北海道Tour25秋#13-1 2025/9/21(日)開陽→札友内 |
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開陽→養老牛→萩野→弟子屈→札友内
(以上#13-1)
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4時過ぎ、昨夜からまだ大雨が降り続いていた。天気予報通りであり、目は覚めてもしばらく2度寝しておく。どうせ秋なのでまだ寒い。晴れたってこの時間には出発しない、最初からそのつもりだ。ああ、民宿地平線の布団が優しく暖かい。
6時から昨夜仕入れておいたセイコーマートのネタで朝食、その後しばらく待機とする。ニュースでは道南や胆振地方、更に十勝方面での線状降水帯や豪雨による床上浸水、大規模土砂崩れなどの被害が報じられていた。こちらでは幸いそういう災害は報じられていないものの、石川さんによると夜中から早朝にかけて停電があったとのこと。
この後の天気予報は、昨夜と変わらずお昼まで雨は上がらないことになっている。しかし11時から降水確率が50%に下がり、12時以降曇り、夕方は晴れるようでもある。
それなら今日は札友内に行けばいいから、最悪お昼過ぎ行動開始でいい。と思っていた。
8時頃から何となく雨は弱まって、また強くなったりしていた。雨が上がる天気予報の時、予報より早く雨が上がり始めるのはよくあることだ。それならこちらも9時頃から自転車を組立て、出発準備を進めておく。果たして、10時に雨が上がり、10時半には外に陽差しが感じられ始めた。よし、出発しちゃえ。
10:50、民宿地平線発。走り始めると、まず町道北19に出る前に既に青空が見え始めている。よっしゃ目論見通り、これは行けるね。
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そして町道北19からは、開陽台がすっきりよく見えるのであった。寄ってこうかどうしようかと少し考え、ちょっとまだ風が強いのであまり寄り道せず、まずは脚を進めることを優先する目的で、寄らないことにした。とにかく行程には余裕が見込める方が良いし、行けるときに先に進んでおくというのは、普段列車が遅れたときですら鉄則中の鉄則だ。空には雲がけっこうな速度でどんどん飛んで行き、青空が拡がり始めている。そば処福住弟子屈店で昼飯にした後、弟子屈のセイコーマートか道の駅の軒先で13時半過ぎ。時間を持て余して途方に暮れる自分の想像をしたりもした。
後でこの判断が、今日の私を救ってくれた数少ない正しい判断だったことを思い知る。いや、単にそれぐらい風が強かったというだけの話であり、正しい判断としてはここで引き返すべきだった。
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開陽台入口から下り始めると、路上には木々の枝がけっこう落ちているのに驚いた。けっこういっぱい落ちていて、中にはそこそこ大きな枝もみられた。嵐の後ならではの光景だ。昨夜の嵐がただ事じゃなかったことが、よくわかった。というより、未だかなり強い風が吹いている。少しだけ、こりゃあヤバいぞと思ったものの、引き返すには至らない。
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先へ進むと、俣落から周囲が牧草地で開け始めたためなのか、もう風が強い強い。風というより乱気流に近い。牧草地の池みたいに溜まった水たまりに青空が映り、これはこれでなかなかの絶景だ。もちろん普段はこんなところに池のいの字も無い。
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道が斜めに向きを変えると、一気に速度が10km/hに下がった。緩い登りのせいだけじゃない、ちょっとした道の角度で風がもろに向かい風になるのだ。道の方向がまた変わると、風がどうやら追い風基調に変わったようで、登り基調だというのに20km/hぐらい軽く出るのにまた驚かされた。しかし風の向きはやや不安定で絶えず微妙に変わっている。この先乱気流になって急な突風にさらわれるかもしれない気がした。今のところはあまり調子に乗らないことにした。とにかく安全第一で、いつも以上にゆっくり行こう。結局、北進への登りではまたかなりのろのろになってしまった。
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一方その間、雲が高速で空をどんどん飛び去ってゆき、空にはますます青い部分が増えていた。もはや空だけについて言えば晴天、と言い切っていい。北進のいつも地平線が見えるポイントでも、根釧台地がよく見渡せる程だ。しかし風というよりかなりの乱気流が更に強まって吹き荒れ、立ち止まるというより自転車を安定して進めるのに一杯一杯、とても脚を停めて風景を眺める気に全然ならない。
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その後若竹から旭新養老牛へは、一転して追い風のため進行自体は快調だった。
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いや、快調というより、防風林が揃えてくれている道方向の追い風に、煽られて飛ばされていただけだ。
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そんな感覚が何となく、しかしひしひしと感じられ、路上の居心地はあまりよくない。
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12:30、養老牛ながかわ商店着。自転車を停めるにも、風に飛ばされないよう気を遣う。空を見上げると、雲が異常な速さで通り過ぎてゆくのに笑っちゃう程だ。雲が低くて速いのだ。流石の私も、石川さんに弟子屈まで乗せていただくようお願いすれば良かったなと思い始めていた。しかしここまで来たら、もう流石に開陽まで戻る気はしない。そして開陽までより国道243までの方が近い。それに依然として空は青空、陽差しは明るく、見た感じそのものに不穏な印象は少ない。風はこの後収まる筈。風さえ収まっちゃえば、その後は夕方まで晴れるだけだ。さすがに国道243まで辿りつけば安心だろうと、まだ思っていた。
しかし実際にはこの辺はまだ全然序の口、開陽まで戻るべきだったのだ。
養老牛を出ると、空は一気に霞み始めた。雲も一気に増えたものの、空は意外と明るく、相変わらず時々青空すら見えていた。しかしこれまでにも増して更に、というより俄然という程が適切な位、乱気流が強まってしまった。
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行く手の2〜300mぐらい前方に、霧のように濃淡あるガス状の気流が道を横切るのが見えたりする。その気流は、ジェット気流であるかのように高速で行く手を横切っているのだ。うひょ〜とか言いながら、それでもいや霧だよと思いながらやや覚悟して進むと、それはやはり突風に乗った水滴なのだった。その中では身体が一気に水滴に包まれ、腕の毛に細かい水滴が付いた。まだ服が濡れるほどじゃない。というより、雨具を着る適切な場所が無い。
何箇所かそういう気流をくぐった後、やっと根釧台地を甘く見ていたと思い始めた。甘く見ているつもりは全く無かったのだが、ここ何年か天気予報に用心して用心しすぎた気になったことがあった。その用心を後悔していたかもしれないように思う。そして今、根釧台地相手に用心してしすぎることは決して無かったのだと思った。
路上の乱気流は時々、単に直接的な追い風に変わった。そういうときは、ペダルを停めたままで一気に27km/hぐらいまで速度が上がるのだった。快調というより、段々怖ろしさを感じ始めていた。しかしもう引き返せない。このまま進むしかない。
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そんな感じだったので、体感的には意外とすぐに13:10、萩野着。
この期に及んで今日萩野で経由するのを国道243にしようか、やはりいつもの農道にしようか決める必要がある。少し迷ったものの、いつもの熊が出てきそうな農道へ脚を向けた。こちらの方が細道で危険ではあっても、丘を直登する国道の方が風が強そうに思えたのと、突風が吹いたときに車が通過したら危険がアブナイと思ったのだ。
幸い、農道で熊は出なかった。しかし、途中防風林が切れると、そこには嵐と言っていいもの凄い風が吹き荒れていた。カラマツの枝がけっこう頻繁に、しかもかなり大きな奴が空中をびゅんびゅん飛んできて、前方の路上に落ちて跳ねている。これは危険だ。直撃されたらたまらない。
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つくづく、今日は判断ミスだったと思った。ふと後ろを見ると、陽差しがガスに反射し、かなりくっきり輝くような虹が出ている。それがまたWレインボウなのだ。昔若い頃にレンタルで借りた、ヒノテルの作品を思い出した。あれもよく聴いたなあ。いずれ買わないといけないね。何しろ今のところは、この困難をやり過ごさないといけない。
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しかし国道243に合流すると、根釧台地から摩周の山裾に移ったためなのか、当然であるかのように乱気流はますます強まってしまった。防風林のカラマツの中には、路上側に傾いて倒れかかっているものもあった。
道端の防風林が切れると、さっきみたいなジェット気流がそこをめがけて通っているせいか、更に強く速くて見惚れるほどだ。そしてそういう所では自転車が風に押され、脚を着いたはいいがガイドワイヤーに叩き付けられたりもした。後で見たら上腕に痣ができていて、指の関節にコブができてしまった。11月現在、指のコブはまだ治まっていない。幸にも骨は折れなかった。
弟子屈峠を越えたら何とかなる。かもしれない。と思って峠を越えると、スノーシェッドの出口の向こうはやはりそんなに甘くないようだった。それどころか、車が何台か停まっている。どうやら風をやり過ごしているのだ、と思った。
ここにスノーシェッドがある理由がよくわかった気がする、と思った。翌日、民宿地平線に戻ってから、この仁多のスノーシェッドがいつも強風時の難所であり、冬はこの突風が-20℃で吹き荒れるという話を伺った。
ここでやっと雨具を上下着込むことができ、2〜3分風の隙を伺ってから、意を決して出発。向こうの木立の中では、かなり立派な倒木が路上を塞いでいたのであった。車が停まっていた理由をやっと納得。というより、車すら通行に手間取っている。おれは本当にこんな道を弟子屈まで辿り着けるのか。自転車で。どこかでジェット気流に吹き飛ばされちゃうんじゃないのか。
こんな状態ではとても仁多農免農道を経由するわけにいかない。そのまま久しぶりの国道243へ進んでゆくと、幸いというかその先国道243では風が目立って強まることはなく、無事弟子屈市街へ辿りつくことができた。
路上の枝は多かったし、時々強い風に脚を停めて踏ん張って耐えるような箇所は何カ所かあった。釧網本線沿いの国道331に合流できたときは嬉しかった。そして国道243から分岐して、弟子屈駅前へ向かう落ち枝だらけの陸橋を、もうタク輪できるんだもんねという安心感と共に越えられたときは、本当に安心した。
とはいえ駅前では一瞬風が弱まったので、何となくそのまま通過し、取り急ぎ道の駅に向かうことにした。流石に駅前はそよ風のようだねなどと思っていたら、やはりそんな優しいものではなく、2〜300m進む間に再び風は強まってしまった。
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14:25、這々の体で弟子屈道の駅着。事前に目論んでいた、福住どころじゃなかったと思いながら、庇下に自転車を停めてやっと一息。売店でソフトを食べると、震えが止まらなくなってしまった。身体がかなり冷えているのが自分でも判った。続けてコーヒーを2杯。これで何とか助かった。
15:05、道の駅発。
道道717の美羅尾で、また風が強くなってしまった。途中で自転車が流され始め、脚を何度も停めた。でも、ここまで来ればもう2kmも無いはず。まだ15時台、歩いたって暗くなる前には着ける。
しかし、脚は進めないと着けるものも着けないことも確かだ。国道243に合流できたときは本当に嬉しかった。鱒やへの道には落ち枝一杯のみならず、最後のダートでは倒木が道を塞いでいた。幸い自転車では何とか問題無く通過し、15:35、鱒や着。
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宿に着いた途端、民宿地平線の石川さんから鱒やさんに電話が掛かってきた。私の事を心配して下さったのだ。それにしても、私の行動を読み切っている石川さん、流石の根釧台地マスターである。
部屋に荷物を置き風呂に入れていただいて、改めてあまりに腹が冷たいのが、自分のことながらよく分かった。開陽からストレートに来ただけなのに、北海道Tour史上、過去3本の指に入る修羅場になってしまった1日だった。改めて、根釧台地の神様に「ナメてんじゃねえぞ!調子に乗ってんじゃねえ!」と横面を張り倒された気がした。
お客さんは全部で4人。釣りの方を含め、例によって皆さんのお話が楽しい。昼の修羅場が嘘のように、心安らかで楽しい夜になった。
記 2025/11/9