頸城の春05#2-2
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県道257は谷も道自体も狭い。それでも「営業中」とだけ書かれた看板が立っていた。何が営業中かは不明だが、道の不安はかなり緩和された。そもそも、通行止めの看板が無いのである。
少し新緑の迫る道を谷の奥へ進むと、釣り堀が登場。ここが件の「営業中」の所以だろう。これで先行きの保証が少し無くなったと考えていると、案の定通行止めの看板が登場。
ただ、文面は「幅員2m以上の車両は通行不可能」とのことである。それなら行けるのかもしれない。それに看板の脇は軽自動車の通れそうな幅が確保してあり、タイヤの跡すらある。
その先で道は更に狭くなり、やがてダートに変わったが、何台か軽自動車と乗用車がやってきた。通行できるのかもしれない。
途中には落石や道の脇がずるっと崩れ始めたのが放置されていた。おそらくこれから道の修理が始まるのだろう。新緑の中をのろのろ進むと、周囲はやがて杉林に変わった。斜度が少し急になり始めたところで路面の砂利が急に深くなり、押しに切り替える。しかし、もうすぐそこが峠になっていて、軽自動車が停まっているのが見える。
10:55、そのまま峠部分を通過。
峠のすぐ向こうから始まるだらだら下りの細道に棚田が登場、周囲が拡がって、山間ののどかな人里の谷根到着。
米山の日本海側裾野だけあって、さすがに広々とした高原風の野田辺りとは雰囲気が違う。ここでも田植えで農家は大忙しだ。集落の中央、谷根川には雪解け水がかなり勢いがいい。
これからしばらく米山の中腹を反時計回りで進む。地図ではこの先の小杉から蕨野まで、蕨野手前の数百mが破線になっている。破線だと山間のダート細道だと思うが、寺に神社に田圃のマークがるので、行って行けないことは無さそうだ。
念のため、小杉への分岐で農家の庭先にいたおじいさんに聞いてみると、
「うーん、蕨野は無人になっちゃったからねえ。通れるかなあ。わからないよ。通れなかったら、小杉の採掘場の道で国道8号にすぐ出られるよ」
とのこと。道の無かった昨日の大出口の何百mかが通れるようになっていたのとは、多少事情は違うようだ。
だが、不明ならとりあえず行ってみよう。通れなかったら国道8に降りるだけだ。
森、棚田、畑が激坂に続き、さっき話に聞いた採掘場の山肌が上の方に見えてきて、しんどくなってきた辺りで11:30、小杉を通過。
国道8号への分岐付近で、もう一度農家の方に道を尋ねる。が、この先の吉尾から向こう側は、もう何年も通っていないので不明とのことだった。
一旦下り始めた道がその吉尾で急に細くなり、その先が茂みへと向かっていた。近くではもはやどこが道だか全くわからないが、ちょっと離れた山腹には地図と照合可能な茂みの段差がわかる。典型的な廃道だ。
大人しく小杉まで登り返し、海岸線へと下る道に足を進める。
集落から尾根上に登り返す幅広ダートは、まさしく採掘場のダンプ道路である。もうあまり海岸線まで距離が無いので下りたいのに、しばらく尾根上に登り基調のダートが続く。
海が見え始めていきなり始まった激下りは、ダートと舗装が入れ替わり、舗装部でも不安定な路面が続く。ブレーキレバーを握り続ける手が疲れた。こんなところもいかにもダンプ道路っぽい。平日、真っ黒な排気ガスを吐き出しながら、轟音と共に大型ダンプが登り下りする姿を想像した。
12:25、ようやく笠島まで降りて、国道8を横断。
目の前の、掘り割りやトンネルで豪快に地形を突っ切る国道8と、高速&大音響で通り過ぎる大型車の列に、「こりゃあダメだ」と思った。
幸い国道にほぼ並行して旧道がある。ちょっとしたアップダウンも楽しそうな、集落に岸壁の道だ。
入り組んだ地形に沿った旧道へ進むと、岩場では切り立った岸壁に真っ青な日本海が、ちょっと内陸では田植え中の棚田や農村集落が楽しい。山側には新緑も鮮やかな米山が、太陽が出たり曇ったりの逆光の中に見える。
やがて急降下、谷間をダイナミックに鉄橋で横切る国道8を見上げながら、海岸の上輪の集落へ。
いかにも日本海沿岸らしい、何だか物寂しい集落も、今日は春の日差しで暖かな雰囲気だ。
上輪の外れで道は再び登り返すが、登りかけたところで海岸沿いの細い舗装道路に気が付いた。これ、自転車道じゃないのか。道はそのまま岸壁に突き当たると、ちょっと古びたトンネルで岩を抜けるようだ。見たところそのトンネルは古びてはいるが、閉鎖されているという雰囲気は無い。
これ、どうも信越本線の旧線っぽい。話の種に進んでみることにした。
細道の実態はサイクリング道路そのものだった。素性も旧信越本線で間違いないだろう。以前のランドナーOFFの時にも走行レポートがあった、旧北陸本線の自転車道とは、本来シリーズ的な扱いをされて然るべきものだろう。
ただ、トンネル出口が海岸の砂で半分以上埋まりかけていたり、ところどころちょっと荒れ気味だったり、管理状態はあまり良くない。さっき見た、閉鎖されちゃいないが、多少寂れている印象そのままである。あるいはこれから、夏に向かって一気に手が入るのかもしれない。
真っ暗なトンネルに慌ててライトを付けたが、トンネルのカーブの向こうは実は意外と短かった。12:55、再び外側に出ると自転車道の終点である。その向こうに日本海と信越本線の米山駅、米山の集落が拡がっていた。
記 2005.5/23