西達布→(町道老節布基線)老節布→(道道253)麓郷
(以上#15-1)
(以下#15-2)
→(道道253)布礼別→(町道ベベルイ基線)本幸
(以上#15-2)
(以下#15-3)
→(町道ベベルイ基線)東中→(道道298・253)富良野
46km
ルートラボ
5時過ぎ。布団を抜け出して窓の外をうかがっても、まだ外は薄暗い。そして何だか肌寒く、濃霧が漂っているようだ。最低限レッグウォーマーは必要だろう。
今日は行程最終日。自転車行程、空港までの移動、飛行機を全部こなして、明日からまた出勤だ。
自転車行程としては、麓郷、ベベルイ基線を経由して富良野まで。毎度の富良野周辺私的名所巡りである。帰りの飛行機が14:05千歳空港発なので、10:00発の根室本線に乗る必要があり、9時半ぐらいには富良野に着きたい。過去訪問を参考に考えると、6時に出れば余裕を持って行動できる。幸い天気は晴れ予報、降水確率0%。目論見通りの最高のお膳立てが仕上がっている。あとは全体の時間が3時間半しか無いので、バランスの良い進行を心がけつつ、濃厚なコース上に次々に現れる絶景を楽しんでいけばいい。心配事など何も無い。夏にはっきりしない天気に毎日振り回されていたのがまるで嘘のようであり、何だか物足りなくすらある。
6:00、西達布ダラムサラー発。
まだ指先が冷えるほど気温は低く、視界200m程の結構な霧が畑と丘を包んでいる。予報は間違い無く晴れであり、早くも空には青いニュアンスが伺える。晴天の放射冷却現象による霧なら、もう少し陽が出たら一気にどこかに行ってしまうだろう。今のところは、丘に拡がる老節布の畑、丘が眺められないのがやや残念だ。しかし視界ゼロというわけでもなく、霧に包まれた西達布から老節布への私的名所は、それはそれで普段と違う趣で見応えがある。
ただ気温は低い。老節布の農協の交差点で手を温め、缶コーヒーで暖を採っていると、トラックが通り過ぎていった。今日も1日の暮らしが始まっているのだ。
平沢へ登ると、俄然霧が晴れ始めた。丘の頂部近くだけ霧が晴れ始めているようだった。
そして毎度ワンパターンの定点アングルで写真を撮っている間、丘の先、集落側の霧がどんどん晴れてゆき、辺りが朝日に照らされ始めた。見下ろす集落から向こうの森には、まだ霧の濃淡が残っている。一方手前の畑は日差しに照らされて、すっかり爽やかな朝の空気が漂っている。
平沢から麓郷へは60mちょいの峠を越える。
毎回麓郷から登ると標高差130m、10時過ぎのかんかん照りの暑さが堪えるこの峠も、こちらから登りは少なく、今日は空気が森の冷気でひんやりしている。朝日と共に登りで身体が温まって有り難いぐらいだ。
7:10、麓郷着。見覚えがある麓郷の交差点に、全く普段の賑わいが無い。まだ7時なので当たり前だ。老節布、平沢と、これだけしょっちゅう脚を停めているというのに7時に麓郷に着けるという、西達布発の威力がまざまざと現れている。辺りに人気が全く無くても、麓郷に来て条件反射的にAコープでトウキビか何か食べていきたい気分になってしまっているのが、我ながら可笑しい。もちろんどうしようも無く、気持ちの行き場は無い。ここはAコープでコーヒーだけ飲んで出発することにした。今回は今回の旅があるのだ。
Aコープに寄っているほんの少しの間に、地表近くにまだ多少漂っていた雲は、更に消えつつあった。
間近に大麓山が大きく姿を現し、光一杯の青空の中で青いシルエットになっている。きりっと冷え込んだ、秋晴れの朝だ。
布礼別からはベベルイ基線へ。標高差80mの登り開始だ。とはいえ、こんなもんでもう本日最後の纏まった登りである。
緩斜面に拡がる畑の中の道では、視覚的には標高差がほとんど感じられない。地図で標高差80mもあるとはわかっていても、開けた風景の中で何だか身体全体が妙に重いのは違和感がある。
今日は余裕の行程で、風景を見落とさず身体を冷やさず、正面の大麓山、富良野岳を眺めて進んでいけばいいのだ。
どちらかと言えば逆方向から下ることが多いこの道、こんなにまじまじと山々を眺めて登れることもあまり無かったように思う。
とりあえず登りきって北上区間に入ってしまえば、ほぼ等高線沿いに一直線の道が続くだけ。この素敵な道でここまでの登りに比べて快調すぎるペースが勿体無い。
日差しが登って明るい高いカラマツの森から、西側の下手には東富丘の畑がよく見下ろせる。形のいい前富良野岳も、いよいよ間近に全貌を現している。
8:00、本幸着。
雲一つない真っ青な空、澄んだ朝の空気。初めての秋ツーリングで、ほぼベストに近いだろう状態で本幸を訪れることができている。つくづく6時に出発して良かった。そして、私的定位置の道路端表示ポールが、今年は見事に復活していた。自転車入りの写真を撮る時自転車を立てかけるのに何かと都合が良く、毎回使っていたのに、一昨年45に折れ曲がり、去年は撤去されていたのだ。多分奔落の目的、積雪時の道路幅表示のために必要とされ、復元されたのだろうとは思う。またこの場所で2年ぶりの旧知に会えたような気がしていた。
それにしても本幸で、いや、麓郷から本幸までこれだけ晴れまくったのは初めてだ。東側の形の良い旭岳、前富良野岳、奥の富良野岳もよく見える。
そし北側に見下ろす丘の更に向こう、富良野盆地が見えているのにも気が付いた。毎回眺めているのかもしれないが、この場所でこれから下る富良野盆地を意識したのは、今回が初めてのような気がする。
天気が良くて空気が澄んでいるためか、或いはいつも富良野盆地から登ってきてこの風景を眺めることが多いからかもしれない。
あまりに眺めがいいので、もう少し下手の道にも立ち寄ってから、8:20、本幸発。
あとはもう東中に下ってしまうだけだ。
富良野盆地に飛び込むような下りの眺めをたっぷり楽しみ、一気に東中に着陸。
東中から先は、洞野盆地東側山裾の1本道。静かな田舎道だが、もう本当に普通に富良野盆地の幹線生活道である。
のんびりてれてれ流していると、1990年台のいつか、いや、1986年の初北海道ツーリングでこの道を通っているかもしれない気がしてきたが、もはやそんなことは帰って調べればいい。
最後に富良野市街のセイコーマートで、Hotchefに何も無かったのが残念だった。これから普通列車で滝川に向かうというのに。
9:15、富良野着。いい5日間だった。ここ何年か、夏に充たされなかったものが完全に解消されたように思う。
記 2016/3/6
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