九鬼→(県道574)九鬼港 1km RIDE WITH GPS
夜中ずっと聞こえていたかなり激しい雨は、早朝にはしとしとと普通の雨に変わっていた。5時に起きて、一応外を伺ってみる。しかし、案の状山裾からすぐ上がとっぷり濃厚な雲に浸かっている。見るからにダメな天気である。
どうせもう朝食はお願いしているし、バスは9時だ。即2度寝とする。
朝食を食べて、9時のバスに間に合うように外に出てみると、周囲は大分明るくなっていた。山裾の雲もあらかた消えている。しかし、昨夜あの大雨の音を聞いて、今日は1日雨の予報を見ていれば、山奥てんこもりの予定コースに向かう気は全く無い。
この田辺行バスには、以前このペンションとおせんぼから乗ったことがある。2006年、やはり雨運休で紀伊田辺へ向かったのだ。時刻は1本前の7時台だったような気がする。などと思い出しながら、やってきたバスに宿の前で合図して乗車。バスには先に2人の自転車乗りが乗車していた。路線バスに自転車3台は私的限界線だ。幸いこのバスでは、その後自転車が乗車してくることは無かった。
国道425沿いから虎ヶ峰トンネルを越え、しばらく稜線の空中を逡巡してから、秋津川の谷間へ下ってゆく。まさに昨日一部を通った県道29である。本来なかなかの絶景が展開するのだと思うが、途中は結構雨が降っていた。やはり走らないで良かった。
秋津川の谷間からは、昨日思い出した奇岩峡を通過する。切り立った岩場に囲まれ、もの凄く大きな岩がごろごろする狭い谷底を心配になるぐらいどんどん下り、いきなり田辺の町外れに到着のは記憶通り。このいきなり感覚は、他の場所ではあまり見たことが無い。強いて言えば、三好から広島へ向かう高速バスに乗ったとき、広島にいきなり到着した感覚が近かったかもしれない。
紀伊田辺着は10時頃だった。町中に着くと雨はしとしと降りに変わっていたが、やはり今日は走らなくて良かったと思うのには十分だ。
紀伊田辺駅にも確か10年ぐらい来ていないかもしれない。エキナカという言葉が東日本では一般的になっている2015年、ここ紀伊田辺駅でも何とこぢんまりした飲食系が以前より充実してるのには少々驚いた。軽食喫茶などはなかなか魅力的でもある。しかし今日は宿で朝食済みだ。
列車の時間までまだ1時間もある。手持ちぶさたでコーヒーを飲んだ後、町中の店で、疲労回復のクエン酸補給で美味しい梅干しを買ってはみたものの、家に帰れば同じ店の通販の梅干しが冷蔵庫にたっぷりある。
11:15、くろしお3号で紀伊田辺発。気が付くと、何と一昨日新大阪から乗車してきた列車である。今日は周参見で乗車せず、この列車で終点の新宮まで行き、各停に乗り換えるのだ。妙な経緯で、足掛け3日でくろしお3号を終点まで乗れたことになるのであった。
車両は国鉄在来線最速車両、自然振子式アルミ車体の381系。独特の断面、低重心化でいかにも速そうなイメージを通してきたこの車両も、いよいよ2016年に全面的に紀勢本線から撤退するらしい。がたぴしぎーぎーと哀愁漂う走行音を聞いていると、この車両がデビューしてすぐ、紀勢本線に撮影に来たことも思い出した。あれは確か高校1年の3月、天王寺から夜行各停はやたまで新宮に着いて、すぐ新宮から歩き始めたんだっけ。
地図で新宮付近を確認すると、それっぽい浜辺が見つかり、新宮到着直前でその記憶を確認することができた。あれから30年以上経ってしまったんだとも思った。381系が引退するぐらいだしな。
新宮からは非電化区間となる。路線も車両もここでJR西日本からJR東海となり、乗り換え先の紀伊長島行普通列車はJR東海色の気動車だ。そういえば以前尾鷲から熊野市へ輪行したときも、JR東海色の気動車だったことを思い出す。
13:22、新宮を発車すると、頭上から架線が無くなるとともに、細い鉄橋で熊野川の河口を渡ってゆくので、何か開放感がひとしおだ。車窓風景としては熊野市まではしばらく平地が続く。平地を淡々と走るのかと思うと、新宮の次の鵜殿で交換待ちの停車時間がやたらと長い。平地だけあって天気が安定するのか、雨は止んでいて、ややけだるい時間が車窓風景と共に過ぎていった。
熊野市から先はいよいよ輪行区間のハイライト、長大トンネル連続とその合間の美しくダイナミックな海岸を、明日の予習で眺める区間だ。白い砂浜の風景が楽しみな新鹿では、「日本一美しい海水浴場」の看板が登場。やはりそういうポジションの場所なのだ、そうだろう、あれだけステキな砂浜はそうそう無い。
14:28、九鬼到着。辺りの山々は小雨に煙っていたが、輪行する間に殆ど雨は上がった。空気中にはまだ少し水滴が感じられたが、もう今日の宿「はりまや旅館」へ向かうことにした。こうなったら早く宿に入って、もう明るい内から酒でも飲もう。
▼動画36秒 九鬼港をてれてれ流す
宿に着いたはいいが、人が出てこない。近所に聞き込み調査までして確認してみると、宿自体はここで間違い無い。まだ15時前、到着が早すぎるのかもしれないようだ。ちょうど雨が止んだところで、宿の周辺でうろうろしていると、やがて伊勢海老の入ったバケツを下げてご主人が向こうから歩いてきた。
今日は釣り客の団体が同宿で、夕食時には広い2階の向こうの方ではかなりのどんちゃん騒ぎが始まった。しかしこちらももうすっかりビールが回っている。寝てしまえ、まだ19時過ぎで明るいが。
記 2016/5/21