紀伊半島Tour02 #2 2002.4/28 丸山→日足

丸山千枚田→(県道765)板屋
→(国道311)竹筒
→(国道169)宮井
→(国道168)請川
→(県道241・大塔川林道)大杉トンネル
→(大塔林道・県道219)宮ノ平
→(国道371)大峯トンネル
→板立峠→下木守
→(国道371・本山谷平井林道)平井
→小屋野
→(県道229)小口
→(県道44)日足
   166km

日足

小口

小屋野

平井

下木守

板立峠

大峯トンネル

宮ノ平

大杉トンネル

請川

宮井

竹筒

板屋

丸山

本日の経路


 起きるとけっこう雲が厚い。天気予報では和歌山南部で晴後曇り、降水確率10%/10%なのに。外では夜ほどではないが、蛙の声が響いている。窓を開けると、湿った空気に水を張った田圃のにおいがした。
 朝食後、昨日不調だったコマンドのワイヤー調整をして、7:25、丸山千枚田荘発。

 棚田の中の1本道をくねくね下り、杉林の急斜面から、大栗須の小さな農村を抜ける農家の庭先にも、田圃にも畑にも小さな石垣が目立つ。緩斜面の田圃が、全部石垣で区画してあるのが、何とも精密な感じだ。その田圃はどこも張られたばかりのように泥水で満水で、あちこちで農家の方が田植えに忙しそうだった。
 新緑と田植えで賑やかな農村を抜け、役場のある板屋から国道311に合流。そのまますぐに昨日併走した北山川に沿った道になる。

山間をくねくねゆったり流れる北山川 河原が広いのに山は急に立ち上がる 

 昨日も思ったが、蛇行する川の流れはゆったりして河原も広々としているのに、急斜面というよりも垂直に近い斜面で立ち上がる山々が、何とも独特である。道はその河原に張り付くように、時々河原に現れる集落を結んだり、時には山を駆け上がって越えたりする。
 立ち上がる急斜面の山肌は、杉の深緑に広葉樹の新緑で彩られていた。広葉樹の新緑の中、灰黄緑のふさふさの花を付けた厚めの葉の広葉樹が目立つ。何という名かは知らないが、何かいかにも南の木のように見える。
 川沿いの広く立派な国道311は、交通量が極端に少ない。天気はさえないが、いい気分で広い道を独占して流した。

国道311

 すぐに道が細くなり、岸の山を乗り越える。路上にいた猿が法面保護の金網をひょいひょい登って行くのには驚いた。棚田と石垣の小集落をくねくねと抜け、やがて山の中から下ってきた、こっちも激細の国道169に合流。
 河原際の森の中や、狭い平地に張り付く集落の中を、国道169は抜けてゆく。白い砂利の河原に新緑の組み合わせが、何とも美しい。ゆったりした川の流れの透明度がこれまた抜群で、驚かされる。

北山川沿いの国道169

 国道168に合流すると、多少交通量が増え、気分は何だかせわしない。9:00、請川着。国道沿いの酒屋兼万屋でおにぎりを仕入れ、ちょっと補給。ここからいよいよ大塔川に沿って、本日の第一目的・大塔川林道・大塔林道に突入する。

 両側の切り立った山の険しさは変わらないが、河原はぐんと狭くなり、標高は100mも無いのに、すざまじい山奥のような印象の風景が続く。広かった道もすぐに狭くなった。
 この辺りの本宮町がNHK「ほんまもん」の舞台となったようで、ちょっと入った川湯温泉の温泉街には道路に何本もの「ヒロイン山中木葉の故郷です」との布看板が立っていた。横目で見ていたドラマの中で「熊野、熊野」と言っていたので、熊野市辺りが舞台なのかなと漠然と思っていたのだが、この辺の話だったのか。

「ほんまもん」の世界

 蛇行する狭い谷に張り付くようにして、県道はどんどん山奥に進んで行く。途中の小集落で旧道らしい道に入ってみると、すぐに軒先をかすめるような2m程の道になり、畑の間の道になった。道ばたの草いきれが何ともうれしい。最後に集落の一番端で古い吊り橋を渡り、再び県道に合流。
 相変わらず平坦に近い僅かな登り道であるにも係わらず、大塔川はすっかり渓流となり、大きな岩に青い淵の続く流れになっていた。谷が狭いので、両側の山々の木々は道路と流れをすっかり覆っているような印象がある。流れは清らかというより透明そのもので、民家の途絶えた蛇行する谷間はますます山深い。
 やがて、道はダートになり、素堀のトンネルが連続するようになった。

白根辺り(だったかな) 吊り橋で県道241と再び合流 静かな山間の道 ダート・素掘りトンネルの世界に突入 素掘りトンネルが連続 渓谷のダートが続く

 渓流に沿ってすいすい楽に走れるぐらいの勾配だった道が、唐突に激坂になって、つづら折れでぐいぐい岩肌の急斜面を登り始めた。2回も折り返すと、新緑の渓谷が木立の向こうにもうすっかり見渡せるようになり、そのまま標高を上げて10:10、大杉トンネル着。なかなかしんどい登りだった。
 トンネルの向こう、大塔町側の出口周辺は、今までの登りとは打って変わって視界が開け、周囲の山々が見渡せた。しかし始まった下りは、本宮町側と同じように激下りに細かいカーブが連続し、ブラインドコーナーの連続にあまりに斜度が厳しく、なかなか速度を上げられない。

坂が次第に急に 大杉トンネル 大塔村側は舗装の大塔林道 のんびりした細道が続く

 激下りが終わると、再び清らかとしか言いようがない渓流に沿って、両側を急斜面に挟まれた、新緑の道が延々と続く。緩い下りだが、ブラインドコーナーと道の狭さのために、なかなか速度が出せない。やがて数軒の民家と畑が現れ、集落が断続し、11:10、宮ノ平着。国道371に突き当たった。

 日置川の深く大きな谷に沿った国道371は、何と今までの県道・林道を更に上回る狭さで、緩いアップダウンを繰り返しつつ、杉林の中を下り基調で南下する。南下する道のためか、今までの道よりも周囲にいかにも南国らしい木々が多いのが面白い。谷が拡がって渓流っぽかった川の流れが青々とした水の湖になり、12:10、合川着。
 日置川を更に下ってゆくのはここから分岐する県道37で、国道371は細く狭い湖上の橋を渡って、再び山の中へと向かってゆく。青々とした湖は満水状態のようで、岸の新緑の山々と共に、何か豊かな印象があるが、橋には「大型車は1台づつ渡って下さい」などと恐ろしい立て札が立っている。まあ、それぐらい細い橋だ。
 この先果てしなく蛇行を繰り返す前ノ川の谷を遡る、国道371をちょっとショートカットするつもりで、橋を渡ってすぐ、大峯で分岐する板立峠の道に入ってみた。両側の切り立った深い渓谷のだらだら登り、時々現れる小集落というパターンは基本的に全く同じだ。新緑がもうひたすら美しい。

国道371 こ、これが国道… 橋を渡るのが国道371

 13:00、杣谷着。「百間山渓谷」バス停の売店兼食堂で大盛り焼きそばを食う。バイトのお姉さんがキャベツ・ニンジンから刻んで作ってくれた焼きそばは、どちらかと言うとかなり大味ではある。が、にちゃついたソースも塩分を欲しがる身体にはまあ好都合ではあった。
 落ち着いて今後の行程を計算してみる。標高差300〜400mの峠があと3つ、宿の手前でさらに250mぐらいのが一発。この時間でこれだと、なんかやばい。カーブが多くて下りで全然ペースが出ないのが効いているのだ。かといって、今日のコースにショートカットは全く無い。地道にこつこつ行程をこなすしかなかった。

 13:30、杣谷発。例によって突然激坂が始まる。前輪の浮きを押さえ込んで、インナーローの28×26まで動員。結局「まさかあんなとこは登らないだろう」と思っていた壁のような山を登る羽目になった。そう言えば峠の名前が板立峠。深く考えずに何の気無しに足を進めると、こうなる。

 激下り・渓谷沿い、農村部とお決まりの下りがあって、14:25、木守で再び国道371に合流。ここから少し国道371を進み、すぐに国道未開通区間の迂回林道が始まる。
 杉林の中の緩い登りを行くと、やがて開けた草地の中に山道が始まっていた。1/5万で国道印の茶色い網掛けのある道だろう。
 渓谷に沿ってやがて登りが始まる。しかし、標高差はそうでもないのに、この辺の道は坂区間では10%以上が規準となっているようで、かなり厳しい激坂登りが続いた。もこもこ隆起した山々は、例によって上から下まで杉林と新緑で埋め尽くされていた。見渡す山々に色とりどりの新緑は、紅葉かと思うほど鮮やかだ。

田植え間近

 長い長い下りが続き、国道371からショートカットして県道229へ移動。15:40、小屋野着。
 古座川沿いの道には、やはり今日の道の例に漏れず、渓流に高い山々、杉林の連続する道が続く。最後の集落を抜けてしばらく遡ったあたりで、見上げる正面の山に法面補強が見えた。まさかあそこまで、と思ったが、地図上の標高差とさっき見上げた道の感じから、まあ登らないといけないのかな、とも思った。
 はたしてそれは、これから向かう道だった。

これも国道371

 峠道の路上には猿が多く、自転車が近づくとキーキー言いながら、法面保護の垂直な金網をひょいひょい登って行く。そういえば路上の大きな糞は、みんな猿の物に違いない。
 17:20、小原谷トンネル通過。すっかりペースが狂ってしまった。明るいうちに下りきらないと。

 急いでも劇的に時間が短縮するわけではない。今までと同じような道の狭さにブラインドコーナー、おまけにダートまで現れた。一方、夕方の渓谷の美しさは格別で、素堀りトンネルに巨岩が連続する渓谷が激しく蛇行する道は、新緑の鮮やかさや流れの美しさとともに強烈な迫力ある印象になった。
 激下り・緩下り・下り基調のアップダウン、と延々続いた下りがようやく終わったのは、18:30。小口にようやく到着。
 もうかなり薄暗かった。たとえ強力ライトがあっても、真っ暗な山道は危険だし、第一もう疲れていた。タクシー輪行を決めざるを得なかった。

 国道168に合流し、19:00、日足着。途中で地元の人から情報を仕入れておいたタクシー会社は休みで、どうやら20km程も離れた新宮から来てもらわないといけないようだった。104で電話番号を調べて、連泊予定の「千枚田荘」に連絡を入れ、輪行袋に自転車を入れて、熊野川町役場前で待つこと20分弱。

 タクシーは国道168から行きに通った国道169・311を逆行した。朝に感動していたはずの細道が何だか恨めしかった。
 コース見込み違いの時間切れタクシー輪行をまたやってしまった。ああ、恥ずかしい。しかし、自戒の意味を込めてツーレポは書くことにした。

 宿に帰って、ツーリングマップルが無いことに気が付いた。多分熊野川役場前で、宿に連絡を入れたときに電話機の上に置いたままにしてしまったに違いない。全く焦るとろくなことがない。

記 2002.4/30

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Last Update 2003.7/23
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