2005.11/3
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(以上#2) |
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14:00、県境発。
尾瀬登山の沼山峠入口、御池まで標高差700m弱の登りとなる。峠名は付いていないが、どこをどう見ても峠ということで間違い無いだろう。
紅葉の谷間をだらだら遡る道の斜度は次第に増し、道が谷間から離陸し始めると、急斜面に張り付いてぐいぐい高度を上げてゆく。やはりどう見ても、谷間登りパターンの峠である。
紅葉の谷間から離陸すると、山の斜面ではブナの大木が見事だ。もみじや楓なども所々鮮やかに色付いていて、黄色や赤で賑やかな峠道が続く。
登り区間が残り1/3を切ると、標高が上がったのと周囲の木々が落葉したのとで、沼山峠から燧ヶ岳へ拡がった、密な常緑樹の山肌が見渡せるようになった。
地図上でももう御池までそう距離は無いが、騙しの峠や意外に厳しい登り返しもあり、道の線形を地図と較べながらのろのろと進む。
御池も間近になってぱらっときた水滴は、どうもそのまま収まらないようだ。いつの間にかさっきまでの雲が高い空とは違い、行く手の空気全体がどろんと濁っている。
15:20、御池通過。少しではあるが、何と1999年のペースを下回り始めた。この先もう遅れることはできないのに。
そういう状況で、道が本格的に下り始めるブナ平で、水滴はいよいよ雨になってきた。路面もしっとり、しかししっかりと濡れ始めている。やばい。この季節の標高1400m、この先標高差800mの連続下りで雨に降られるという状況はあまり考えたくない。おまけに時間が押し気味なのに、速度を抑え気味にして下らないといけないのだ。
更にその後、尾瀬から続く高原の縁から檜枝岐の谷間の一番奥へ一気に下るつづら折れ区間で、雨はいよいよ本降りになってきた。雨雲は谷間を伝ってこの斜面に突き当たっているらしく、眼下の谷間全体がどろんと灰色に不透明になっている。おまけに寒い。
まあしかし、これで今まで諦めきれなかった写真を撮らずに下ることができるのかもしれない。とにかく落ち着いて転ばないように下らないと。
キリンテの駐車場からいよいよ檜枝岐の谷間だ。もう後はだらだら下りを伊南まで一目散に下るだけだ。下れば何とか雨も止むかもしれない。
15:45、雨の檜枝岐を通過。何度か訪れたこの山奥の集落、今日は慌ただしい訪問である。雨のカラマツの谷間に突如現れた賑わいも、過ぎてしまえばまた雨のカラマツの道である。
檜枝岐の先から伊南まで、ちょっと珍しいぐらいの覆道連続区間となる。谷間の豪雪地帯のためか、狭い谷間の森の中に延々と覆道が続くのだ。せっかくの山間、いつもはコンクリートの構造物が恨めしいが、今日は雨に濡れずに済むのがとても有り難い。
覆道の中を下り続けると、期待通りに雨は次第に弱くなり、伊南手前では路面が乾きだした。良い傾向だ。このまま最後まで順調に行ってくれ。
16:15、内川通過。この季節の曇天、早くも周囲は薄暗くなり始めていた。
ここから会津高原すぐ手前の中山トンネルまで、また標高差400mの登りになる。でもこの時間にここまで来れた。先は見えた、と思った。あとは順調に進みさえすれば、会津高原の浅草快速最終には間に合うだろう。
でもまあ、本当は1時間以上早くここまで来るはずだったのだ。今日はまだまだ油断できない。
やや広めの谷間を遡る道は、農村や森の中を抜けてゆく。登り基調とはいえそれも僅か、静かな道を粛々と順調に進む。辺りは着実に少しづつ暗くなってきている。似た雰囲気の景色が続くこともあり、もうあまり写真を撮る気にもならない。
ふと気配を感じて後ろを振り向くと、ロードレーサーの方が迫っていた。お互い声を掛けて、しばらくお話ししながら一緒に進む。
このお陰でいつもだれ気味になるこの区間、退屈すること無く、一人ではちょっと続かなかっただろうペースで引っ張っていただくことができた。
そうこうする内に更に周囲は薄暗くなり、舘岩の中央部を過ぎた辺りから再び雨が降ってきた。次第に道の斜度も感じられてきた。こうなると私はペースを維持できないので、先に進んでいただいた。ちょうどそこでこのコース数少ないコンビニを発見。そこで、店の軒下で雨具を着込むことに。
ここで遂に日が暮れた。辺りが真っ暗になると共に、雨もいよいよ大雨になってしまった。
ちょっと今後の方針を検討する。お店の人に聞くと、会津高原まで15km程度とのこと。タクシーも6kmぐらいの所から呼べるようではある。しかし、大雨とはいえ、何とか走れそうではあった。ここまで来たら、あともう1時間。
それなら、行ってしまえ。遅れに遅れて最後はタク輪というのも、後々悔いが残るに違いない。なあに、最悪田島から会津若松へ出てしまえば、郡山から新幹線で何とかできるだろう。
17:15、再び出発。
道とその行く手はずっと雨と暗闇の中。多少のライトなんかでは全然役に立たない。しかし、車が多くもなく途切れもせず、その灯りで道幅とそのエリア分けは何となく把握できたのがとても有り難かった。
山間に進むに連れ、大雨は次第に激しくなってきた。まあ普通そういうものではある。それだけに、中山トンネル手前の覆道区間に入ったときは嬉しかった。確かこの覆道が2つか3つ続けばもう中山トンネルだ。
覆道区間の最後の方は、ここに来て足に堪える坂になった。これは記憶通り。でももうその坂も長くは続かず、覆道の平べったい天井から連続して中山トンネルの丸い断面に入ると、すぐに下り区間に入った。登りトンネルでないのがとても有り難い。
トンネルを出ると相変わらずの大雨だ。おまけに路面も暗い。以前に見たこの場所の、ダイナミックに開けた山腹を谷間へ下る風景を思い出した。ここで転んですっ飛ばされると、場合によっては谷底へ真っ逆様である。
冷え切っていい加減力の入らない指で頑張ってブレーキを握り、しばらくそろそろと下ると、記憶よりだいぶ早く下りが緩くなった。道路脇にも民家の灯りが登場、やったやった。
もうすぐのはずだと思っていると、その期待通りに見覚えのあるとんがり屋根が登場。ようやく会津高原に着いたのだ。
時計を見ると18:00ちょうど。結局1999年と同じタイムである。
びしょ濡れのまま階段を登って駅の待合室へ。待合室には何とストーブが炊かれていたが、思えばここは福島県の山間なのだ。11月上旬で夜にストーブは、特段珍しくない。それに、指がかじかんでしまい、特に左手の指はほとんど動いてくれない。また、汗と雨で濡れていた服で、もはやストーブがないといられないほど身体は冷えつつある。有り難くストーブに当たりながら輪行作業を進めることにした。
雨の暗闇の中、田島方面から現れた最終浅草行き東武快速は、時刻表通りに会津高原18:31発。乗ってしまえばもう安心、列車の中でようやく落ち着いて今日1日を思い返す。
見込みより1時間も遅い18時着、明らかな写真撮り過ぎを反省。今日の写真のデジカメ再生を始めたが、何と419枚も撮っていたことが判明。我ながらあきれた。
おまけにWCでふと鏡を見たら、顔が虫だらけ。ぎょっとした。そう言えばさっき小雨の中、アブラムシの群に突入したんだっけ。
記 2005.11/9