2005.4/17
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(以上#2) |
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時刻は14時半を過ぎ、そろそろこの先の身の振り方を考えないといけなくなってきた。
当初の希望は、大野峠から白石・定峯峠を経由、粥仁田峠から秩父高原牧場へ。満開の桜並木道で締め、小川町へ下るというものだった。しかし、この分だとまず確実に定峯峠着で16時過ぎ。小川町着は19時前になってしまうかもしれない。この季節、19時前でも明るくはなってきているが、一抹の不安は残る。
18時から東京方面で別件の会合もあり、グリーンライン経由で西武秩父線方面の高麗川の谷に下る案が俄然浮上しつつあった。こっちだと久しく足を向けていないし、程良く登り返しもある。すべての面で都合が良かった。
周囲は開け、眺めは次第に良くなる一方だが、足を停めると細かいブユの出来損ないみたいな虫が一斉に寄ってくる。出来損ないなりに、身体に止まった虫は血を吸っているような気もする。ちょっとでも進んでいると虫は止まってこないようで、そんなわけで足を止めて休むわけにはいかなかった。
あずまやの先、最後の長いつづら折れから県民の森駐車場を過ぎると、ようやく下りが始まった。丸山林道の最高地点を通過したことになる。
最後のおにぎりを腹に押し込み、15:30、大野峠発。もうあまり悩まずに、グリーンラインに向かう。
下り基調の道からは、都幾川村の激坂集落舟の沢がよく見下ろせる。こぢんまりとまとまりの良い集落には、今日見てきた山里の例に漏れず、やはり桜がよく目立つ。しかし、もうそっちに向かうわけにはいかない。
苅場坂峠のりんどう茶屋でちょっと休憩。さっきのおにぎりではまだ物足りないような気がしていたので、ここでペヤングソース焼きそばを食べることにした。中学生のころ、顔が四角くて「ペヤング」などと呼ばれていた友人を思い出しながら食べる焼きそばは、昔から変わらぬ安心の味である。
16:00、苅場坂峠発。暑さを感じるほど暖かかった日中と較べ、思いがけないほど気温が下がってきた。ただ下っていると身体が冷え切ってしまうが、適度な登り返しで体が温まって都合がいい。
その道も途中からは下る一方となる。細かいカーブの多い細道下りはジェットコースターのようだ。閉鎖的な杉林に、木々が切れて開ける両方向の展望。オレンジ色がかった夕方の空の中で、次第に青いシルエットに変わって行く山々。
近くなので馴染み深く、あまりありがたみを感じないグリーンラインではあるが、やはり自転車乗りにとって超1級の林道である。
顔振峠着は16:25、とりあえずあてずっぽの希望観測通りに着けた。だいたい麓まで30分弱ぐらい、ここから吾野へ降りるのが適当だろう。
顔振峠からは、すぐ下の風影が、集落が花に埋まってしまう程花が一杯咲いているのが見えた。
はたして吾野方面の道を下り始めると、開けた斜面の道にも、農家の庭先にも、桜をはじめ春の花が一杯だ。山桜、枝垂れ桜、夕方のオレンジ色の空へ桜吹雪が舞って消えてゆく。
その賑わい、春一杯の鮮やかな風景に、今日通ってきた集落をまた思い出す。奥武蔵の春は本当に素晴らしい。
一気に激坂を下りきり、国道299に合流。国道299も拡幅が完了してだいぶ経つが、昔のダート細道からは想像も付かない普通の国道になってしまった。でも、この吾野の町中は、その昔の国道299を思い出す町並みが残っている。
16:55、吾野着。ちょうど飯能行きの普通列車が出発するところだった。誰もいなくなった改札脇で、黙々と輪行作業するのもまた楽しい。
記 2005.4/20