2009/6/13 嶺岡中央林道ポタ 上総湊→安房勝山 #1

　8:27上総湊着、すでに自転車組み立て完了のNUTSさんと合流、すぐに島犬人さんととし@鎌倉さんが到着。8:35、上総湊発。

　駅近くのコンビニで物資補給後、湊川河口から売津へ、更に相川の谷間へ。ここまではいつもとまあ雰囲気は同じ。

　相川の谷間はそう広くもなく、こぢんまりした空間に田んぼが拡がります。その田んぼ拡がる田園風景が、稲、畑の作物、茂みや森と、生い茂る緑に覆い尽くされているのでした。冬〜早春の訪問と今回の最大の違いをここで実感しました。

　向野から谷は急に狭くなり、海岸からいくらもないのにとても山深い雰囲気になります。この辺りはもうところどころ緑のトンネル状態。

　9:25、例によって例のごとく高塚から保田見林道へ。あまりといえばあまりのワンパターンですが、良い道なので仕方ありません。

　いつもの保田見林道は、前回1月より更に舗装が荒れているみたいだったり砂利が増えていたり。

　集落から谷間に入ったところでは、いきなり猿が2頭道を横切ったりもします。

　素掘りトンネルなどは中に岩が落ちていたり、過疎による風化がますます進行中。

　ただ、激坂を登り切って斜度がとりあえず一度緩くなる釜ノ台では、生い茂る下草を苅っている途中。

　猪の罠の餌は新しめだったりして、継続して使われちゃあいるようです。

　釜ノ台、保田見へ、集落から森にジェットコースターみたいな細道激アップダウンが続きます。

　標高200mぐらいしかない尾根道は、むしろ低山の尾根道だからなのか、ジャングルの獣道みたいなワイルドな雰囲気。植物が上から覆い被さるというより、左右前後からも周り全体を包んでいる印象。

　植物の他にも何か獣や鳥や小動物、昆虫などが潜んでいる雰囲気一杯の山中を、しずしずと進んでいく一行なのでした。

　森の中をきりきり登っては下り登っては下り、最後は内台から一気にきりもみ急降下。

　コンクリート舗装のがたがた道をハンドルで押さえつけて下りきると、山中で唐突に県道182に合流。

　横根峠をひょいと越え、水仙の里、大崩から3つ丘を越える里山細道アップダウンへ。

　こっちもこぢんまりとした空間ののどかで静かな雰囲気が素晴らしく、冬〜早春の南房総の私的定番コースです。

　その全体的にいつも訪れるコースが、今回は生い茂る樹木、草花、畑に田んぼで表情が完全に一変。

　やはり道を覆い尽くすような緑と咲き乱れる草花、若葉と花の香りが漂い蝶や夏の虫が飛び交う、何というか静かだけど賑やかな、濃いとしか言いようが無い空間がそこにありました。

　脇役が一杯増えて、こぢんまりと、しかし彫りの深い丘陵の風景がますます賑やかに鮮やかに、感動的に、次々に現れるのでした。もっと早くこの季節に来るべきだった、とつくづく思いました。

　里には青々と背を伸ばし始めた稲、山間の茂みには満開のホタルブクロを眺めながら、水ノ台、畑、そして法明へ。

　3つめのピークで見下ろす谷間へは、もう鴨川市郊外へとまっしぐらに下ってゆきます。

　ここも毎年の年間最急下りぐらいの激コンクリート舗装。自転車を押さえつけるような気分で(できないが)、必死に速度を抑えて下ります。

　下りきって県道88を少し経由、平塚本郷で小休止後、いよいよ大山千枚田へ。

　こちらの道も今まで冬にしか来たことが無く、この季節の賑やかさがとてもウレシク新鮮です。

　11:50、大山千枚田着。すり鉢状の見下ろす谷間に、綺麗に整備された棚田がぐるっと拡がります。あぜ道、行儀良く並んだ稲、そして周りの山々。

　谷間の上だからか山の森から吹いてくるのか、棚田に水が張られているせいか、吹いてくる風が何とも涼しく、首を回すと少しずつ変わる空間感覚のおもしろさとともに、しばらく立ち尽くす一同でした。

　オーナー制度を導入した観光棚田として有名なこの大山千枚田。上り調子の季節だけあってまあそこそこいる観光客は比較的静かで、何かこの爽やかな風と緑の景色をぶち壊すような施設や音も無く、何とも良い気分。

　12:05、大山千枚田発。すぐ谷間へ下ってしまわず、前から地図で見るたび興味があった大田代〜元名の黒線細道へ向かいます。

　大田代の集落で細道分岐を慎重に選び、下り始めます。

　ここまでの既知の道も新たな夏の表情が良かったのですが、今回は初めて通ったこの道がとても印象に残りました。

　山間集落の上手を、あぜ道やらダブルトラック、切れるか切れないかの紙一重でしぶとくつながっていく静かな細道。

　杉、田んぼ、茂み、広葉樹と様々な色の緑に染まってしまいそうでした。

　里山の集落群から鴨川市平野部の細野へ下りきる途中では｢嶺岡山の湧水｣を発見。この時点で12時半過ぎ、そろそろみんなお腹ぺこぺこになっています。少し協議の結果、あの辺に何かあったぞ、そうだそうだということで、何か食べられそうなみねおかいきいき館へ向かうことに。

　さっきから空の雲は消え、靄っぽくはありましたが、青空の下の行程に。

　田んぼが拡がった鴨川郊外では、田植えから1ヶ月強だというのにすっかり背の伸びた稲の上を風が波を立てて横切る、夏そのものの景色がありました。

　日差しも出てきて気温は上がりましたが、森から吹いてくる風はあくまで涼しく快適そのもの。梅雨の晴れ間ならではのお天気だったかもしれません。

　宮山からはしばし息を止める気分で国道410へ。

　途中で道幅がぐっと細くなる丘越えは、国道としては決して悪くない雰囲気ですが、いかんせんここまでの道が良すぎでした。

　13:20、みねおかいきいき館到着。
　けっこう小さめのお店に入ってみると、ご飯物3種類にうどん&そばと品数も少なめ。限定？五目ご飯定食を頼むと、案の定｢今日は終わっちゃいました〜｣とのこと。一瞬外したか、という雰囲気が漂いましたが、とにかく腹の減った我々にはこの期に及んで他を探すチョイスはあり得ません。
　で、｢オイシイですよ！｣と他のお客さんに勧められるままじねんじょ丼を頼んだんですが…。

　これが空腹だった以上に大当たり。粘度も香りもたっぷりの自然薯は、この山里ならではの素朴で豊かな味わい。出し汁、そぼろ肉、ご飯に自然薯という斬新(？)な構成に葱と山葵が香り高く、ぺろっと一気に食べてしまいました。オススメです。
　また、食後に食べたソフトクリームは、ストレートで濃厚な牛乳の味で冷たさにも甘さにも香りにも逃げない超本格派。個人的に過去ベスト3に入ると思います。さすが｢千葉県酪農のさと｣など併設の食堂、南房総市が｢日本酪農発祥の地｣というだけのことはあります。

　食べ終わってみると今日ももう14時過ぎ。どうも鴨川折り返しに拘るより、ここで折り返してオフタイトルの嶺岡中央林道へ向かう方が良さそうです。というより、｢嶺岡中央林道ポタ｣という名前なのに、今日はまだ嶺岡中央林道を通っていないのでした。
　というわけで、ここから折り返し、国道410を戻ってすぐの林道嶺岡中央1号線分岐から嶺岡中央林道へ突入することになりました。14:15、みねおかいきいき館出発。

　まず稜線まで登りが続きます。

　低山ではありますが、それでも谷間に面しているので、木々の間から時々辺りの山を見渡す風景が拡がります。

　自衛隊嶺岡山基地入り口の少し先で登りが終了。林道嶺岡中央1号線はしばらく尾根道となります。

　尾根道ではあるものの、辺りは終始深い森であまり展望はありません。ひんやりと深い森の中には新緑の匂いが立ちこめ、ふわふわ飛び交う様々なチョウ、昆虫類も加わって、深山の雰囲気。

　道の真上まで完全に覆い被さって生い茂った木々の中は薄暗く、いや、濃い緑の光というか、その中に木漏れ日がきらきらまぶしく光り、緑のトンネルを作ってくれていたのでした。

　今までの他の道にも増して、その表情は3月に訪れたときとがらっと変わっていました。3月に通ったときも気持ちの良い静かな緑のトンネルが続いていたこの道でしたが、何だか緑の、生命の濃度が全然違う。こんなに違うとは。

　しかし、唐突に下りが始まります。

　と思ったら、きりきりっとした下りがしばらく続きます。

　地図で道の形と現在位置を追いながら更に下り続け、15:05、さっきと同様唐突に白石峠到着。ここで林道嶺岡中央1号線が終了。

　市道に乗り換えて更に花表裏まで下り、集落手前の分岐で細道へ。ここから林道嶺岡中央4号線の開始です。

　集落から再び森へ、短いアップダウンの後、午前中大山千枚田の前に通った県道88の先を経由、県道184に乗り換え、狙い定めて林道嶺岡中央3号線へ。

　登り返しはかなり厳しめですが、そう長い登りじゃありません。登り切っても標高は200m。ここから先は、下り基調で再び森のトンネルが始まります。

　稜線の道なのにほとんど視界が開けないのが何とも不思議な感覚で、薄暗い緑の光の中は高いところにいるのか森の緑の下なのかわからなくなります。

　薄暗い緑の光は薄暗めですが、その隙間の光の中では南国種のチョウが舞い、森の中では山の鳥がとても賑やか。意外に天国というのはこんなところなのかもしれない、等とも思わせられます。

　道は次第にどんどん下り始めます。

　森が開けた途中の分岐では、荒々しく切り立った山肌が表れます。そっち方面もなかなか楽しそうではありますが、今日のところは一応最後まで嶺岡中央林道を進むことに。

　最後の登り返しの手前では、突如目の前に岩井海岸の景色が拡がります。地図でずっと確認はしていたのでそろそろ安房勝山へ到着と思っていたのですが、もう終着近く、落ち着いた気持ちで夕方のオレンジ色の光の景色を眺められるのが何ともありがたいことです。

　最後は平地に急降下。海岸近くの平地はやや埃っぽく数が強く、夕方の赤い逆光が何となくまぶしく、駅前まで町中を何となく無意識で県道と国道でつなぎ、16:20、安房勝山着。

　天気と房総の良い道に恵まれ、初夏のいいツーリングになりました。幹事の見込みの甘さで前半のボリュームがやや膨張気味、嶺岡中央林道2号線と鴨川到達は未済になってしまいましたが、大まかに前半は北側里山&農村めぐり、食事を挟んで午後は嶺岡中央林道1･3･4号訪問と、コーズのメリハリはそう悪くなかったでしょ？

　始めて通る道が当たる確率が非常に高いのが、房総のいいところでもあります。今後も四季折々、訪れたいと思いました。

記 2009/6/16