを感じる。
11:40、河合通過。川合からは県道53で、十津川街道を目指す。
天ノ川沿いにいくつもの小さな集落が点在する。道も細い区間が多く、交通量は圧倒的に少ない。濃い色の青空の下、安心してのんびりと、鮮やかな新緑に包まれた農村の風景を眺めながら下り基調の道を進んだ。栃尾ではお昼のサイレンが鳴った。
12:30、国道168、通称十津川街道に合流。
以前から一度走ってみたい道だったが、やはり車は多少多い。しかし、両側に立ち上がる高い山々に挟まれた谷間に一杯の、広い十津川を見下ろしながら大きなカーブを描いて下る道の雰囲気は、決して悪くない。
ダム湖の脇を走ったり、熊野川の河原を見下ろしながら走ったり、センターラインのない狭い区間もまだ意外に多く残っており、時々現れる集落も街道の雰囲気があって、なかなかバラエティに富んだ風景を楽しめる。
しかし、午前中の道が車が少ない道だったためか、絶えることがない交通量にはちょっと嫌気が差し始めていた。特に大型観光バスはたまらない。
十津川村に入り、ツーリングマップルで見ていた「谷瀬の吊り橋」の看板があったので、そっちへ進む。まあどっちにしろそちらは旧道ではあった。しかし、自動車という自動車が全部こっちへ進んでくるのにはちょっと閉口。
吊り橋が近づくと、凄い橋であることがわかった。そう狭くない谷のこっちからあっちへ、釣り糸のように細い橋が渡っている。空中の橋を渡っている人が、まるで卵から生まれたばかりのクモの子のように見える。これはちょっと覗いてみるかな、と思ったが、橋の前に着いてみると、長蛇の列が並んでいる。荷重制限のために、一度に渡れるのは20人とのことで、人が溜まる一方なのだろう。おまけに、帰りは\160払ってバスに乗って帰ってきてくれとのこと。これだと何時間かかるかわからないので、大人しく退散。
14:40、十津川村の物産センターに「軽食・喫茶」とあるのを見つけた。迷う余地もなく、遅い昼食を取ることにした。何しろ下市口からここまで、まともな飲食店を見かけていないのである。軽食メニューはうどん主体のようだったが、一番食欲をそそられた肉うどんを食べ、ちょっと今後の予定を検討。
国道168は決して景色の悪い道ではないのだが、前述のように、交通量がちょっと多い。本宮まであと30kmから40km、このままこの国道168を通って、「今日一日、楽しかった」と思える自信が、自分には無い。だったら、途中の分岐で国道425に逸れ、林道やら町道やらを使って大回りすればいい。1/5万では、いかにも楽しそうな風景が続きそうな道である。
問題は、本宮の到着時間。今日の宿は川湯温泉の河鹿荘YHだが、このYHは、到着時間の不安定な自転車には、夕食を作りたくない、とのこと。自分でもむっとする気持ちとまあ仕方ないと思う気持ちが半々だし、以前かなり激しいことをしでかした自転車乗りがいたのだろう。そのことの是非はまあ別として、YHの近くらしい食堂が何時まで開いているのかが問題だ。
まあ今後の時間次第だろうと思って、悩みながら着いた十津川村の道の駅でYHに電話して聞いてみると、食堂は21時まで開いているとのこと。それなら全然問題ない。道の駅には南紀名産のさんまずしが売っており、これを明日の朝食にすれば、早出も全然問題ない。一気に二つの大問題が解決し、安心して国道425に向かうことにした。
16:20、滝で国道425へと分岐。
車がぐっと少ない細道の国道425は、最初は平坦に近い登りだったが、間もなく谷が深くなるにつれ坂が急になった。ツーリングマップルによると、この道はもともと林道だったとのことで、10%を軽く越えそうな坂が続く。でもまあ、それぐらいは400番台国道だったら当たり前なのだろう。
静かな山の中の道はやはり楽しい。日差しはそろそろ夕方の赤い光に変わってきていて、新緑の色がますます輝くようである。
途中で分岐して更に急な坂を少し登り、16:00、葛川トンネル通過。
上葛川、下葛川と細い道の周囲に小さな集落が断続する、思っていたとおりの楽しい下りが続く。石垣で囲まれた棚田は、今まで通ってきた他の場所と同じくまさに田植えの途中で、どの田圃にも水が張られていた。しかし、山間の集落には廃屋も目立つ。
杉林、農村、広葉樹林と緑の中をけっこう勢い良く一気に下り続ける。こんなに下って大丈夫かな、とも思うが、まあどっちにしろ、あと1回は登って下ってがあるのだ。
唐突に国道169の東野トンネルの脇で合流。人気のない山の中だが、地図を見ると東野というのはこの辺の山の上にある地名のようで、それを強引にトンネル名に持ってきたようだ。そのまま国道169を進むと、田戸トンネルを抜けた玉置口で、中央分離帯の無い高速道路のような立派な道から、センターラインも無い幅員3mぐらいの道に変わった。これだと1/5万の通りである。
きりきりっと急な坂で山の斜面を登ると、周囲の山々が見渡せるようになった。谷間の集落の細い道に模型のような橋も見える。今まで通ってきた玉置口からの細道が見えているのだった。
17:10、蟻越峠通過。
下りの途中から、懐かしい北山川の谷が見えてきた。河原からもこもこと急に切り立った山々、広い石の河原、緩やかな流れが懐かしい。去年通った川沿いの国道311から写真に撮った風景でもあり、この時間になると一度見た懐かしさが心強さになる。
川沿いの広葉樹帯はいかにも南国らしい樹種が多く、そんなことも去年の記憶を蘇らせる。17:40、下りきった竹筒で国道311に合流。
交通量の少ない国道311/169をのんびりと流し、国道168へ向かう。ゆったりと流れる北山川に周囲ののどかな農村風景が何とも嬉しい。
宮井大橋で国道168に合流。あとは今日宿泊予定の川湯温泉へ向かうだけだ。途中、請川のスーパーで明日の物資を買い入れ、18:35、河鹿荘YH着。
記 2003.5/7
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Last Update 2003.7/5