十文字小屋→四里観音→三里観音→二里観音
(以下#2-2)
→一里観音→栃本
→(林道・国道140)道の駅大滝温泉
31.2km
RIDE WITH GPS
少し前から起きちゃあいたのですが、朝食は5時半〜とのことだったので、5:25頃おもむろに起き出します。もう我々以外の皆さんはあらかた出発していたようで、そういえば夜明け前から、壁の向こうでは元気な声が聞こえていました。
5:30、時刻通りの朝食メンバーは5人。うち2名は朝食後素速く出発されました。その段階で、外にテントを張られていた方も既に跡形もありません。明るくなってからの出発は、結局我々だけのようでした。
朝食中は作戦会議。今日は栃本までの長丁場ですが、大まかに二里観音まではアップダウン込みで担ぎ主体の山道、二里観音からは大まかに乗って下れるとのことで、「二里観音でお昼にしましょう」と須藤さん。
外気がかなり寒いのもあり、何となく去りがたい気もしつつ、用を足したり少々うだうだして過ごします。この出発前の時間が毎回何とも幸せで、できれば1日じゅうこうしていたいと思うのも毎度の事。現実にはそういう訳にはいきません。
結局出発は6:45。でもこののんびり出発は、この日一日の3人の気持ちの安定につながったと思います。
出発後は少しだけ登り。更にその後、段差や岩がやや多めで、無理に乗るより担いでしまえ、というぐらいの苔生す道が、原生林に続きます。
今日の行程、全体としては栃本への下りだと思っている出発直後。何だ登るのかよ、とかしょっぱなからあまり乗れないなあ、というちょっとしんどい気持ちがあります(その後こんな甘いもんじゃないことを思い知らされます)。しかしその後しばらく続く静かな道は、足下は安定しているし、緑色の木漏れ日に包まれて木々の間に奥秩父の山々と青空を見渡す、とても印象的な道でした。今にしてみれば長い長い山道に相応しい、ドラマチックなイントロだったと思います。
7:15、道が下り始めて柳小屋分岐に到着。分岐と言いつつそちら方面はテープが張られてふさがれていました。
ここで0℃対策の重フリースをザックにしまいます。気温が低いせいか、汗は出ているものの身体の放熱と気温のバランスが良好なようで、水飲みの私でも未だに水を飲もうという気にならないのは大変に有り難いです。この分なら、1.5lのペットボトルでも、多分1日水は保つでしょう。
日なたでは、次第に気温が上がり始めていました。四里観音避難小屋では、思い切って保温インナーを全てザックに仕舞います。ここで昨夜我々の小屋の外でテントを張られていた方々を追い越しました。「ゆっくりなんですよ我々〜」と仰っていたその方達は、その後ずっと我々と付かず離れずで、我々が道に悩んでいると姿は見えども声が聞こえてきたり、常に道しるべになって下さったのでした。
この辺り、事前にルートラボの断面で眺めていたほど道は平坦ではなく、実際には細かいアップダウンを繰り返して尾根を辿っていきます。少しは乗れるかもしれないと淡く期待していたのですが、ほんとに部分的に2〜30m乗れる箇所が時々あるだけで、そのすぐ先に降りなければならないぐらいの段差があり、つい担ぎを継続します。
しかし、尾根の左右を行き来する道から、森の外に拡がる山々と谷間が次々に変わってゆくのを見ることができます。木漏れ日は明るく空は真っ青、気持ちは全く厭きません。
8:35頃、大山の下辺り。須藤さんが「コースの向きがちょっと違うんじゃないか」ということで、3人集まって協議が始まりました。
現象としては、道がかなり大きく下り始めていて、しかもこのコース全体を通して北西か西へ向かっているはずなのに、我々が向かっているのはどうも南東方向。GPSの経路を見ても、確かにもう5分ぐらい事前に入力しておいたコースから外れています。
3人で地図と現在の標高、その後のコースなど少し相談したのですが、結論としてはとしさんがいつも保ってきてくれる昭文社山と高原地図(今日は25番)に描かれている道の通りだという話になりました。結局その先で道は我々の読み通りに山腹を巻き、程なく「→栃本」の標識も登場。
順当に道を進んで順当に行方に辿り着いただけで、GPSも地形図も過信できないことを再確認できただけと言えばそれまでなのですが、何より同行のお二人の頼もしさを感じさせてくれる一幕でした。というより、この3者協議、その後も何度かの難所で開催され、その度にお二人の心強さでその後の難所も乗り切れたという気が、今でもしています。
道が妙にはっきりし始めました。外縁には石垣が組まれ、山側にも崩落土砂の切れ間にところどころ法面が登場。道幅も次第に拡がって、これがウワサの林道跡か、と気付きました。
9:00、奥秩父林道分岐着。奥秩父林道は、いつも中津川林道の下りで、林道には珍しくこちらの道をオーバークロスして合流する印象的な道です。現在は部分的に崩落中とも、歩いたら何とか越えられるとも聞きますが、奥秩父林道はこの長い山道唯一のエスケープルート。こんなに早く登場してしまったら、エスケープルートとしては道の現状がどうあれあまり実用的とは言えません。
9:10、奥秩父林道分岐発。
三里観音へも、予想に反して部分的に尾根道から外れた急下りがあったものの、それ以外はまあ順当に推移。
9:30、三里観音通過。
ここから次の二里観音までいよいよ本日の最難所区間とは聞いていました。一方、ここまではまあ比較的順調な行程で予定通りとのこと。正直のんびり落ち着いて通過すれば、山地図タイムからそう遅れることは無いだろうと思っていました。
三里観音から赤沢山までは、ここまでの区間と同様、全体としてはあまり標高を変えずに、狭いものの比較的安定した、細かいアップダウンと担ぎを伴う道が続きます。
明るい尾根道はぽかぽかで、見渡す山々はくっきりと紅葉鮮やか。その上に拡がる空は真っ青で、秋の山サイってこんなにいいんだね〜、等と思いつつ、厄介なのはこの先の行程量だけという状態が続きます。まあこれならちょっと大変で距離が長いぐらいの、癒やし系コースと言えます。
道は次第に赤沢山エリアに入ります。
北側斜面に移って、道が急に細くなりました。足下は根っこやら岩でやや不安定、僅かな凹みや枝の足がかりを確かめつつ、なるべく小幅で(でも次のステップは選べない)時にはえいっと一気に、慎重に進む小区間が断続します。斜面自体もかなり切り立っていて、足を滑らせるとしばらく転がり落ちそう。自転車を担ぎ直し、身体全体のバランスに気を付けて、落ち着いて急な登り下りをそろっと通過します。
体力もさることながら気疲れした区間だったというのが、下界での我々の一致した意見でした。しかしそれでも木々の向こうには、奥秩父の山々と紅葉と青空が拡がっていて、びびり気味の気持ちを吹き飛ばしてくれるのでした。
道が尾根に戻ってからは、かなり大きな倒木が続きます。最初のうちは、単に幹の胴回りが大きいものの真ん中に切り欠きが大きく入っていて、そこをまたいで通過すればいいだけでした。しかしそのうち、身体全体を使って幹を乗り越えないといけないような大木が登場。
更に道が不明瞭気味になってからは、細かい枝や葉がついたままの倒木が増えました。そういう倒木を乗り越える時には、行く手の方向を確認→茂みの向こうの道(目印リボン)を確認→枝1本1本をかわしながら自転車とともに幹を越え、茂みを越えたら身体中葉っぱだらけに。
極めつけの難所は、高さ約2.5mのがけ。これだけなら普通に上下受け渡しすればいいのですが、何とそのがけがかなり切り立った尾根上で木すら生えていなくて、下側は大きく切れ込んで数百m真っ逆さま。そこだけほとんど空中と言って過言ではないのです。
見た途端、ここが事前に聞いていた、「2人以上いたらロープは要らない場所が1箇所ある」その場所だとわかりました。普通こういう場所は谷底とか山肌とかそういう場所である場合が多いような気がしますが、まさかこんなにヤバイ場所にあるとは。帰ってからWebを見直すと、去年か一昨年の記録では、この岩場に鎖が設けてありました。今年はその鎖が無かったということになります。
結局としさんが先行して登って下さって、上下2人がかりで自転車、荷物受け渡しによりこの場所を無事こえることができましたが、「一人だとかなり厳しいねー」というのが我々の一致した見解でした。
しかし逆に言えば、これでもう受け渡し区間は無いということ。
実際にはその後もかなり質の悪い倒木は登場し、「そろそろいい加減二里観音に着いてもいい頃なんですけどねー」という話を聞き始めるようになってきました。山地図のコースタイム1時間半の所、そろそろ2時間を越えたようでした。まあこういうコースだと、自転車が大きくハンデになるのは当然ではあります。
記 2014/10/27