北海道Tour98 #10
1998.8/12 斜里→養老牛温泉

斜里→宇登呂
→知床峠
→羅臼
→峰浜
→武佐
→開陽
→養老牛温泉   165.9km

養老牛温泉

養老牛

開陽

武佐

峰浜

羅臼

知床峠

宇登呂

斜里

今日の経路(拡大表示)今日の経路(赤表示)と今日までの経路(灰色表示)


 6:50、起きると空が晴れていた。こういう日はもう走るしかない。
 斜里発。泊った民宿「おやじの宿」は10年前と全く変わっていなかった。おそらく20年前とも変わっていないかもしれない。変わっていたのは元気だったおばさんである。おばさんは杖をついて歩き、「あの元気はどこかへ行ってしまったねえ」と笑っていた。宿の実務はかつての常連さんみたいな人がやっているようだ。知床峠から養老牛へ行くといったら、おにぎりを弁当で作ってくれた。これも昔と同じである。

 斜里の街を出て、12km(?)の直線道路、国道334号に出る。朝から防寒着を着ないのは、函館以来だ。斜里岳と海別岳を間近に右にし、昨日と同じように防風(雪?)林、ジャガイモ・とうきび・砂糖大根(だと思う)畑など、田園風景の中をゆく。朝のすんだ空気の中で強烈な太陽光線に照らされ、畑・山・森・空・雲、みんな光り輝いている。
 これが本来の夏の北海道なのである。
 快晴で無風、道路はほとんど平坦。走行条件としては申し分ない。農家の方はもう働いている。悪いなあ、申し訳ないなあとちらっと思う。やがて直線区間の終端が見えてきた。これは同時に斜里から知床半島へ入ることを意味する。

 宇登呂まで海岸線を走る。ほとんど起伏はない。海面からそそり立つ岩山に貼りついて国道はどんどん北上して行く。途中から、道路幅もえらく広くなる。以前12年前に来たときと比べ、かなり改良工事が行われたようだ。
 太陽が出ているので、海の色はより鮮やかになっている。しかし、日本海側・特に積丹半島ほど鮮やかではなく、こちらは落ち着いた紺色、という感じである。
 宇登呂から戻ってくる自転車が多い。今日はあまり大人数のグループではなく、多くても3人までである。それより、女性チャリダーが多い。そしてもはやその半数以上がコギャルなのである。MTB、ランドナー、中にはビアンキの薄い水色のクロスバイクの女性もいた。びっくりするのは、彼女らが大体一人で走っていることである。知床峠を彼女らは超えたのだろうか。何にしても、とても頼もしい。
 知床半島へ入ってからも相変わらず快晴だった。いい気分だったが、来るべき知床峠の登りまでの束の間のいい気分だと思うと、ちょっと冷めた。

 知床峠は標高750m。港街の宇登呂から向こうの羅臼まで、約31kmがほとんど無駄なく登り・頂上・下りだけで結ばれている。12年前に1度、荷物をおやじの家に置いて知床峠に宇登呂側からアタックし、宇登呂へ降りて来たことがある。羅臼までの完全制覇は、今回が始めてだが、知床峠にはやたらと急な峠だったという印象がある。今回、サイド4+フロントの積載がどう影響するかはちょっと心配だ。
 もうちょっというと、自分の中では北海道で通った中で一番急だったのは津別峠。次に小樽の毛無峠、知床峠、士別の上紋峠などが来る。

 やや賑やかな観光拠点、宇登呂を9:15に出発できた。
 宇登呂の外れの川を渡る橋がいきなり坂道になり、知床峠が始まった。さすがに急である。ギヤをインナーにして、32×26と目いっぱい落としてみた。
 いける。地図で見ると、等高線が一番詰まっているのはこのあたりと250〜300mあたりである。これなら、時間さえかければ登って登れそうな坂ではない。
 標高150m付近。岩尾別への分岐である。昨日、ここまで来るのは絶対にむりだったことを実感した。知床自然観察センターという施設があり、観光客の車がたくさん停まっていたが、先を急ぐ。このあたりから坂はやや緩くなり、リア1段くらいシフトアップが可能になった。こういうところは小樽の毛無峠とは根本的に違う。

 やがて標高400mくらい、いきなり展望が左側に広がる。右に羅臼岳がそびえている。手前には原生林が、左の低い山と右の羅臼岳まで伸びている。大森林である。
 この展望は、標高600m付近でもう一度現れた。今度は森林を見下ろす形となり、羅臼岳はより近くに見えて来る。夏でも天候を選ばないと遭難の恐れがあるという、厳しい羅臼岳の岩肌が間近に見えてきた。大森林も、手前に見えている部分だけでなく、これが知床半島の先端まで広がっていると思うと、その雄大さには何か胸にこみ上げて来るようなものがある。かつて、斜里の営林所がこの知床の森林の一部を伐採しようとしたとき、斜里の住民や道内外から反対運動が起こったことがあった。自分自身はその運動には全く関係していなかった。しかし、初めて思い出したが、12年前の知床峠でもこんな感動を味わっていたようである。そう、確かに北海道を初めて自転車で旅行したあの時と同じ感覚だ。次回来るとき(があるとしたら)も、この大自然が変わりないことを願う。

 つくづく、知床峠に来てよかった。ふと目を移すと、峠の上のほうに道路が見える。頂上はもうすぐだった。

 結局、宇登呂からは頂上までは2時間半かかった。知床峠は、やはり自分の中では道内最急峠の一つである。

 11:50、峠発。
 峠には、羅臼側からまるで作りもののドライアイスのように雲が吹き上げていた。羅臼側から登ってきたチャリダーに話を聞く。羅臼は曇りで、寒くないが、峠の途中が寒いそうである。ウインドブレーカーを着て、下り始める。途中、昇雲橋という橋を渡ったが、カーブしたかなり長い下り坂の橋で、難工事だったろうと思う。ちゃんとした立派な橋なのだが、自転車で下ると空中に飛び出してしまったようで、けっこう恐かった。
 12:25に羅臼着。セイコーマートで昼食、12:50に出発。

 セイコーマートというのは北海道へ行ったことがある人なら誰でも知っているコンビニチェーンである。北海道以外では見ない。他には道南にローソンが多かったりとか、またはセブンイレブンが時々あるが、全道をきめ細かくカバーするのはセイコーマートである。
 ツーリングのとき、このセイコーマートを非常に重宝する。
 暖かい食事、携帯食としてのおにぎりやカロリーメイト補給をはじめ、WCや洗面・電話など、あらゆる用足しが可能なのだ。しかも、結構小さい街までくまなくカバーしているのがうれしい。1時間国道を走っていると、大体1軒くらいは必ずセイコーマートか他のコンビニに遭遇できる。中でも、一番頼りになるのがどこにでもあって、しかも他の店にはない1.5lのペットボトル(ボトルケージ対応のやつ)が置いてあるセイコーマートなのだ。おにぎりも、セイコーマートのはおいしい。

 羅臼からはいやらしいアップダウンは少ない。さえない曇りの海岸線を登ったり下ったり、平坦区間でそこそこ快走したりしながら薫別を通過し、今度は内陸側に入り、農道・国道244号・農道・道道川北開陽線と進む。
 特に川北開陽線は走っているうちに地平線が見える。緩い登り坂を高度を上げていくうち、ふと左側に地平線が防雪林の向こうから現れるのだ。何度見てもグッとくる。思わず絶叫して、ふと周囲を見まわしたりする。もちろん周囲は牧草地と防雪林で誰もいない。
 内陸部に入ってちょっと気温は上がるが、せいぜい18・9℃くらいのものだろう。羅臼側に降りてからは再びウインドブレーカーを着っぱなしだ。

 17:00開陽着。地平線が270°(だったかな)見える開陽台はすぐそこだ。かなり好きな場所なのだが、今日は疲れているので先を急ぐ。開陽台には一時期ライダーがテントを張りまくって、顰蹙を買っていた。中標津町がライダー対策でテントを張れないような場所に展望台を移したそうだ。今はどうなっているのだろうか。

 長い直線・大きなカーブ・また直線・大きな下り・登り、牧場・牧草地・カラマツの防雪林、牧場の臭い・油断すると寄ってくる小さなアブ。もう紛れもない中標津の風景だった。
 ついに根室・釧路地方にやってきた。

 18:00養老牛温泉着。明日は休養日ということにする。温泉で湯治である。しかし、晴れたら日帰りコースを行くかどうかはわからない。

記 1998.8/12

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Last Update 2003.12/12
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