2005.10/2
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(以上#2) |
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深い谷底まで一気に下りきると、北湯ノ川を渡る小さな橋で道は登り返し始める。少し先で高い山々に挟まれた谷を蛇行する湯ノ川へ流れ込む北湯ノ川は、しかしながらまだ小さな川だ。コンクリートの堰に覆い被さる広葉樹、その向こうの緑の山姿は何とも静かで山深い。思わず足が止まる。
もう12時半を回っていた。この後奈良田から夜叉神峠へ向かうためには、大まかに奈良田12時着というイメージがあった。が、櫛形山林道のボリュームと、これから先の登り返しの2つの見込み違いで、奈良田着は13時を確実に過ぎることだろう。もしかしたらある時点で夜叉神峠を諦めるような判断をしないといけないかもしれない。
まあ例によって例のごとく、悩んでいても始まらないのである。もう少し先で判断せねば。
登ってみれば登り返しはそうボリュームは無い。
登り返しが終わってくるっと折り返した辺りでは、さっきの橋では沢のようだった谷底の川が、もはや底もなかなか見えないほど落ち込んでいる。
いきなり山深い雰囲気になってちょっと驚いたが、地図を見ると何と標高差500m以上になっていて更にびっくり。
その先突入したつづら折れ下り部分では、以前見たことのある奈良田湖の水色の水面、そして奈良田の発電所が時々正面の下部に見えた。今度こそ奈良田だ、と思った。
時間は13時過ぎ、この分だと今後夜叉神峠から甲府盆地に降りてちょうど暗くなるぐらいだろう。行ける。
最後に木々の覆い被さる狭い道を一気に下りきり、13:15、県道37に合流。
合流点にはガードマンのボックスが建っていて、中から出てきたガードマンが「こんにちは」と挨拶してきた。こちらも挨拶を返すが、行く手の道に立っているバリケードに気が付いた。自転車は通行可能なはずなのに。
「自転車、通行可能ですよね」
「ええ、でもこの先行って帰ってになるよ」
「え?夜叉神峠も季節通行止め解除じゃないんですか?」
「いや、今年から自然保護ってことでマイカー規制になって、自転車もダメになったんだよ。その割にはタクシーと路線バスはOKなんだけどね」
…この後の予定が一気に崩れてしまった。
一方で、どうもさっきの登り返し辺りから、空には急に雲が増えて始めていた。それも南アルプス方面から、どんどん雲が押し寄せているのである。夜叉神峠へ行けないのは少し残念だが、このまま夜叉神峠へ行っても、肝心の南アルプスは雲に隠れてしまっているだろう。
というより、雲が押し寄せているだけあり、強い風が谷間にも吹き始めている。先のガードマンによると、
「さっき無線で話したんだけど、上の方じゃ凄い風だって。こりゃ今日は来るね」
とのこと。
となれば長居は無用だ。
そのまま野呂川の谷間をどんどん下ると、案の定時々水滴がぱらついてきた。
しかし、谷間が開ける新倉辺りから、前方の雲の中に明るい空が見え始めた。もう十分下ったということなのか。
時間があるので、途中ではいつも指をくわえて通過する「そば処アルプス」に立ち寄ってみた。腰の強い硬めの蕎麦が美味しい。
15:59、波高島着。時刻表を見ると16:05に甲府行き普通列車がある。その後は何と1時間以上間が空いてしまうようだった。
到着早々だったが、泡を食って即輪行開始。
記 2005.10/13