新得→(国道38号)落合
→(町道)北落合
→(町道)幾寅
→(国道38号)しらはぎ
→(農道)麓郷
→(道道253号)布部
→(国道38号)富良野
約95km
布部
しらはぎ
富良野
西瓜峠
麓郷
樹海峠
幾寅
落合
北落合
狩勝峠
新得
いろいろ国道沿いのセイコーマートで買い入れ、8:00、狩勝峠へ向けて出発。空には雲が多いが白い雲ばかりで、いい傾向ではある。冷え込むと言うほどではないが、周囲の空気はまだ冷たい。が、風は全くない。まあまあ走りやすそうだ。
国道の車の明かりを目指して昨晩走った道道75号の下り坂を横目に見ながら、新得の町を抜けて、まだ芽も出ていないソバ畑の中を走る。畜産試験場方面、山々の新緑がこよなく美しい。この季節に来て良かった、と心から強く思った。
いつものようにローソンのある大カーブを過ぎ、坂の手前のまだ営業していない休憩所を通過し、峠区間に入る。
朝の空気が爽やかなのと、季節自体がまだ早春なので、いつもと印象が違う狩勝峠だ。幅の広い道路の隅っこの方をじりじりと登り続けるが、時間が早いのと車が少ないので、のんびりした気分で峠を登ることができる。
牧草地や畑の若草色がまぶしかった新得周辺から、登って行くに連れ、しだいに枯れ草や木々の幹の色が目立つようになっていた。いつの間にか雲も消え、何でこんなに、と思うくらい真っ青な空の下に、峠道から望む十勝が拡がっていた。
9:40、狩勝峠着。なんかだらだら登っているうちに到着した印象がある。もくろみよりもかなり早い到着だ。向こう側の山肌には、灌木林の足下にまだ雪がしっかり残っている。峠の茶店「あくつや」は、まだ冷たく強い風の中、がっちりと山肌に貼り付いているみたいだった。冬の間厳しい風や吹雪と斗い続け、ようやく迎えた春に、建物も少し和らいだ表情を見せているような気に捕らわれた。
ちょっと休んで下り始めるが、すぐに現れた旧根室本線の廃線跡、狩勝峠信号場跡の見事さに思わず足を止める。下から登ってくる本線、スイッチバックの待避線、蒸気機関車用の給水場やプラットホーム、峠のトンネルへ消えて行く本線や塞がれたトンネルが面白いように残っており、抜けるような青空の下、開けた谷底の線路やSL列車のたなびく煙・響く列車の音を想像しながら見下ろしてしまう。
いつも通るのは夏なので、木の葉に遮られることのないこの風景はなおさらダイナミックで、いろいろ想像してしまう。時々通り抜ける風の音と冷たさに、目の前の風景が現実に戻る。
10:30、落合の分岐を通過し、「なまら蝦夷」で推薦されていた北落合に向かう。昔初めて狩勝峠に来たときに、1/25000地形図を眺めながら、ひなびた落合駅より更に奥に向かうこの集落を「何て山深い場所にある集落なのだろう」と、畑の中の細い道と等高線を眺めながら思ったものであり、ちょっと感慨深い。
両側をそう高くない山に挟まれ、国道38号はほとんど直線に西へ下って行く。
落合のほんの少し手前、根室本線をオーバークロスする直前に右へ入り込み、川に沿って北落合への道を進む。木立と川の間のカーブを抜け、平坦に近い道を北上する。
もう一つ緩いカーブを曲がると、シラカバとブナの真っ青な新緑に挟まれた一直線のはるか先に、まだ白い十勝岳が見えてきた。思わず足を止めた。
空気が澄んでいるので、快晴の午前中の光の中、青空をバックに白い山の姿がくっきりと見える。時々ふわっという僅かな風の音だけがする。後ろから近づいてきた軽トラにふと我に返り、再び走り始めた。
この風景が見れただけでも、ここの道に来て良かったと思った。
浅い谷間の林はやがて開けた畑の道になり、すぐに再び始まった杉林の短い坂道を登る途中で突然両側が開け、緩やかな丘の中を登る道になった。両側はまだ黒い土の畑と青々とした牧草地、一直線の防風林がどこまでもなだらかに隆起する丘に拡がっている。
いよいよ北落合だ。紹介文で読んだ通りの風景で、10年以上前の美瑛そっくりだ。突然現れた夢見るように静かで穏やかな田園風景に、何か非現実的な印象さえ感じながら、更に丘の向こうへと続く続く緩やかな坂を上っていった。ニンジン畑・牧草地・農家・防風林・農道と次々に目の前の風景が変わり、坂を登って高度が上がると、北落合の盆地を囲む山々が姿を現す。そう遠くない場所に、樹海に覆われた山々が拡がっていた。
牧場とニンジン畑の終点、最高地点の680m付近で足を止める。目の前の斜面には牧草地が拡がっており、登りの道はここで終わりだ。道の端から両側へ、大きな石の転がるかなりしつこそうなダートが続いていたが、さすがにその狭いダート方面へ向かうのは気が引けた。
あまりに雰囲気がいい場所で、天気も良く、ここでしばらく休憩にした。自転車を降りて目の前から一直線に下って消える道路の真ん中に座り込んだ。新得で仕入れたおにぎりを食べて、真っ青な空・真っ白にまぶしい雲・強烈な太陽光線の下、畑や牧草地を見下ろして30分くらいぼうっとして、頭がしびれるような気持ちに捕らわれていた。時々吹いていた冷たかった風もこの陽気に暖められ、優しい風に変わっていた。
遠くでヒバリの鳴く声が聞こえるのが春らしくて楽しい。声はするのだが、どこを飛んでいるかさっぱりわかりにくいのもいつもの春の通りだ。若草がもうすっかり生え出している草地の中に足を踏み入れると、空気は草の臭いで一杯になる。ちょっと向こうには黒く乾燥した牛糞なども見える。深入りすると面倒そうだ。
周囲を取り巻く山々を見渡してみる。元々標高が高いせいか、あまり高くそびえるという山は周囲にはない。むしろ、北落合の丘から続く森林の斜面が更に高い丘へと続くという印象がある。ぎっしりと密度が高い森林はどこまでも深いように見える。
11:20、出発。北落合の集落の中を右へ曲がり、幾寅へ向かう。開けた北落合の縁を下ると、すぐに狭い谷の底を下る道になった。新緑の木々の間をひたすら下って行く。
しばらくすると道が平坦になり、開けた盆地に出た。川を渡ると、溢れる雪解け水と新緑が太陽に輝いてまぶしい。渡った橋の先は黒々とした土の畑が拡がっている。いかにも春らしい風景に、この季節に来て良かったと心から思っていた。
12:00、幾寅発。樹海峠を越え、しらはぎの集落から西瓜峠に向かう。しばらくだらだらした軽い登りが続くが、農家の庭先のような道に入ったかと思うと、突然道はダートとなった。山深い雰囲気の中、熊におびえながらベルをしょっちゅう鳴らして、のろのろ坂を登る。
下りきった先に田圃が拡がり、13:20、麓郷着。
残りのおにぎりを食べ、山部までひたすら下った。観光バスや4WDに追われながら、こっちも必死だった。
14:30、富良野着。輪行で小樽へ向かう。明日は、昨夏フレーム破損のため断念せざるを得なかった毛無峠→余市→積丹半島を走る。
小樽のくれよん舎は、古い病院を改造した宿で、宿泊は一人だけ。おまけに2階のもと病室であるらしい部屋は何か不気味な雰囲気だった。どうせ客は一人だったんだし、奮発して一人部屋なんて取るんじゃなかった。
記 2000.1/6
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Last Update 2003.1/11