2005.7/24 夏沢峠 #2-2 |
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硫黄岳の表示は登山道脇のケルンに張り付けられているが、地図上の表示ではその登山道からちょっと脇に逸れた行き止まりの部分に「硫黄岳」とある。等高線で読める標高もそちらが少し高いようなので、そちらに足を向けてみた。
あまり人が足を向けていないそちらは、さっき見上げた急斜面の上端、エッジの効いた岩の上で、そう広くない道の表面には亀裂やごく小さな陥没が見られた。大きな岩に亀裂が入っているのである。
まあ今すぐ落ちるわけではなさそうが、普通に考えて十分に危険だ。
10分ぐらいでおっかなびっくりその岩上の最先端部にたどり着くと、いつの間にか空は雲に覆われ始めていた。
またまた頂上に戻り、8:35、硫黄岳発。登りと違い、今度はヒュッテ夏沢を見下ろしながら下ることになる。そのヒュッテ夏沢の屋根はけっこう近くに見え、とても行きに1時間掛かったのが信じられない。
登山道の佐久側は頂上の岩の縁からすかっと落ち込む火口壁になっている。その火口壁が眼下に下り、緑の森と接する辺りに屋根が見えた。あそこが本沢温泉なのだと思った。
雲が明らかに増え始めている。茅野側の視界は真っ白に覆われ始めていた。
夏沢峠に戻る間、ずっと峠方面からざわめきが聞こえ、小屋前に揃いのジャージ集団が見えていた。さっき登りですれ違った中学生の団体が小屋の前に集結していたのだ。
私の峠到着とほぼ同時に彼らが本沢温泉方面に下ってしまった後、再び静かになったヒュッテ夏沢前で自転車に再び荷物を積み、さっきのお兄さんにこれから本沢温泉へ向かう旨を伝え、ちょっと休憩して8:30、夏沢峠発。
夏沢峠からの下りはしばらく丸太段や石が多めの急下りで、ほとんど乗車できない。
森の中の静かな道を押しと担ぎで下り続けるのはなかなかしんどい。
が、原生林のような森にはやはり鳥の声が響いていて、苔生した幹の木々が迫り来るのも、登ってくる登山者と挨拶を交わすのも楽しい。
下っている間しばらく下の方から人の声が止まない。明らかにさっきの中学生集団だ。朝のオーレン小屋の中高年団体を見ていても思ったが、まあ団体行動というのもなかなか大変そうではある。
緑に包まれた木漏れ陽の細道がシャクナゲのジャングルに変わり、一度周囲が開けてから森の中を下りきると、足下に水が流れるちょっとじめじめした広場に出た。
広場の端から硫黄臭が漂い始め、草の生えていない砂原の先に「野天風呂」の看板が出現。無断入浴禁止とのこと、この下の本沢温泉でお金を払ってからでないと入浴できないようだ。
仕方ないのでまず本沢温泉まで下ることにしたが、この下りが意外に距離があり、登り返しはつらそうに思えた。
10:25、本沢温泉着。事前に勧められて楽しみにしていた本沢温泉だが、もはやこの時点で野天風呂へ登り返す気は無く、内風呂で済ませることにした。その内風呂はそう広くはなかったものの、やはり山の温泉らしい雰囲気で、水を混ぜたり沸かし直しもしていないという硫黄臭のお湯と共になかなか楽しめた。
風呂から上がってビールと言いたいところだが、まだ下りがしばらくあるのでここは我慢しなければならない。その代わり、少し腹が減り始めているのでカレーを頼んで中庭のベンチで食べることにした。
先に中庭にいた登山者と、本沢温泉の親父さんらしい方が真剣に上を見上げている。話を聞くと、頂上で今朝転落事故があったとのことで、救助のヘリコプターが頂上に来たり去ったりしているようだ。斜面が急なので、どうも現場に近づくのが難しいようだ。
朝頂上に登ったときにはそんな雰囲気は無かった。発見は私が下山を始めた直後ようで、かなりショックである。
記 2005.7/31