(途中まで#2-1)(国道193)剣山スーパー林道分岐 |
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木頭の外れから本格的な登りが始まる。いくつかトンネルを抜けながら相変わらず広い道が少し続くが、谷が更に狭く深くなるとともに、四国らしい細道に変わった。
その細道の続く谷が、切り立った岩壁で突如遮られると、大轟の滝である。滝は岩を回り込むように流れ出していて、下から豪快な岩場と滝を眺めることができる。
国道の細道は岩の壁に張り付き、岩壁に阻まれた谷を見下ろしながら、3段のつづら折れ激坂で一気に岩壁を登り切る。登り切った岩のてっぺんの隙間を抜け、一度少し拡がった渓谷をまた遡る。
その先の大釜の滝手前では、再び細道が岩壁に張り付いて岩の隙間をくぐり抜けるような道となった。その岩がまた見上げると頭上にオーバーハングしているかのようにすら見える程、切り立った高さのある岩なのだ。滝を挟んで正対する岩も、高さ・ボリューム・質感と言いど迫力だ。渓谷も、見下していると落っこちそうで、多少恐怖を感じる。
思えば前回、確かに楽しかった印象はあるが、一気に下ってしまったようで、これ程のインパクトは記憶に無い。そういう先入観で来る方がじっくり眺められるぐらいの、迫力満点の風景だ。
大釜の滝から先、渓谷が再び拡がった。渓谷とはいえ、もう道路との落差は無い。さっきのような恐怖を感じることは無くなったが、坂の斜度はさらに厳しくなっていた。標高が上がっただけあり、新緑が生い茂る初夏のような下界の風景とは違う、春先の風景がそこにあった。例によって青緑色のようなカラマツも目立ち始めていた。
10:15、剣山スーパー林道分岐到着。見上げると、土須峠へはまだ少し登るようだ。いや、地図では少しなのだが、けっこう高い位置にここから続いているはずの道が見える。
そのままスーパー林道に入ると、こちらももはや12〜3%程度はありそうな激坂が続くようだ。
突然、雨が降ってきた。いや、それまでも時々水滴程度は感じていたのだが、今回のはぱらぱらとはいえ「雨」と呼べる程度のものだ。多少強いぐらいだった冷たい風も、かなり強く吹き荒れるようになっている。見上げると、山の上の方が急速に暗い雲に覆われ始めていた。
何台かのオートバイが通り過ぎていったが、この辺が潮時だと思った。今回は引き返そう。
スピードを出しすぎないように注意しながら、今まで来た狭い道を戻る。登りが厳しく長かった分、斜度が急でボリュームもあり、なかなか下りごたえがある。大釜の滝と大轟の滝、それぞれ迫力のある渓谷の部分は、それぞれが地形の落差の一番上の部分で岩の狭い隙間をくぐり抜けるので、上の谷底まで下りきってまた広い谷間に放り投げられるようだ。空は相変わらずどんよりと暗いが、とても楽しい道だ。でも、晴れているともっと楽しいのだろう。2001年の土須峠の下り、新緑が輝くような下りが印象に残っている。
いつの間にか道は広がって下りの斜度が緩くなり、木頭の集落を抜けて板州木頭川沿いに進み、11:20、出会橋着。結局登って下って3時間。この後は激細の国道192で海岸に抜け、前回から懸案の室戸岬を周回して奈半利あたりから高知まで輪行する、という手もある。しかし、今から海岸まで下りきって、早くても14時か、妥当な線だと15時前ぐらいがいいところだろう。その後も室戸岬を回って奈半利まで、結構ある。この雲行きだと海岸沿いの強向かい風で、さらに遅れるかもしれないのだ。
明日以降の旅程もある。ここは大人しく高知直行にしよう。大人しく高知直行とはいえ、まだ高知までは100km以上、徳島と高知の境の四つ足峠まででも30kmぐらいあるのだ。
前回貯水量が少なくて、地表に現れた川底が何とも異様な表情だった那賀川の長安口貯水池は、今回は満水である。山間に蛇行するその豊かに湛えられた水際を、国道195はトレースしてゆく。
所々では新しいトンネルや橋で小山や川の湾曲した大回り区間をダイナミックにショートカットする。そうかと思えば、次第に高度が上がった辺りでは突如道が狭くなったりする。朝のうちに通った下の方では、広い道にやや埃っぽい表情があったが、こっちはなかなか楽しい道だ。国道195はこういう区間があるから交通量が意外に少ないのだろう。
途中で雨がほんの少しだけぱらつくことも何回かあったが、雨宿りが必要なほどではなく、何とか県境まで首の皮一枚で切り抜けつつあるようだった。
記 2004.5/8