広尾
→(国道336号)吉野
→(国道38号)浦幌
→(道道56号)本別
→(国道242号)勇足
→(道道134号)協進
→(国道274号)鹿追
→(道道133号)北熊牛
→(道道75号)新得
約200km
帯広
晩成
勇足
新得
鹿追
士幌
本別
浦幌
新十勝大橋
広尾
目が覚めると時計は5:30。もう一度寝て起きて、初めて雨の音が止んでいる事に気が付いた。恐る恐る窓の外を見ると、けっこう爽やかな朝ではある。朝食を食べ終わって自転車を組み上げ、8:20、ようやく出発だ。
畑に黒い土が拡がって早春の雰囲気が溢れる十勝平野の端部を、国道336で豊似へと北上する。わずかなアップダウンで、山添いの防風林というか杉林や牧草地の中を、ひたすら通り抜けてゆくそっけない風景の道だ。国道とはいえ車もあまり来ない広い道を、淡々と走る。
9:00ちょっと過ぎ、豊似通過。国道の交差点を右に曲がり、いよいよ太平洋沿いの湿地帯区間に入る。正面遠くには、それまでのやや起伏のある地形とは異なった、開けた平原に牧草地や牧場が展開する、開放的な風景が拡がっていた。十勝のこの方面を走るのは初めてだが、地図で見るとおりのいかにも広がりを感じさせる風景だ。
空にも晴間が見えてきた。明るい牧草地を、やや追い風の中快走する。時々小さな川を渡ったが、どの川も昨日までの雨の影響か、ほぼ満水状態の川一杯に泥水が勢いよく流れていた。両岸の木々はジャングルのような低い茂みを作っており、青々とした若々しい新緑が鮮やかだ。
この区間は昔からナウマン国道という愛称で呼ばれており、かつては長距離ダート国道として有名だったものである。以前から1度は走ってみたい道の一つだった。全区間舗装となった今、特に長距離という事はなく、補給の問題さえ解決すれば怖い道ではない。
やがて、平原地帯から海岸の丘陵地帯へと突入する。広大な十勝平野の端部らしく、大地と太平洋の境界という、茫洋だがある種の厳しさを含んだ雰囲気が濃厚に漂う、静かな道だ。そういうテンションの中を、国道が粛々と言う感じで丘陵や湿地帯を通り抜けてゆく。丘陵部分の道の脇や谷の部分の湿地帯などには、以前の細くてクネクネとしたダート旧道の痕跡が、笹や沼地の草に埋もれたり、風化しつつあるのが見えた。
やがて10:00、晩成を通過。ずうっと以前から泊まってみたいと思って未だに果たしていない、海辺の温泉地だ。
その後もアップダウンをいくつか越え、丘陵の間の低地を抜けていった。風向きはいつのまにか横風になっており、更に向かい風っぽくなってきているようだった
最後の丘を下ると、豊頃川河口の平野が拡がった。行く手の道は大きな橋へと緩やかに登っている。新十勝大橋だ。有名だった国道の渡し船の代わりに造られた橋だ。
雄大な十勝平野の河口部分、船が通れるように高くなっている橋からの風景は見応えがある。大きなカーブを描く豊頃川の土手に拡がった、鮮やかな緑色の小さな目が芽吹いた森を眺めながら橋を渡りきって、強烈な向かい風の中、次は吉野の国道38号を目指す。去年だか一昨年だかに完成したという、新十勝大橋もこの辺の迂回新ルートもまだ私の地図には出ていない。まあ、正面には低い山が見えるので、何となく現在地の当たりは付いてはいた。
自動車が多く埃っぽい、向かい風の国道38号を強引に急ぎ、12:00、浦幌発。ここから先、道道56号で本別へショートカットする。
狭い谷間の畑やら農村の間、道道56号は浦幌川に沿って北上する。こっちでもやや向かい風気味だったが、谷間の林は早春の新緑に彩られており、交通量の少ない静かな道路をのんびりと走ることができた。が、緩い登りで若干のペースダウンが積み重なり、全体的には少し遅れ気味の行程となっていた。
観音トンネルを抜け活平・富川と下ると、山の中の狭い谷間はやや広がってゆき、開けた感じの農村地帯となった。間もなく本別大坂を越え、本別の町に裏側から降りていった。
13:30、本別発。向かい風の影響で、予想外に時間がかかっている。もう少し時間が早いと本当は有り難いが、まあ自分で走ってるんだから文句は言うまい。
勇足まで8km、交通量の多い国道242号を下る。
勇足で利別川を渡り、対岸をしばらく南下した後、おもむろに今度は西側の丘陵地帯へ入りこみ、標高差200mとか150m程度のちょっとした丘を2回越える。緩やかな坂の道は最近改修されたようで、植林されたような一面の杉林の中をひたすら一直線に登って行く広い道だ。これを登って下ると谷間は小さな集落になっている。どうやら大地のしわのような地形を横切っている道のようだ。
谷間の集落には郵便局と商店が何軒か、旅館もある。小さい集落だが、こじんまりとした集落の親しみやすい雰囲気に、人里の安心感をしみじみ感じる。
2つ目の谷から丘へ登る坂は、長い直線が続いていた。道路工事中らしい坂の上の方は、林が薄くなって杉の木のシルエットが見えていた。あの辺がてっぺんなのだろうと思いながら、杉林の1本道の坂をじりじり登りつめた。
坂の頂上、道路の水平線の向こうに、いきなり十勝の大丘陵が拡がった!
いや、十勝の丘陵の展望が開けていたという方が事実関係としては正しいのだが、それまでの2つの谷・坂道とも、どちらかというと閉鎖的な狭い空間を走ってきたので、実際の風景としても気持ちとしても意外で、驚きは大きい。
少し足を止めて周囲を見渡した。音も無くどこまでも拡がる大丘陵。防風林の丘が延々と続いて遠くへ消えて行く。空は少し厚めの雲に覆われているが、地平線の方は少しは明るくなっている。目の前の、一直線に下って行く道路を進み出した。
防風林・牧草地・ジャガイモ畑・トウキビ畑・牧場、また森林、どこまでも延びて行く道路の緩やかなアップダウン。いかにも十勝、と言う雰囲気の風景が続く。イメージとしては知っていたつもりだったが、イメージと実際の風景が合致した心理的インパクトは大きく、この風景の中を走れることが心から嬉しく思える。大好きな中標津の風景にも少し似ている。そうか、中標津まで行かなくてもこういう気分になれるのか、とも思った。
16:00、士幌着。とりあえず今日の宿のサホロハウスへ連絡を入れておく。この分ではどう早く見ても新得には19:30を過ぎるだろう。今までアップダウンが多いので、どうしてもペースが遅れがちなのだ。そもそも、広尾発が遅かった。まあ自分のやったことだ。後悔しても始まらない。今は60km先の新得まで行くことを考えねば。
セイコーマートで休憩後、16:20、出発。
夕暮れの十勝を西へ向かってなるべく急ぐ。とは言え、走れるペースでしか走れない。おまけに速度が上がりにくい程度の、緩い登りが続く。
周囲は相変わらず防風林と畑や牧草地の十勝らしい風景が続く。時間的にはもう夕方だが、一度宿着は遅くなると腹をくくってしまうと、けっこう気持ちは落ち着くものだ。
白い曇り空がグレーになり、周囲は暗くなっていた。やがて、遠くの町の灯りが目立つようになり、17:45。鹿追着。夕暮れの中、国道と道道の交差点、電話BOXで宿にもう一度連絡しているうちに、完全に夜になった。
新得まではあと2回、登って下ってがある。まああと20kmちょい、先の見えた距離だ。真っ暗な道路の先に明かりがトムラウシ方面にまばらに灯る屈足の町の眺めは、何とも薄ら寂しい夜の旅情に満ちていた。灯りにちょっとほっとするとともに、ああいうのを見ると何ともトムラウシ方面に足を進めたくなってしまう。まあ、新得まであと少し、のんびりと足を進めた。
最後の坂を下り、19:00、新得着。頻繁に自動車の行き交う(それでも知れた物だが)国道38号、街の姿が懐かしい。国道添いのサホロハウスに飛び込んで、一安心。
遅れて到着したにもかかわらず、サホロハウスの夕食はボリュームたっぷりで、明かりの下で食事できる幸せを心から感じた。
記 2000.1/2
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Last Update 2003.1/11