(以上#1) |
|
大野峠を過ぎるともうそれほど登りは厳しくない。
雑木林の丸山林道をするするっと進み、春霞の武甲山と秩父盆地を眺め、県民の森駐車場を過ぎると、おもむろに下りが始まった。
雑木林から杉林へ、更にその先の開けたつづら折れをどんどん下る。この丸山林道はここ何年か登りに使うことが多い道だが、やはり登っていて厳しさを感じる部分は下っても急である。
あずまやを過ぎて木の子茶屋の看板から芦ヶ久保方面へ。この道がまたかなり急下りである。以前一度昼食を食べたことがある木の子茶屋、今日は昼食に良いタイミングだが、そのまま通過。また美味しい料理を食べに来よう。
すぐに日向山の果物畑が開ける。芦ヶ久保側はこんなに上の方まで集落に果物畑が続いているのだ。日差しの暖かな集落の道はなかなかほのぼのとした雰囲気だ。ただしこの急坂、見た目の通り、登りはかなり堪えた記憶がある。
12:05、芦ヶ久保着。国道299へ出てそのまま再び登り開始。斜度はだらだら、意外にペースが上がらない国道登りだ。長らく訪れていなかったのと、事前に地図を真面目に見ていなかったせいで、正丸トンネル手前の県道53分岐まで、思いがけない距離がある。まあしばらく我慢。
県道53もしばらくだらだら登りである。狭い谷間に断続する集落に、どういうわけか旅先各地の道を思い出す。改めて奥武蔵にはツーリングが楽しい道が多いと思う。
両側の杉が高くなり、斜度が急になって杉林に突入。間もなく少年自然の家の駐車場の向こうで、県道53と正丸峠への道の分岐が現れた。
ここまでの県道53と正丸峠への道は、正丸トンネル開通まで国道299だった。分岐を正丸峠方面へ曲がった峠区間でも、古びたコンクリート擁壁はいかにも旧国道らしい。
12:50、正丸峠着。峠の茶店でちょっと休んでいきたいような気もする。でも、この先の虚空蔵峠はなかなかしつこい登りのはず、ここは足を進めるべきだ。
小学6年の夏、友人2人と正丸峠へツーリングに来た。初めて飯能から先へ進んだツーリングで、今は大型車がひっきりなしに高速で通る国道299は、何と森の中を高麗川とともに遡るダートの細道だった。真夏の陽差しと涼しい木陰と埃っぽい道は、未だに忘れられない。吾野駅前なども確かダート。正丸から先は舗装が復活したが、運動神経学年トップクラスの友人二人はどんどん先に登っていき、私は峠区間のほぼ全てをとぼとぼと押しで通した。
その正丸峠を下っていると、かつての記憶はやはり蘇ってくる。友人が待っていてくれた見晴らしのいい場所など、意外な程鮮明に憶えているものだ。
国道299手前で虚空蔵峠へ、再び登り返し開始。そろそろ疲れているのか、さっきの正丸峠の登りとは段違いの引力を感じる。いや、見た感じにも実際にもなかなか厳しい坂だ。
のろのろよたよたと狭い谷間を遡り、苅場坂の集落を過ぎると、高麗川源流の碑のある沢が登場。見上げると、湧き水らしい塩ビパイプが沢の中に出ている。そろそろボトルの水が無くなってきているのを思いだし、いや、それを口実にちょっと立ち寄ることにする。
切り立った山肌に続く登りの向こう、道が稜線をくるっと回り込む辺りにあずまやが見えた。確かそこが虚空蔵峠だ。下の集落が苅場坂、この道を登り切ると苅場坂峠というシチュエーション。何も峠でなくてもいいのにと思ってしまうが、そんな稜線峠タイプの虚空蔵峠を過ぎると、斜度はかなり緩くなった。
その後はかなりあっけなく、13:55、苅場坂峠通過。よしよし、到着希望時刻に乗れている。このまま秩父高原牧場まで行ってしまえ。気持ちがだれたら、牧場のソフトクリームを思い出して乗り切ろう。
記 2006.4/1