2005.11/3
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(以上#1) |
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枝折峠から奥只見湖畔まで標高差約300m、しばらく下りが続く。
山肌のくねくね道、長大シェッドが続き、枝折峠と同じく開けた道からは周囲の山がよく見えた。
その山々にも、下りきって北ノ又川を渡る辺りから見える上流の川原にも、何だか下界離れした厳しい清らかさが漂っていて、いよいよ奥只見湖側に降りてしまったことを感じさせる。
奥只見湖岸が始まってすぐ、11:10、銀山平発。やはり1999年と全く同じペースである。
ここへ来る度に楽しみにしている荒沢岳の威容を少し仰いで、そのまま通過。先へ進まないと。
いかにも人造湖らしく、奥只見湖岸には入り組んだくねくねの地形が続く。国道352もしばらくその地形通りに、白くふわっと開いたススキや紅葉の木々、湖岸の茂みを水平に進んで行く。
初めて訪れた1999年、まだこの湖岸の区間は、ほぼ100%コンクリート舗装だった。現在はアスファルト舗装に変わったこの道には、しかしながらまだ沢が路面上を流れるウォッシュボードがたくさんある。
枝折峠の途中で一時薄日が射すまでになった空模様は、再びどんより曇っていた。雲自体は高いが、もはやこの先しばらく天気は回復しそうにないと確信できるぐらいに濃い雲だ。
なかなか見渡せない湖面は、黒御影石みたいに真っ黒だ。これは前回の2002年、曇りだった時と同じである。晴れた日はかなり濃い紺色なのだが。
まあでも、その曇り空の下、紅葉は曇りなりの鮮やかさを見せてくれている。やはり11月初旬のこの辺りにしちゃまだまだのようではあるが。今年は紅葉が遅いのか。
真っ暗で照明の無いグミ沢トンネルを過ぎると、いよいよ湖岸区間も本番、3回のアップダウンが始まる。
まず標高差80mの中ノ岐越え、次に210mの恋ノ岐越え、そして最後は140mとかなりしつこいアップダウンだ。
しかも、どのアップダウンも、谷の奥から岬近くへ登り、くるっと折り返して次の谷の奥へ下るルート設定で、どう見ても大幅な短絡ルートには見えない。
しかし、見渡す奥只見湖の湖面、荒々しく険しい湖岸の山々、そして清らかながら厳しいテンションが漂う沢の奥へと入り込む折り返し部分。登っても下っても迫力たっぷりの風景が続くのだ。
まさにこの区間こそが、この奥只見湖外周道路の難所であり、魅力的な箇所なのである。
恋ノ岐越えからは次の登りのてっぺんが見下ろせた。今まで、この区間では一番奥が一番標高差があると思っていたが、実は真ん中の恋ノ岐越えが一番であることに気が付いた。
対岸の急斜面に張り付く、これから向かう道を見渡しながら、長い下りを下りきった所が恋ノ岐沢である。小さなコンクリート橋から眺める上流方面には、まるで余所者は簡単に入れないぞというような清らかな厳しいテンションが漂っている。奥只見湖畔でも毎回訪問が楽しみな場所だ。
今日の紅葉の恋ノ岐沢は、去年からの大雨続きのせいか、土砂や流木が多めのように思えた。
恋ノ岐沢を過ぎ、最後の登り返しを越えると、只見川が奥只見湖に流れ込む作場平の広がりや、切り立った山々に挟まれて奥へ奥へと続く奥只見湖、雪崩で岩肌ががりがり削られて異様な表情の湖岸の山々が見えた。
そのまま谷底へ急降下、13:20、作場平到着。
さあ、あまりゆっくりしていられない。完全に1999年と同じペースである。これから再び福島県境の砂子平まで約100m登り返しの後、御池までずっと登り返しなのだ。
GPSログをカシオペアに移し、そのまま出発。
只見川沿いの谷間には、森と少し開けた平場が断続する。そう広くない平場では、少しの畑に民家、尾瀬登山の山小屋が登場。いつも思うが、北海道の北見や十勝の山間のような雰囲気の道だ。
14時前だというのに、周囲はかなり薄暗い。空の雲が厚いのだ。雲はまだ高く、すぐに雨になる気遣いは無いが、これだけ暗くて営業中の山小屋の前を通ると、つい泊まって行きたくなってしまう。だめだだめだ、今日中に帰らないといけない。明日は出勤なのだ。18時に会津高原に着かないと。
13:50、県境着。
やはり徹底的に18時会津高原着の1999年のペースになってしまっている。が、これなら18時には会津高原に着けて18:31の浅草行き快速には間に合うはず。
只見川の橋の上から尾瀬方面を眺めるのが毎回楽しみである。それまで遡ってきた谷間よりやや開けた森が、尾瀬の際の山辺りまで続くそちら方面には、何とも清らかとしか言いようがない独特の雰囲気が漂っているのだ。
その清らかさは、さっきの恋ノ岐沢の厳しい雰囲気とは少し違う。頭上が開けているためか、ひたすら開放的な清らかさなのだ。ただ、浮き世離れしている点では一致している。思えばその浮き世離れした雰囲気は、枝折峠からこの先の檜枝岐まで続くのである。
記 2005.11/9