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km

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路
ルートラボ

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方港 小串郷→浦桑→友住郷→上五島空港→白浜→友住郷→大田郷→有川→青方港 60km ルートラボ

 夜が明けても空にはまだ雲が広がっていた。雨は降ってないが青空は全く見えない。スマホの予報は、昨日の段階では朝から晴れだったのに、夜の間に午前中曇り、15時の桝から晴れに変わっていた。しかし、頭上の空は曇ってはいても、昨日より雲は高い。海上の向こう岸も、遠景が昨日とは段違いにはっきり見える。これなら朝から走るのには全く問題無いだろう。

 6:00少し前から朝食開始、6:20には外に出ることができた。陽が出ていないせいかやや寒い。防寒着代わりの雨具を着込み、6:30、小串郷「いずみや旅館」発。
 集落が途絶えると、いきなり登り開始となる。一昨日一度来た道だから、道の雰囲気も登り総量もわかっている。100mちょっと、落ちついて登れば良いだけの話だ。
 一昨日見えそうで見えなかった入り江の集落大浦が見えないか、逆の進行方向からもう一度気を付けてみた。昨日いずみや旅館の女将さんからは、大浦に何軒か民家があることは伺っていたのだ。しかし、やはり入り江の奥が見下ろせそうなのに、茂みがその辺りを見えそうで見えない位に隠していて結局民家は見えなかった。さすがキリシタンの里だ。
 一方で一昨日雲が隠していた、頭ヶ島へ向かう中通島対岸の全貌が姿を現していた。風景は雨上がりっぽくそれなりに明瞭で、海上に浮かぶように切り立った島々。多分2〜3時間後にはもうあの辺にいるのだという距離感覚が、リアリティとともに感じられた。
 林道自体はあまり距離は無く、行程断面も比較的簡単でわかりやすい道である。一度西岸へ渡る最高地点もせいぜい160m、淡々と通過すればもう西岸の奈摩港への分岐がある似首まで下るだけ。
 似首から東岸の道は県道32となる。拡幅済み新道のこちらから、手持ちの地形図通りに丸尾郷へ登ってゆく旧道が見えた。この辺が新開通したのは近年だということを昨日いづみや旅館で聞いていた通りに、新道は地形図に載っていない。新道が登り返しが少なく下り基調なので、似首から浦桑までの「朝のもう一登り」が無く、コースの印象は地形図から受けるものと大分違っていた。もちろん今のところは楽な方が有り難い。

 榎津から浦桑へは有川湾の海岸沿いに漁村が続く。民家が並ぶ道端の家並みに次第に商店が増え、国道384に合流。湾を回りこんで七目郷へ。
 七目郷から先、やっと一昨日通っていない初めての道となる。ロードサイト店舗が多い市街地の風景であっても多少交通量は多くても、初めてというだけで新鮮な気分で流すことはできる。等と思いながら自販機コーヒー休憩して、ふと小串郷からここまで林道あり拡幅県道有りだった道も、どちらかというとやや冗長気味に感じている自分に気が付いた。ピストン行程一杯の漁村ローラー作戦なんてあまりやるもんじゃないのかもしれない。帰りに来た道を戻ることになるからだ。行きと帰りで景色を眺める方向違うのがやや救いではある。

 7:20、有川通過。小串郷から有川まで1時間かかっていない。地形図上の距離はそう遠くないにしても、驚きの快調ペースだ。特に走行速度が高いとかいうわけではないので、あまり風景を眺めることが無いのが効いているように思う。
 有川で国道384は航路となって佐世保へ向かってゆく。今回は何故か有川発着の船便を使うことは無い。ちらっと見えた、中通島最大の有川ターミナル。どんな港だったのか、ちょっと訪れてみればよかったと、今にしてみれば思う。
 道は県道62となり、先端方面へ向かって岬と漁村の山越え谷越えが始まる。漁村の小河原郷、立石峠65m、黒崎峠85m。中通島最大の市街有川の近くらしく、アップダウンは比較的穏当である。相変わらず道は森に囲まれていたものの、所々で北側が開けて有川湾と対岸の中通島の海面から切り立つ姿が見えた。つい1時間ちょっと前までいた小串郷もよく見えた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
五島列島Tour19#5 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町有方郷小河原 県道62 立石峠→黒崎峠 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 海岸の漁村赤尾郷は、低い丘の間に平地が拡がる地形に低い軒の民家が密集している。何だか丘の間を通り抜ける風の経路が見えるようだ。石垣についての案内看板が道端に立っていた。確かに、細かく四角い石が丁寧に綺麗に詰まれた石垣が大変特徴的である。
 もうひとつ軽い丘越えがあり、反対側の中通島最東端、友住を通過。8:00、友住大橋を渡っていよいよ頭ヶ島である。

五島列島Tour19#5 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町友住郷 県道62 頭ヶ島大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 常緑広葉樹が生い茂る森を再び110m登ってから、入り組んだ急斜面をくちゃくちゃに折れ曲がる白浜への下りを見送り、まず上五島空港へ。
 8:15、上五島空港着。2006年までORCの小型機が来ていたとのこと。今は空港としては休止中だ。「上五島空港」と名前が掲げられてはいる元空港ビルの建物は、現在世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「頭ヶ島の集落」と頭ヶ島天主堂のビジターセンターとなっていて、白浜の集落と頭ヶ浜天主堂に訪れるにはここでバスに乗り換える必要がある。そう書かれていたWebの記事に、「自転車は軽車両なので通行可能」と書かれていなかった。自転車での訪問もダメなのかもしれない。ダメなら今日はもう先へ行ってしまおう。頭ヶ島天主堂は観ることができないが、100mの登り下りが省略できる。それも旅先の出会いというものだろうし、行けなかったら行けないでこの先の行程に余裕ができる。行けるなら、問題無く頭ヶ島天主堂を観に行こう。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町友住郷 上五島空港 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 駐車場で地図を眺めていると中から人が出てきて、今の時間はバスが運行していないので自転車は行ってもいい、自転車は教会手前の駐車場に止めればいい、頭ヶ島天主堂はもしかしたら中に入れるかもしれないと教えてくれた。ただ、後でWebページを見直すと、見学には事前連絡が必要とのことだった。反省。

 往路に眺めたクネクネの下りを白浜の集落へ。やはり道の一番下まで100mぐらい下る必要があったものの、海岸際よりは多少高い位置に教会はあり、教えていただいたとおり駐車場は頭ヶ島天主堂手前にすぐ見つかった。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町友住郷頭ヶ島 頭ヶ島教会 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 天主堂にはまだ誰も人がいない。外構をお掃除中のおばさんに挨拶すると、あと20分も待てば中に入れるかもしれないと教えて下さった。頭ヶ島天主堂は事前のNHK録画で印象に残っていた教会のひとつであり、石造ながら瓦葺きの建物の内部空間には大変興味があった。船でしか来れなかったこの島に住み着いた家族が、この地で手に入りやすかった石を使って建てた教会なのだから、内部空間にはその思いが少しでも現れているはずなのだ。
 ただ一方、この先の行程はやはり気になる。あと20分、しかし20分。再び来れる日がいつ来るのかはわからないものの、これはこれで旅の縁でもあり、今回の旅では外観だけ拝見して満足し、先に進むことにした。

 8:45、頭ヶ島天主堂発。小串郷6時半の威力で、何と8時台に白浜を出発することができている。この後も順調に脚を進めてゆきたい。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町友住郷 県道62 頭ヶ島大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 再び友住大橋を渡り、友住郷から半島の南岸へ。今日ここまでありそうで無かった、断崖海岸際の道である。9時を過ぎても未だ雲は空一杯に垂れ込めていてやや薄暗く、外海と岩場と防波堤がやや厳しい表情だ。この先大田郷への12kmの林道は、今日前半の行程で一番の懸案箇所なのだ。とはいえ、最高地点でもせいぜい200mちょっと。かなりくねくねではあるものの1時間半もかからないだろうとは思うし、今のところ見込みで入れておいた余分なピストン系コースを(現地確認の上で)片っ端から省略できていて、行程消化状況は大変に順調だ。上五島空港や頭ヶ島天主堂到着時点で意外に時間が掛かったら、往路に通った県道62を戻っちゃえとも思っていたが、全く問題無く林道に臨もう。

 江ノ浜から唐突に道が細くなって山裾竹藪系のややワイルドな茂みに突入、登り開始。思ったよりは緩くて助かったが、やはり当然のように10%基調ではある。ひと登りして茂みが森に変わった後は、入り組んだ山肌の深い森に道は続いた。くねくね細かく入り組んだ斜面に貼り付いて、次の谷に進むのにとにかく時間が掛かる。それでも一度100m前後まで登ってしまってからは連続の登りは一旦落ち着き、一呼吸置くことができた。
 道端の木々の背は高く、梢がところどころで路上を完全に覆い、薄暗いトンネルを作っていた。森は基本的には広葉樹林なのだが、杉の植林が続いたりもした。山側に露出した岩肌の、大きな地層が描く斜めや垂直気味の模様、建設時の掘削を想像させるような鋭い断面が、荒々しい迫力を道に与えていた。若松島の林道区間よりワイルドに感じられた。岩の模様は、頭ヶ島の岸壁に似ているかもしれない。一方で途中に集落は全く無いのに、しかもけっこうな山奥なのに、意外にも畑が時々現れた。
 尾根の部分では、時々木の向こうに海の色が伺えた。森が切れて、海がちらっとぐらいに見えることもあった。そういうときには空に拡がっている雲が、次第に高くなり始めているのが感じられた。まだ日差しの色は感じられないものの、午後は次第に晴れてくるのだ。
 路面は所々荒れ気味だった。部分的には殆どダートっぽい箇所があったりした。ただ、枝や落石などは落ちてはいても路面に溜まっているわけではなく、道は放置気味というわけでもなさそうだ。
 実は山腹を通るこの道の上にもう1本、稜線辺りに林道が、地形図とルートラボに描かれている。山中で行き止まりになっている道なので、それを言い訳に早々に計画から外していたその道の目的が、今現地に来てよく解った。稜線辺りにずっと送電線が通っているのだ。更に後半では多くの風力発電塔も現れた。そちらの道もこの道も、基本的には里があるからこそ存在意義がある道なのだろう。

 まだかまだかと思ってはいても、時間と行程は着実に過ぎ、道は唐突に下り始めて県道62に合流。合流点の前から眼下に大田郷の漁村が見えてはいた。大田郷へ降りるGPSトラックを引いてはいたものの、空が未だ曇りで海が鮮やかというわけでもないことをいいことに、またもや割愛させていただくことにした。青方へ気が急いていたのだ。とはいえ未だ9時台、もう青方には確実に13時には着けるだろう。
 10:00、峠部分着。
 七目郷へもう何回か登り返しつつ半島南岸を経由する林道っぽい道が、この辺から分岐していたはず。地形図には描かれていたその道は、ルートラボでは拾うことができず、ストリートビューでも道を辿れなかった。このため、何か通行止めの原因でもあるのかと思い、この道は経由しない計画としていたのだ。
 現地ではその道の入口林道阿瀬津線という看板が立っていた。道は入口では轍のある砂利ダートではあるものの、その先道が続いてゆく斜面の森を見ると、廃道寸前っぽい雰囲気が漂っているようにしか見えない。どうせ民有林だから途中に何があるかわからないし、ルートラボで拾えないのは何か理由があるのだろう。
 七目郷に下ること無く手前の有川に下ってしまう今日のコースが、今まで中途半端なように思えてやや残念だった。行けそうなら是非ともこちらに向かおうとも思っていた。しかしこの入口を見て、完全に諦めが付いたのであった。

 もうあとは坂を一下り、20m台まで一気に下った後、周囲の茂みが畑に変わり、集落があっという間に何となく郊外っぽくなって、10:10、有川着。わずか3時間前はここにいたのだと思う。そしてこれならもう余程のことがない限り、青方13時には確実に間に合うだろう。

 有川市街から国道384を避けたいと思い、裏道のつもりで入り込んだ蛤浜では、白砂の砂浜に水色の渚を眺めることができた。思わぬ収穫に気分が良いのも余裕のなせる技である。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町七目郷蛤浜 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 時間の余裕はあるのだが、七目郷の五島うどん「竹酔亭」はもういいやとも思った。そのまま青方峠を越え、飲食店や食料品店が比較的選びやすい青方市街も好ましい、イメージの店が道端に現れないので通過してしまう。いや、もともと好ましい食料品店のイメージなんて無い。とにかく訳も無くとにかく青方港へ行かねばと、気が急いていたのだ、と他人事のように思う。もう少し気持ちに余裕を持って、何か買っておけばよかったとも思う。
 青方の入り江沿いに、やや慌ただしく落ち着かない国道384を西へ。跡継トンネルの信号前からGPSトラックに従いそのまま岬方面へ、先端部のフェリー桟橋を目指す。
 青方港はどちらかと言えば物流っぽい港というぐらいに殺風景だ。何とか小さな倉庫の一つに、野母商船の青方代理店「道津運送」の文字を見つけることができた。電話予約しておいた太古の切符を、sここで受け取る必要がある。
 倉庫の事務所が予約券の発券所だった。正式には11時過ぎからだったものの、問題無く発券してくれたのは有り難いことだった。

 10:50、ストリートビューで予習した印象より、居心地の良さそうな雰囲気が漂う太古待合所へ。1日1往復しかない博多からのフェリー太古には、専用の、しかも平屋ながら新築の待合所があるのだった。しかし出発時間が近づくにつれ、待合室の外で待つ人が出る程お客さんがかなり増え、専用待合室は必要なのだと納得。それに博多からの太古は早朝だし。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県南松浦郡新上五島町相河郷 青方港フェリー埠頭 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 いくら何でもそろそろ来るはずなんだがと思っていると、海上に点が現れ、すぐにそれが太古の姿になった。フェリーオーシャンでも思ったが、船というものは意外に速い。あっという間に現れて近づくし、乗ってみると海上を意外な程の勢いでどんどん進むのである。
 近くに来るとやはり太古は大きく、しかし思ったより小さいようにも見える。後部車両タラップから自転車に乗ったまま乗船して、自転車を壁にロープで繋いでもらう。積載室はフェリーオーシャンと違い、完全に屋内である。海上の経路がGPSで記録できないとちょっと残念だと思った。しかし、問題無く記録できていたのは有り難いことだった。
 積載室から船室に向かうと、乗客達は席の確保、次は出張販売弁当の確保で、かなりばたばた浮き足立っていた。一目で青函連絡船を思い出した。これは青函連絡船乗り継ぎ時の状況とよく似ているぞ。などと思っているうちに当然ながら出遅れてしまい、結局席は絨毯区画の空きスペースで何とか、弁当も人気の角煮弁当は逃したもののおにぎりを何とかぎりぎりのところで確保できたのは幸運だった。完全に青函連絡船の感覚を忘れている。いや、解ってさえいれば備えることはできたんだが。
 まあ自転車だし、乗船ダッシュからは最初から別枠なんだから、仕方無いことなのかもしれない。それに乗船時間たった50分だし、小値賀島には市街があるしね。

■■■2019/6/2 ■■■http://takachi.no-ip.com/ ■■■高地 大輔 4 ------------------------------------------------------------ 5 五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹郷→前方郷 笛吹郷→黒島→浜津郷→斑島→浜津郷→柳郷→中村郷→前方郷→小値賀空港→前方郷→唐見崎→前方郷 43km ルートラボ

 12:10、青方発。
 太古は青川港を回り込んで出港、進行方向左側に「空から日本をみてみよう+」で紹介されていた石油備蓄基地を通過し、中通島の西側をぐんぐん北上してゆく。右側には奈摩湾西側半島の切り立った岸壁が続いた。大きな岩がごつごつど迫力で立ちはだかり、中腹から上には林道が通っているのがよく見えた。昨日訪れる予定だった道である。やや広い海岸沿いには清掃工場が建っていた。多分林道から崖下に分岐する道があり、下りきるとああいう清掃工場や奈留島みたいに残土処分場があるんだろうな。
 それにしても中通島、海岸から切り立つ斜面が急である。さっきから中通島を眺めていて、何となく違和感のような気持ちを感じていた。それが「危なっかしい」という気持ちであり、つまり中通島が今にも目の前でごろんと転覆して倒れてしまうんじゃないか、という危惧であることに気が付いた。そんなことがある訳は無いんだけどね。
 そんな妄想も束の間、そのうちごろっと横になって昼寝したり、地図を見てコースを再確認したり、補給食と思って買ったおにぎりを食欲の赴くまま全部食べちゃったり。
 途中トイレに行くと、我々の絨毯自由席はエンジン音が響いて振動しているが、上階の指定席と個室は驚く程静かで落ちついた雰囲気だった。そうか、1階は客室兼防音層なんだな、と思った。そういうところは青函連絡船より露骨な太古である。何はともあれ、次に五島列島に来る機会があれば、是非博多から太古の寝台を使いたい。

 13:05、小値賀着。そのまま走り始めるのがあまりに簡単すぎて、太古とフェリーターミナルにしばらく紐で結んどいて欲しい気分だ。しかしもう海の上じゃないし積載室の中でもない、自由の身なのだ。

 13時出発で宿まで予定コースは33km。手持ち時間にかなり余裕がある。一方、明日の宇久島は41kmで10時過ぎ到着13時発。計画時はこれでも行けると思っていたが、風景を見るのに立ち止まることを含めて考え直すと、かなり厳しいんじゃないかと思い始めていた。またその後、宇久島から中通島に戻ってからも、予定していた海岸集落へのピストン行程を省略して、代わりにさっき眺めた西岸の林道に向かえるかもしれないと思い始めていた。
 実はもう手持ち時間と可能性の狭間でいろいろ検討し、
   1 明日の朝の便を佐世保市営船から津和崎丸に変更し、可能な限り早めの時刻に来てもらう
   2 宇久平の出発時刻も早めてもらう
という方針で津和崎丸にはお願いしてある。津和崎丸の他のお客さんの都合もあり、結論は今日の17時過ぎにわかる予定だ。こちらもこの方針に備え、今日の進行次第で明日の分も消化しておきたい。今日と明日の小値賀島コースは比較的近くを通る区間があるため、馬鹿正直にすぐ隣の道を経由したりせずに多少合理化するだけで、今日のコースの後に明日のコースの大半を追加できるんじゃあないかと思っていた。
 というわけで、今日と明日の予定トラックを別の色で表示させておく。今日のコースから明日のコースに乗り換えやすいように。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷 笛吹港 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 フェリーターミナルから、道沿いの商店の位置等を確認しつつ西へ笛吹港を回り込んでゆく。太古で「小値賀で何か食べよう」と思っていたのに、更に「空から日本を見てみよう+」で見覚えのあるスーパーを確認しつつも、何となく他人事のようにそのまま通過してしまった。我ながら空腹感はあまり差し迫ったものではなかったのかもしれない。
 湾に架かるそう長くも無い橋を渡って、笛吹港の中にあるような黒島へ。これだけ本島から近いと、半島も島も風景の何が違う訳じゃない。小さな島の湾内側、集落とその周辺のごく限られた範囲の道の先端には、決定的に本島とは違うもの寂しさが感じられるような気もする。しかしそれでも、港町外れの漁村と畑と茂み以上の何かがあるわけではない。
 未だに空が曇っているからかもしれない。海の色も岸辺の緑も、更に気温自体、何となく薄ら寒いのである。

 笛吹に戻って、小値賀島を時計回りに進んでゆく。
 GPSトラックに従い、県道161から狙い定めて海岸部の断崖際へ微妙に傾斜する大浦、浜町の畑へ、裏道を繋いでゆく。田圃、野菜畑の他、麦と牧草が目立つ。麦は五島うどん、牧草は五島牛、それぞれ思い出すのは名産だ。
 県道161を経由して竹崎の漁村、漁港を海岸沿いへ。浜辺から海と空へ拡がる空間感覚が、丘陵部の畑とは全く違い、その広さというより大きさにしばし脚が停まる。そして遠浅の海全体が鮮やかになり始めている。見渡す空は未だ曇っているものの、次第に雲全体が明るくなっている。晴れるにはもう少し時間は掛かりそうではあるもののもう15時の桝だし、連休後半に向けて早く晴れてくれ。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 県道225 斑大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 斑大橋を渡って斑島へ。橋の上から眺める海も、軽やかで鮮やかに変わり始めていた。振り返ると、斑大橋手前の小値賀島、松林裾の草地に黒牛が放牧されていた。明日訪れる宇久島とともに肉牛の放牧が盛んなのだ、と思った。五島列島は仔牛の放牧が盛んで、通常の300kg程度の仔牛が1頭50万円程度のところ、五島牛は1頭70万(〜100万)で佐賀や松阪に売られてゆくとのこと。初日、2日目に宿で食べた五島牛の陶板焼きはその通りに大変美味しい霜降りだったことを思い出す。

 時計回りに斑島を1周してゆく。住宅が密集する港を横目に、まずは南岸から西岸へ。
 斜面の森を、木々の間に東シナ海をちらちら眺めつつ、10%超ぐらいの登りであっという間に標高70m。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 斑島西岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 斑島西岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 再び下り始めると海岸へ一気に急降下してゆく。海沿いの棚田、牧草地、ごろごろごつごつと黒い石、岩と、漂着発泡スチロールが目立つ海岸を過ぎ、港へ戻って来た。あまり大きくない島なので当然のように、あっという間という程でもなくボリュームたっぷりという訳でもない1周であった。登りはそれなりに厳しく、港町は静かで板張の家並みが美しかった、斑島であった。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 県道225 斑大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 小値賀島へ戻って浜津郷へ。県道62から入り込んだ、集落の空間が楽しい。そう言えば小値賀島は、岸から急に斜面が切り立つ中通島とは全く違う地形だ。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町浜津郷 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 海や畑の拡がり、その間に断続する森や集落。初日の福江島で見た陸地に拡がる農地を思い出す。中通島はもちろん福江島に比べても、小値賀島はもう少し里っぽい。それは都市近郊でもなく山裾の狭さとも違う、人なつこい営みの雰囲気だ。
 集落からややひっそりした、しかし生活感溢れる浜津漁港へ降り、再び台地上へ。浜津後目から板に拡がる半島には、牧草地主体の畑が拡がっている。防風林に囲まれた牧草地で刈り取りのトラクターが忙しそうに動いていて、刈り取り終えた区画に牧草ロールが並んでいる。つい十勝辺りの牧草地を思い出す。そして、初日と2日目に夕食で食べた五島牛をまたもや思い出す。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町柳郷柳西 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 小長崎からの帰りに、宇久島への佐世保市営船が発着する柳港を確認しておく。入り江の漁村に囲まれた小さな港に、小さい浮き桟橋が浮かんでいた。明日、万が一津和崎丸の都合が付かなければ、ここから市営船に乗る必要があるのだ。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町柳郷柳西 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 柳郷からは小値賀島最高峰の番岳へ。最高峰とはいえ、最高地点でも100mちょい。
 コンクリート含みの舗装が続く畑と田圃の畦道みたいな細道が、山裾溜池のダム堤を掠めて森に突入。しかし森はどこかの公園の上手のようで、やはりどこか里の山っぽい雰囲気が感じられる。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町柳郷 番岳(登り途中) #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 最高地点辺りで海側の展望が開け、黄砂の影響でややシルエットっぽい納島、宇久島を眺めることができた。なんだかこれで満足してしまったのと遠景がやや霞んでいるため番岳徒歩3分の看板訪問は見送り、その後は森の中を道が唐突に下り始めて唐突に大浦の県道161に合流。辺りは再び農村まっただ中である。さっき通った見覚えのある道が目の前にあった。ここまで来たら初日の島巡りも後半である。
 しばらく続いた森の中から外に出てみると、薄日が射し始めて辺りが明るくなってきた。3日間、待ち望んでいた日差しである。

 まだ15:20。小値賀島初日のコースとしては、もう宿へ向かうパートが残っているだけだし、そろそろGPSの画面に、2日目予定コースのトラックが現れていた。
 農村と畑を行き来しつつ柳郷から中村郷へ。途中、こども園、中学校、高校が桜並木沿いに建つ、小値賀島の文教地区を経由。中村郷の途中で明日予定コースのGPSトラックに、唐突にコースを切り替える。裏道ばかり右往左往するようなコースだが、切替という行為には何かを操作しているような気分の良さがある。

 船瀬で南岸の海岸線に出て、2日目の目玉だった小値賀空港へ。
 あまり考えずに描いたトラックは、運動公園みたいな場所の外側から、小値賀島南東の半島を横断する桜並木の1本道へ。愚直な直線で山裾に乗り上げて海岸近くに降りるという、大変直截な1本道である。或いは空港アクセス用途で作られた道なのかもしれない。2006年まで中通島同様ORCの定期便が来ていた小値賀空港、地元の期待は高かったことだろう。現在空港は休止中であり、全く車が来ない道の見事な一直線っぷりが夢の跡のようだ。桜並木の新緑が、ますます瑞々しく見える。

 山裾から下った道が田圃、続いて牧草地の中へ。茂みの向こうがそろそろだなと思っていると、順当に小値賀空港のフェンスが現れた。やや狭い滑走路は多少草生しているものの、しかし小型機なら今すぐ使えそうである。中通島も含めて定期便、あると便利なんだけどな。

 GPSトラックは、空港手前側の道と、滑走路をくぐって海岸へ出る道だけ行き止まりになっている。そこまでしか道を拾えなかったのだ。しかし空撮では、空港周囲を通路っぽい幅と色のエリアが囲んでいるのが認められ、現地では問題無く通れるかもしれないと思っていた。
 まずは空港のフェンス際の犬走り的通路を南岸へ。すると、滑走路のフェンスと防波堤の間にコンクリート舗装の通路が続いていた。この時点で、これは全周大丈夫なのかもしれないと思った。
 南岸の通路をそのまま進み、南東の角で少し海を眺めてみる。すっかり雲が去ってしまって真っ青な空の下、赤みを帯び始めた強い日差しが海、島々を明るく眩しく照らしていた。明るい濃紺の海上、緑の森と赤茶色の岩の野崎島が切り立って、比較的間近に浮かんでいる。野崎島の向こうに中通島も、ややシルエット気味ではあるものの意外な程近くに見える。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港南岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 島までの距離は近くてもその間に海が、やはり立ちはだかっている。海は日差しの中で明るく明快な濃紺で、見るからに粘性高く力強く、引き込まれそうな畏れ多さが感じられた。思えば自転車なんて道が無いとどうにもならないし塩分で錆びるし、人間なんて寒かったり暑かったり脚の下に地面が無いだけでどうにもならなくなってしまうのだ。

 そのまま次は東岸へ。滑走路の長辺に沿った通路が先の方で行き止まりになっても、滑走路の下のトンネルをくぐって戻れそうなのは、さっき空港手前で確認済みだ。しかしここまで通路で来れた以上、メンテナンス場ぐるっと1周できるように造られているに違いない。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港東岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 海岸にせり出した草地に、猟師さんか誰かの軽自動車が停まっていた。相変わらず野崎島は、正面一杯に構えるように大きく見えていた。日差しに照らされた空も緑も海も岩も、鮮やかで軽やかだ。しかし防波堤の外の岸辺、不自然なほど黒っぽい色の大きな火山岩の中に、数多くの漂着ゴミが溜まっていた。鮮やかな明るい色の海と岸辺の黒い石中で、尚更白っぽい発泡スチロールやプラスチック、ビニールなどの質感が目立つ。掃除する人がいないと、海岸は漂着ゴミで一杯になってしまうのだと思った。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港北岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 北海岸で今日の宿の民宿愛宕がある漁港、その先の唐見崎の半島を見渡して、結局全く問題無く小値賀空港外周から前方漁港への道へ。海岸沿いの道から宿のすぐ近くを経由、それでもまだ16時過ぎ。最後に唐見崎まで脚を伸ばしておく。これで明日予定のコースの主な部分を、今日のうちに消化できたことになるのだ。
 唐見崎では畑の中を周回しておく。畑の中に松の立ち枯れが目立つ。或いは虫害かもしれない。

 GPSにポイントを入れておいたにも拘わらず、前方漁港に面して密集した集落で、民家の中に建つ宿を探すのに少し手間取った。17:00、前方郷「民宿愛宕」着。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷 民宿愛宕前から前方漁港を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 荷物を降ろして一服後、津和崎丸に電話してみると、明日の朝は全く問題無く来て下さるとのことだった。やった!これで明日は9:00笛吹港発となった。佐世保市営船より50分ほど到着が早くなるだけではあるが、いやいやこれは大変大きい。
 ついでに津和崎着が早まると尚有り難い。既にルートラボでチェックし、今日太古から眺めた中通島西岸の林道を経由するコースが、かなり現実的な距離と獲得標高差で成立することがわかっている。そのためにも全体を前倒しして、宇久島より中通島で時間を見ておく方がいい。直前になってしまったが、とにかく津和崎丸には午後の時間変更のお願いをしておく。

 夕食の魚は味付けが家庭料理風の薄味で大変美味しい。ここまでの旅館味に比べ、口がヒリヒリせずに一杯食べられる。しかも刺身が全体的に一回り大きくて新鮮だ。さすがは小値賀島だ。

■■■2019/6/2 ■■■http://takachi.no-ip.com/ ■■■高地 大輔  RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

記 2019/

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Last Update 2019/6/30
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