下居辺
勇足
二股
釧勝峠
釧路
本別
白糠
士幌
上士幌
萩ヶ丘
釧路→(国道38号)白糠 |
7:25、星のまきばYH発。釧路は朝っぱらからなんかぱっとしない曇りで、雲が厚いんだか空が明るいんだかよくわからない。おまけにちょっと寒い。おそらく、20℃くらいだろう。そういえば、真夏でも釧路では半袖で歩いている人が少ない。霧の街と呼ばれる所以だろう。
国道38号で白糠へ向かう。高速の大型車やら交通が多くて落ち着かない道だが、白糠までの30kmを耐えれば、今日は比較的交通量の少ない道ばかりだ。どんよりした空の下、若干追い風である事をいい事に、右は海岸、左は工業地帯・工場用分譲地、という国道38号線をけっこう快調に速度を上げる。
しかし、こういう車が多く慌ただしい道はやっぱり面白くない。昨日までの中標津・別海・浜中あたりの丘陵の風景が思い出されてならない。
8:50、白糠着。釧路から離れたためか、ちょっと空は明るめになり、気温が少し上がったようだった。白糠から走り出してまもなく、立派なコンクリート橋やら草だらけの築堤やらが、国道と近づいたり離れたりして並走しているのに気が付いた。10年くらい前に廃止された白糠線だ。こっち方面が白糠線の谷だったのか。
白糠線は、かつて国鉄末期には、日本一の赤字路線として毎年その名を馳せていた。\100の運賃収入を得るのに、\3000以上かかるという話とともに、雪の中の赤いディーゼルカーの映像が記憶に残っている。
見る限り橋などの施設はとても立派で、壊すのに金が掛かりすぎるという印象であり、おそらくこの路線も釧路地方とどこかの短絡線の一部として建設されたのだろう。
白糠線自体は、確かJR移行直前だったか直後だったかに、道内赤字路線の第1陣で廃止されたと思う。10年以上前の話だ。
例によって進むにつれ次第に狭くなる谷を、川沿いやら山の側面に駆け上がってまた降りたり、平坦な農村の中を走ったりして、国道は次第に標高を上げる。というより、あまり標高は上がっていないのだが、それ以上に山深くなっている印象がある。
また、奥へ進むに連れ、山の上の方がどんどんガスに隠れている。路面もなんか湿っているような、乾いたばかりのような。反対車線の車のワイパーが動いている。と思ったら、霧雨になってしまった。
静かな国道392号を山奥へと進み、11:20二股着。山間の狭い台地に民家が数軒・商店が2軒・小学校、というごく静かな小さい集落だ。釧勝峠まではここが最後の集落となる。と言っても、子供が一人自転車で走っていた他はあまり人気が無い。
地図を見ると、阿寒村から足寄町の螺湾まで山の中をダイナミックに通り抜ける道路が建設中だが、この二股はその道路とこの国道392号の合流地点となっている。この場所にもそのうち、コンビニなんて建つのだろう、と思いながら、シャッターの閉まったひなびた商店の軒先で、霧雨を避けて少し休んだ。
二股を出ると、谷が狭くなり、平地がほとんど無くなった。いよいよ峠越え区間だ。だが、峠の距離の割には標高がそう高くないので、基本的にそう急ではない。
地図で見ると、二股からは2つの方向に道が延びている。こっちの釧勝峠側の谷は左股という地名が付いているが、もう片方、北側に伸びる谷は右股という地名のようだ。二股の先の左・右股、随分いいかげんではある。
かなり急峻な山には目一杯広葉樹の原生林が広がっている。ミズナラ・シラカバ、なんかすごくいろいろな名前を知らない広葉樹、しかも高く鬱蒼と茂った広葉樹林が見事だ。
途中まで、木々の葉から霧のしずくが落ちる音が聞こえるくらいの霧雨だったのが、峠頂上へ近づくに連れ空は急に明るくなり、そして霧雨は上がってしまった。峠の向こう、本別側は少なくとも霧ではないようだ。
峠のトンネルを抜けると、樹種は低めの広葉樹に変わっていた。明らかに雰囲気が、植性が変わっている。
しばらく下ると、やがて谷が開け、じゃがいも畑が現れ、トウキビ畑が現れ、農村風景になり、下りも一段落する。道端ではササキリやキリギリスが鳴いており、草やら畑やら堆肥なんかの匂いの中を、本別へ。わずかだが下りなので、余り努力しなくてもペースが上がる。
13:20、本別着。昼食休憩、ちょっと逆風の中を勇足へ向かう。
勇足から、今度は川を渡って士幌方面へ向かう。丘陵の谷に沿って、じゃがいも・とうきび畑や刈り取り終わってロールが置いてある牧草地、田園風景の中を次第に高度を上げる。甜菜畑やかぼちゃ畑なんかもある。時々ぐいっと登ったりだらだらと平坦だったり、カーブしたりちょっと下ったり。
谷間の平地の起伏は次第に大きくなっており、なだらかな丘を形成していたが、谷自体がそんなに広くないため、たとえゆっくりでも進めば進んだだけ畑やら山、回りの風景が動くのがとても楽しい。
15:35、下居辺着。商店・旅館が数軒ある山間の集落だ。郵便局の脇で休憩し、出発。ここまではごく普通の谷間の田舎道と言う印象しかないのだが、ここから先の士幌まで最後のまとまった坂(それでも標高差100mもない)を登ると、突然十勝の風景が広がっていたのを思い出した。
天気は相変わらず曇りで雲も濃い目だが、十勝の高温を用心して何日か前に組んだ行程は軽目になっており、今日の宿の「かぶとむし」まではあと30kmしかない。エゾゼミ・キリギリスの鳴き声が響く、杉林に囲まれた登り坂を、のんびり登る。
カーブを曲がると、登った先の空が開けている。いよいよ十勝だ。
杉・シラカバの防風林、様々な野菜畑、緩やかな傾斜の中の一直線道路を進み、16:10、士幌着。短縮行程を組んでいたが、せっかくの十勝だ。今、宿を目指しても早く着きすぎてしまうだろう。
ほんの少し西側へ回り道して、17:45、「かぶとむし」到着。
去年も来た「かぶとむし」には、去年と同じメンバーのお客さん達が来ていた。いわゆる常連さんだが、なんか嫌な感じはしない。閉鎖的ではなく、ひたすらアットホームな感じで…いいロケーションにお客さん達の暖かな雰囲気、宿主さんの努力の賜物だろう。こんな雰囲気はもう久しぶりだ。そう、10年以上前、北海道へ行くと必ず寄っていた「朱鞠の宿」がそうだった。アットホームないい宿だった。多分、この「かぶとむし」にもそんないい雰囲気と、それを愛するいい常連さん達の輪があるのだろう。
常連さん以外のメンバーでは、標茶の中茶安別から来たという、おじさんチャリダーがいた。今年はおじさんチャリダーをとてもよく見かける。自転車はツーリング車っぽくパーツを交換したロードマン。あの手の自転車には、オーダー車に乗っている今でも、何か胸が熱くなる。「どこかへ行きたい!」という憧れと言うか、テンションと言うか…フロント・パニヤバッグとも、なんとBS純正の帆布製。
うれしくなって話していると、網走でTREKの外人おじさんチャリダーに出会ったと言っていた。私が虹別で出会った、あの外人チャリダーに違いない。
夕食後、お客さんの車で星空の露天風呂、「幌加温泉」へ再び行く事が出来た。「幌加温泉」の狭い露天風呂には、「かぶとむし」からの客の他東大雪ぬかびらYHのお客さんもいて、もう大混雑。ゆかびらYHのペアレントさん、塩崎さんにも再会できた。ぬるめのいい湯加減で、みんなで真っ暗闇の中、いい気分だった。空にはうっすらガスがかかっていたようで、星がほとんど見えなかったのが残念と言えば残念。
明日の予定は、十勝地方の高温対策で、最終的にかなやま湖まで行けばいい。しかし、天気予報では最高27℃の予定だ。あの異常高温は一段落したらしい。山の方が晴れたら、糠平経由で然別湖へ行こうか、もう休みも終わりに近いので無理せず十勝をのんびり走ろうか。
記 1999.8/17
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Last Update 2002.12/31