北海道Tour22#11
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牧場向きの部屋の窓から、白み始めた朝の空に少し青い部分が見える。明るくなり始めた風景が、どんより暗いというより朝陽の色っぽく赤いようにも見える。
SCWを確認してみると、10時から行程全域で弱い雨となるものの、9時までは薄曇りどころか晴れの部分もあり、むしろ好ましい。
5時に再びSCWを見たら、行程全域の雨は11時からに変わっていた。しかしこの状態で10時から、下川辺りがピンポイントで雨っぽい。山深いところが順当に雨、というだけの話ではあるように見えるし、2〜3時間後に実際の天気が更に全体的に遅れて、下川周辺の雨も問題無くなるのかもしれない。そういうことは過去にはよくあった。
直近の2019年にはファームイントント発名寄着で10時半過ぎ。あの時は下川から名寄がかなり強い追い風だったからもう少し時間が掛かるとしても、名寄着11時頃を見込めばいい。これなら雨に降られても、終盤だけだろう。
どうする。等と思い悩んでもそうでなくても、できることはただ一つ。出発準備は進めておき、その時に空模様で決める、それだけだ。
山間で雲が低ければ、1km先で天気なんて予想できないぐらい変わることもある。しかし事前予防策として安全側に転ぶことはできる。また来ればいいじゃん、という考え方もできるようになった。冷静で客観的な判断をできるだろう。多分。
しかし6:00から朝食をいただいている間、山方面の雲はやや濃くなっているように見えた。このままだと今日はこのまま美深へ下ってその先は輪行、というのが妥当なぐらいに。
6:30、仁宇布ファームイントント発。これは美深直行かな、と思いつつ外へ出てみると、やはり山方面の雲がかなり濃い。仁宇布を囲む稜線の向こうに、雨雲っぽいとろっとした雲がたぷんたぷんに溜まっているのである。あの中へ行くことは、避けられるものなら避けたい、と確実に言える程に。
6:40、仁宇布交差点通過。交差点で下川方面の空をもう一度眺めておく。美深から美瑛へは輪行だから、あと1時間が今回の最終行程になるんだな。等と思いながらそのまま美深へ下ってゆく。
下るだけとは言え事故に気を付けて、何の問題も無く下りきらねば。
その後は高広辺りから空はかなりどんより曇り始めた。
谷間を下りきって辺りが開け始める辺渓でも、空は晴れることは無かった。結局仁宇布の盆地内が一番空が明るかった。
美深の盆地では水滴すら感じられるようになり、宗谷本線が見え始めると明らかに雨が降り始めたのであった。予報は遅れるより、むしろ早まったということだろう。山間へ脚を向けなくて良かったな。
やや風雲急を告げつつある空の下、2019年から目を付けていた美深駅の裏口へ向かった。裏口は道が旭川方面のホームに直接突き当たっていて、自転車をそのまま屋根の下に移動して輪行作業ができる。旭川に向かう場合には、列車に乗る時荷物一式を担いで階段を登って下ってが不要になる。改札や切符売り場は稚内方面側の美深交通ターミナルにしか無いものの、用があれば荷物を持たずに階段で線路を渡って向こうに行けばいい。ここ、仁宇布訪問時に頻発している美深輪行が楽になるぞと、2019年の秋から目を付けていたのだ。
7:40、美深駅着。
そのまま自転車を解体開始する。8時に民間委託の切符売り場が営業を始めるので、一度作業を中断して旭川まで指定券をお願いしておく。当然グリーン車だ。お願いしておく、というのは美深は民間委託のために指定券端末が無いため、窓口の方が名寄駅に電話して切符を確保してくれるためだ。その間私は中断していた輪行作業を進め、作業が終わったらまた切符売り場に向かえばいい。
9:01、サロベツ2で美深発。
美深から旭川まで、何と僅か1時間20分足らず。4日前に逆方向で乗った時と同じく、名寄から先の走りは大変パワフルだ。特に和寒・旭川間。以前の120km/hから110km/hに減速したとはいえ、そういう感覚は感じられない力強い走りである。まあしかし、特急が速かろうと何だろうと、宗谷本線も石北本線同様並行する高速道路に次第に負けつつあるかもしれない。
10:18、旭川着。
天気は弱い雨というより、薄暗くはあるものの曇りである。じゃあ旭川から美瑛まで走れそうかと言えば、喜び勇んで自転車を組む気にもなれないビミョーな、微妙さが悔しい天気である。こんなことで悔しがる状況と、踏ん切りが付かない自分がやや腹立たしい。
天気が冴えないので、荷物を置いてまで旭川の街に出ていく気にもなれない。宿のチェックインは15時から。どうせもう自転車は組み立てないんだから、美瑛には14時過ぎに着いてもいい。
どうしよう、あと4時間。
いっそのこと腰を落ち着けてしまえば、それはそれで2022年夏の旅の時間まっただ中、という気にもなれるかもしれない。なれるといいなと思い、例の如くコンコースからホームへ登り、ベンチで過ごすことにした。4時間を、旭川と美瑛で2時間ずつに振り分ければ、退屈感は多少薄めることができるかもしれない。
12:30、旭川発。富良野線で美瑛へ向かう。
13:02、美瑛着。美瑛ではもう少し待合室で田舎っぽい気分になれるかと思っていた。しかし、大変大きな誤算が私を待ち構えていた。曇り空の下、美瑛では例年風物詩として最終日に眺めている農業祭りが、絶賛開催中なのだった。
タクシー乗り場が駅前からロータリーの向こうの美瑛ハイヤーとなり、お祭りの会場を回り込んで歩く必要があるのはまあいい。歌唱イベントの、町中に鳴り響くような大音響、特に重低音が響き渡って居眠りにも支障するほどだ。駅の待合室に座っていても耐えがたく、それは旅の時間が過ぎてゆく、などという生易しいものではない。これまで農業祭りは夕方にちらっとながめるだけで、お昼に出会ったことは無かったな、などと思うしか無い2時間となったのだった。かと言って空の雲は低く、どんより暗く、ずっと雨が時々降ったり止んだりしている。自転車を組み立ててどこかに行く、という感じではない。
とは言え、過去には美深から美瑛へ輪行するパターンで、大雨の影響で宗谷本線の名寄旭川と富良野線が運休になり、首の皮一枚で美瑛に着けたこともあった。今日の各区間の状況には全く不満は無い。大義名分とともに休める状況に感謝すらしている。
15:00、美瑛「ポテトの丘」着。
部屋は5日前と同じコテージだ。食事も5日前と同じくレストランブランルージュ、リクエストしておいた鶏のキャベツ煮を頂く。やっと静かな、大変満足な最終日の夜だ。一人っきりのコテージも2回目は慣れたもの、寝てしまえばもう森の中一人だろうが何だろうが関係無い。明日は灼熱の東京、明後日はもう出勤なのだ。
記 2023/2/19
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