11:23、北斗星から乗り換えた日高本線の普通列車は、雨の中様似駅に到着した。
道南全体を覆う大雨注意報を事前に知ってはいたが、駅前は何となく空が明るいような気もする。仮に今日の行程をバスに変えるとしても、次のバスは14:00。2時間半以上あった。
来てしまった。いよいよ新しい自転車で北海道を走るのだ。
11年間乗り続けた片倉シルクが去年8月に幌延の外れで疲労骨折し、新しいランドナーができたのが去年の10月末。夏まで待てずに来てしまった、ほぼ1年半弱振りの北海道ツーリングだ。北海道は18回目だが、春に来たのは初めてだ。意外と寒くないと言うか、いや、やっぱりけっこう肌寒いというか。
次から次へと雨粒の落ちてくる空を見上げ、駅前を見渡す。2年前の夏にこの駅前に立ち寄ったときの激晴が思い出されてならない。と同時に、青函連絡船から自転車を運んで上陸した15年前の函館の朝の記憶が、いや、気持ちが脳裏に蘇る。
いろいろな気持ちがごっちゃになって、取りあえず自転車を組まないと引っ込みが付かなくなってしまっていた。どうせ組んでばらしても時間はたっぷりある。心無しか薄明るいようにも見える空が晴れれば、しめたものだ。組むしかない。
軽い気持ちで80%位組上がったところで雨足が強くなった。もはや今日の走行は絶望的だが、とりあえず自転車は勢いで組み上げた。組み上げて4サイドの姿をしばらく眺めていると、取りあえず気合いは入る。しかし、まあ当然のように雨が晴れるわけはない。
再びおもむろに自転車を解体した。
大雨にびしょぬれになりながら、輪行袋をバスに積み込んで、広尾へ出発。町を出ると、すぐに大雨は大嵐になった。道路が川になって、川の中をバスが走っている。曇る窓を指で拭いながら、ただただ大自然のパワーに圧倒されて外を眺めているうちに、嵐を眺めるのにも飽きて眠ってしまった。
再び目が覚める。ぼんやりした頭の中で、2年前の夏の記憶と目の前の嵐の中の風景がまたシンクロして、改めて北海道の自然の厳しさを実感する。
襟裳岬を過ぎ、えりも、庶野と、まとまった集落では多少嵐は穏やかになるが、集落を離れるとまた激しい暴風雨に襲われる。湿気で曇った窓ガラスの外を眺めながら、大嵐の海岸の一本道を、バスが1台ゆっくりと走る姿を想像した。
庶野を過ぎて黄金道路に入ると、いくつか川を渡る。見ると、濁流というよりも泥水が山の奥からほとばしっているみたいだった。
が、両岸の新緑は青々と若々しく、一瞬だが心が和んだ。
寝て起きると広尾の町に着いた所だった。終点まで行かずにバスを降りないと。おお、スーパーフクハラだ。正面に確か…旅館「めぐみや」があった。バス停から小雨の中を小走りで宿まで急いだ。
観光シーズンオフだけあって、めぐみやの客は少ない。何となくもの静かな夕食の間、NHKニュースだけが淡々と食堂に響いていた。明日の天気を心から祈って早めに寝た。
記 2000.1/7
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Last Update 2003.1/11