頸城の秋05 #1-2
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11:00、筒石発。いよいよ内陸へ向かう。筒石からもそっち方面へ向かう道はあるが、ちょっと戻った浜徳合からの道の方が集落を通って楽しそうなので、浜徳合まで少し逆戻り。
国道8の鉄橋が渡る高い谷間をぐいぐいっと登ると、やや斜度が収まったところで江代の集落だ。
山肌に張り付いて地形通りの形に道が続き、森と棚田の中に農家が点在するいつもの頸城の風景が周囲に拡がる中を、どんどん登ってゆく。民家が途切れても、棚田と森の中の登りが続く。
湾曲した山肌に張り付いた道からは、同じく山肌に張り付いて谷間を下って行く棚田や農村風景が見渡せる。下って行く谷の向こう側にはただ空が拡がっていて、海岸からすぐに山が立ち上がっているのを実感する。
景色が開けた日なたの道、日差しが暖かくすかっと濃い青空の太陽がまぶしい。集落や山々の木々は、やや色付き始めというところ。庭先の柿もまだそう目立たない。やはり今年の紅葉の遅さを感じる。
森が切れて民家が現れると、仙納である。山の中の斜面が緩い場所に、農家が寄り集まっている、小ぢんまりした山の集落だ。
山の中の日溜まりは暖かく、はさ木に赤とんぼが止まったり、路上でフキバッタが産卵していたりする。そろそろ開ききっているススキの穂もまぶしい。
仙納から先は、再び細道が山を伝って行く。次の集落高倉までは尾根越えで、今までより細くなった道はコンクリート舗装の激坂となる。
相変わらず道の周囲には棚田と森が連続するが、集落間が長いだけあり、捨てられてススキの茂みになってしまった田圃も目立ち始めた。
尾根部分を超え、森が切れると、正面に大きく高い山々の青いシルエットが突然登場。今までずっと登りだったためか、行く手の山々が遮られて見えなかったのだ。地図を眺めて方角から当たりを付けると、確かに見えなかったのが不思議な位の位置に高い山がたくさんあった。
近くのぼこっと巨大に盛り上がった山は鉾ヶ岳、権現岳。遠くには空中に向けてとんがった妙高山、これは地図を見ないでもわかった。今まで訪れたことがなかった西頸城だが、こんな近くにこんなに大きな山を眺められる、素晴らしい道があったのである。
景色が開けると日溜まりがとても暖かく、その暖かさを目がけてどこかから飛び出したテントウムシやカメムシが周囲に飛び回っていた。特にテントウムシはどういうわけかすさまじく多く、自転車を停めると、好奇心旺盛にも私と自転車に止まってくる。数10匹もたかられてテントウムシ相手に恐怖を感じたが、またすぐどこかへ飛んで行くので助かっていた。
高倉を過ぎる辺りから、お昼過ぎだというのに日差しは急に赤みを帯び始めていた。斜面に農家と田圃が密集する集落の景色のせいもあり、何となく早く宿に着かないと、という気になり始めるが、まあこの季節毎度のことではある。
しかし、確実に今日の行程の見込みは甘かったようだ。急な登りに細い道、途中からはコンクリート舗装の激坂が続くこの道をこなし、その先もいくつか山を越え、高田平野・牧から今日の宿「田舎屋」へ向かうのは、まず無理だと実感できるようになってきた。
おまけに、途中で例によって道間違いもあった。せっかく手前の農家のおばあさんに道を尋ねたのに、早まって谷底へ降りて行く道を選んでしまったのだ。田圃の途中で行き止まりになってしまった道を、再びえっちらおっちら登り返す羽目になった。
記 2005.11/17