養老牛温泉→(道道505号)養老牛
→(農道・道道775号)計根別
→(道道311号)中西別
→(道道813号・農道・道道128号)中円朱別
→(農道・道道813号)大別
→(道道16号・農道・町道)門静
→(国道44号)尾幌
→(道道142号)釧路
約175km
昆布森
釧路
中西別
上春別
計根別
養老牛温泉
仙鳳趾
大別
門静
上風連
尾幌
奥別寒牛
中円朱別
朝、5:00に目が覚めると、なんと肌寒い。天気は曇りのようだ。というよりガスが出ている。朝食を食べている内にガスは霧雨になり、そしてまた収まった。
7:20、養老牛温泉発。路面はもう乾いていた。少し安心する。
今日は、去年走りたくて走れなかった上風連・大別方面の道道を目指す。
道道505号を下り、いつもの道道150号の交差点で曲がらず、そのまま直進して緩い下りを進む。来る時も出て行く時も意外とあっけ無いものだな、なんて思いながら牧場・牧草地・防風林の中を、緩い下りに便乗して速度を上げる。辺りは霧雨一歩手前と言うか、止む直前の霧雨と言うか、ブレーキレバーにはすでに結露している。いくつかのアップダウンを越え、牧草地と牧場、防風林の中を下ってゆく。
走っているうち、霧雨は完全に晴れた。厚い雲が空に垂れ込めているが、気温もまあ22・3℃程度、走りやすい気温だろう。天気が悪いのはいつもの道東だと思えばいい。
中標津町から別海町へ入る。防風林が一直線の直交グリッドで、整然とした中標津町の牧場に比べ、別海町のそれはややランダムな印象がある。南部には広大な湿地帯もあり、また中標津町とは違った道東の魅力ある風景が展開する。
8:20、上春別着。北海道の国道・道道などの交差点には時々まるで西部劇に出てくる町並みを想像させるような場所がある。この上春別はまさにそんな場所で、広い道路の両側に数軒ずつのひなびた商店がくっついている。
この町にはコンビニはなかったが、代わりに新しいA-COOP(生協)の店舗ができていた。ここで、前半使った地図やら、多分今回は使う事がまず無いだろう、長袖のトレパンとトレーナーを家に送った。
店員さんとちょっと話す。「晴れたら異常に暑かったり曇ったら今度は寒かったり、ほんと極端ですねえ」「いや、今日ぐらいが普通ですよ」。うーん、確かにそうだ。こっちが普通の道東だ。
さらに牧場・牧草地・防風林・森林帯の中を南下し、中西別着。小さな集落の交差点ににいきなり建っているセイコーマートで休憩し、9:35、出発。
大好きな上風連の交差点の風景を見たいが為に、ここから方角的には少し逆戻りの道道128号を目指す。丘の起伏はやや大きくなりはじめ、その丘を横断する農道は、勢いアップダウンの連続となる。丘に登るたびに周囲の展望が開け、低地に降りるたびに湿地みたいな川を下って、という道が更に続く。
10:30、上風連着。ここの交差点の風景が大好きだ。と言っても、牧草地の中に信号と農家があり、道路が一直線に伸びているだけなのだが、北側から来る場合、手前の丘から丁度下る形になり、直線に伸びる道路がいい感じで見えるのだ。
道路の伸びる先は牧草地と森林になっており、更にその先はどこまでも丘陵になっている。
上風連を出発すると、道路は緩い摺鉢状の地形の中を走るようになる。どちらかというと、盆地の低い場所を走っているにもかかわらず、周囲の半径数kmの牧草地・森林風景が一望できるのだ。
前述の通り、別海町〜浜中町にかけての酪農地帯は、中標津と比べて、直交グリッドがやや崩れる事と、地形のうねりがもう少し大きくなる事が特徴と言える。このため、中標津の静かな印象と比べてややダイナミックな風景である。どこまでもうねる地形の、視界の中いっぱいに牧草地・周囲の森林帯があり、サイロ・牧舎が点在する、そんな風景だ。集落と言うより、エリア全体に牧場農家が分散して点在している。中西別・別海・浜中・厚岸・中茶安別を結ぶ1辺10〜20数kmの変形5角形の中は、商店はほとんど存在しない。あるのは牧場・牧草地と森林と湿地帯だけだ。従って、走っていても風景はひたすら牧草地・時々牧場、川の近くの湿地帯、ちょっと坂のある場所の森林、と言う具合だ。
単調といえば単調極まり無い道だが、風景のニュアンスに何か独特の厳しさを持った静けさがある。この印象に引かれて、ここ数年私の中で標津→厚岸のメインルートになっているのだ。と言っても、今回でまだ4回目ではある。
もうひとつ。浜中町の農場の看板(普通の家の表札のような物)には、有名漫画家モンキー・パンチ氏の手による、オリジナル・キャラクターが描かれており、それらはどうやら地名やらなんか伝説(?)に範を取った物のようだ。前回、1995年に来た時には既にあったと思う。
上風連を出て15kmくらい走ったところで、道を間違った事に気が付いた。一つ曲がる場所を間違えたようだ。風景に見覚えが無い。地図で確認すると、目的の道よりも1本南を走っているようなのだ。
このままだと国道44号に浜中付近で出てしまい、厚岸まで27kmも大型車や高速乗用車に脅えて走る羽目になる。中円朱別で農道を数km北上し、修正を図る。
牧草地の比較的穏やかな風景の中を走ってきたこの道路は、奥別寒辺牛を過ぎるといよいよ大別まで最後の区間、湿地帯と丘の森林の中を通る区間になる。
広葉樹の原生林、または植林された杉林の中へ駆け上がったかと思うと、大きなカーブを描きながら高い草や潅木の茂みへ降下し、クネクネと曲がった細い川を渡る。再び緩い坂で、森の中へ登って行く、そんな道だ。
ここも坂はそう急ではないので、多少速度を下げる程度で極めて快適な走行が可能だ。いつも周囲は晴れているのに何故かこのエリアだけは薄曇りという事が多かったが、今日も曇りだ。気温はなんかひんやりしており、こんな点にもまた何か厳しい自然のバリヤのような物を感じる。
最後の坂を降りると唐突に牧場が現れ、やがて合流点の青い標識が見えてくる。12:20、大別着。おととい走った道道16号に合流し、ちょっと厚岸方面へ戻った大田から国道44号を目指す。
13:00、門静着。ここから尾幌までの数kmは、国道44号と道道142号の重複区間だ(と思う)。嫌だが交通量の多い国道44号を走らないといけない。
13:15、尾幌着。確かコンビニじゃないけどコンビニみたいな弁当屋さんがあった記憶をあてにして、厚岸へ寄らずに尾幌までやってきたが…あった。このコンビニ全盛のご時勢に、まだ頑張ってた。店内調理の弁当屋、ヨダ商店で弁当を買う。カツ丼とおむすび×3。おむすびは梅×2と、チキンカツ×1。「好評!チキンカツ」、とのこと。なんかあやしい。とりあえず、肉は食いたいので、1個だけ。
買ったカツ丼を、夏休みのせいか誰もいない近くの中学校で食べる。ヨダ商店の店先は国道44号との間に駐車スペースと言うか、コンクリートのたたきしかない。同じ駐車スペースでも、コンビニの駐車場は車止めに座る事も出来るが、ヨダ商店の駐車場は殺風景すぎて、店先で食べるのがためらわれた。というより、前も同じ中学校で弁当を食べたような気もする。
いつものコンビニ昼食と違って、静かでのんびりとした昼食だ。水もある。
13:40、尾幌発。おとといに引き続き、再び道道142号で今度は釧路を目指す。農村風景の中をちょっとだらだら走って仙鳳趾で海岸に出ると、おもむろに登りはじめる。最高地点で約200m。基本的にしばらく海岸から急に立ち上がる岩の上の樹海の中を、道道142号は登って行く。
登り終えると、そこから更にいやらしいアップダウンが続く。周囲の景色自体は、おとといの琵琶瀬→厚岸に似ているが、坂はこっちの方がずっと急だ。海沿いのこの道は周囲で一番高い場所を走るようで、木々の間から時々透けて見える内陸側の風景は、けっこう周囲の山・樹海を見下ろす感じだ。海側は全く見えない。
やがて、下りの直線の先に海が見えた。そして、まるで海に突っ込むような下りの途中からはるか下の海・急な岩の展望が開けた。間違ってフェンスを越えるとただで済みそうに無いぐらい、急な岩場と高い道路だ。
道路はそれから先、坂を登ると樹海の中、下ると下に海岸の見える草地と潅木の高台、というような具合になった。道路から見える海はかなり下の方で、時々海岸に降りる取り付き道路が道端から伸びている。眺め自体はかなり素晴らしいが、今日はどんよりした曇り空なので、今一つすかっとしない風景だ。
とはいえ、前回通った時には青い海と空・緑の草・黒い岩という鮮やかな風景に、いやらしいアップダウンも苦にならなかった。根室→釧路までの道道142号のうち、この仙鳳趾→昆布森のこの区間が一番高度が上がるため、見下ろす海岸の風景は一番見応えがあると思う。ただ、この区間もしつこいゴマフアブが多い。虫除けスプレーは必需品だろう。
突然、道は下りはじめ、海岸へ向かったりトラバースを描いたりしながら標高を下げ、15:25、昆布森着。
昆布森は小さな漁港で、ここまで来ればもう釧路の町外れまではあと10kmもないはずだ。が、のどかな漁港、周囲の険しい山には、そんな大都市の気配は全く無い。
漁港の波止場で休憩する。他には釣り人が3人。桟橋の先には、花が飾ってある。海難事故があったのだろう。突如、軽いエンジンの音とともに小さな漁船が港をゆっくり横切って行った。
時間が丁度いいので、さっき尾幌で買ったおむすびをここで食べる事にする。意外にもというか、チキンカツのおむすびが本当においしい。単純にチキンカツが入っているだけのようだが、これならこっちを2つにしておくんだった。「好評!」は嘘ではなかったようだ。
15:50、昆布森発。再び、集落のもう片方を100m程登ると、ふたたび高台の道となる。
それまでと同じような樹海の中を少し走ると、道路が少しずつ下りはじめた。釧路市の境を通過すると、建設中の清掃工場・最終処分場、資材置場などの施設の脇を通りすぎる。北に釧路湿原、白糠側に国道38号がある釧路市としては、この辺にこういう施設を設置する方が都合がいいのだろう。
道路脇にだだっ広いスペースや空き地がある状態が続くが、空き地の中では大きな鹿が何頭もこちらをうかがっている。そういえば、昆布森の手前では路上にキタキツネもいた。やがて、正面遠方に阿寒方面の山がうっすら現れたかと思うと、釧路の町が眼下に登場する。手前には公営住宅らしい何十軒もの住宅の、向きのそろった屋根が見えてくる。
最後のトラバースを曲がり終え、道道は釧路の町外れの側面に回り込むように入って行った。
いきなり釧路の町並みが始まって、しばらく市街地を走る。
16:50、星のまきばYH着。名前の印象とは違って町中のYHで、サイロをかたどったコンクリートブロックの入り口ホールが特徴的なYHだ。自転車置場に屋根が無いのがちょっと残念だが、なかなか落ち着いていていいYHだ。食事も質・量とも満足。宿泊客も程よく多く、明るいいいYHだ。
チャリダーが何人か泊っている。私の他は全員MTB。三連勝のMTBの女性もいた。私のロードは友人の三連勝を強引に借りている物なので、なんとなく懐かしくなった。ところが、YH初心者っぽい数名(チャリダー2名含む)がなんか女性に話しかけまくってうるさがられており、女性全員の警戒が強まっていて、ほとんど話せなかったのがちょっと残念。まあ、大都市のYHに時々見られる現象だろう。
記 1999.8/17
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Last Update 2002.12/31