11:10、大弛峠発。ここから先、長野県側は下りきるまでほとんどダートである。にも係わらず、峠の縦列駐車は長野県側にも、最初のつづら折れを折り返す辺りまで長々と続いていた。
つづら折れの3つ目辺りまでかなり荒れたダートが続き、その後は次第にガレ方が収まってくるのはいつも通りだ。しかし、こっち側でも生い茂る夏の緑が、道の雰囲気を賑やかなものに変えている。また、生い茂った木々に阻まれて、以前は確かに木々の間に下界の高原野菜畑が眺められた場所でも、何も見えない場所が今回は何ヶ所かあった。
少し下ると、5月や6月には新緑のカラマツが並木のように続く、いつも楽しみな場所がある。ここでも今回はそのカラマツが頭上まで生い茂り目の前まで垂れ下がり、濃い緑のトンネルを作っていた。
高度が下がると、木々はますます勢い良く生い茂っていた。峠ではあれだけ涼しかったはずなのに、気温もどんどん上がっている。微妙な空気のバランスで空気が溜まるのか、時々急にむわっと来るのがおもしろい。
木漏れ陽の緑色の中、やがてつづら折れが終わるところでダートが舗装道路になり、開いたゲートを問題無く通過。
キャンプ場を過ぎて急に周囲が開け、今まで周囲を包んでいた大森林が終わって高原野菜畑が拡がった。川端下まで降りてきたのだ。
北海道のような広々とした高原野菜畑は、朝から通ってきた山の中の風景とは大分印象が違う。
もはや完全に暑さを感じながら、千曲川上流の梓川の谷まで下りきる。
12:45、梓山着。いつもの休憩所、ヤマザキデイリーストアで店内を見回すと、弁当におにぎり、総菜など、およそコンビニ休憩で補給しておきたい物のすべてがある。かつての「とりあえずおにぎりで食事にはなりそう」という状況から大きく進歩しているようだ。
今回はとりあえず食事も水分も十分持っていたので、手持ち無沙汰に店をぐるっと一回りした後、店の外で自販機コーヒーを買った。自分でも何のために店に入ったかわからない。
集落を抜け高原野菜畑が終わると、谷の終点で道は折り返し、そのまま三国峠への峠道が始まる。さっきまでの標高差1100m下りで脚が落ち着いてしまっているので、登りでもだらだらで木陰が多いのが有り難い。
山腹を巻きながら広葉樹やカラマツの中を抜けて行くと、6月にはやかましいぐらいにセミが多いのに、今日は暑すぎるのかセミの声も頼りない。
峠近くでは、木々の間にさっきまで通ってきた梓山が見下ろせた。谷間の雲は低く、何と無く薄暗くなってきていたが、意外にも空気があまり霞んでいない。埼玉県の天気予報は1日中晴れだったので、この後の中津川林道に期待しながら登る。
14:00三国峠着。有名な峠の切り通しを越えると、大滝村側の山々が一望にできた。雲の密度は高いものの、この暑い日に意外にも空気は澄んでいて、鮮やかな濃い緑を纏ったもこもこの岩山、落ち込んだ谷がどこまでも彼方へ続いて消えて行くのが比較的クリアに見えた。どこまでもどこまでも視界の彼方へ続く大森林、力強い岩。埼玉の中程ぐらいまで、こんな山々が延々と続いているのだ。
三国峠の標高自体はさっきの大弛峠より低いが、この風景とこの先の中津川林道こそ、今日のコースのハイライトなのである。
梓山よりは大分涼しい峠の風に吹かれながら、しばらく久しぶりの奥秩父の山々を眺める。いつ見ても迫力を感じる山並みは素晴らしい。おまけに今日は山々が夏の緑に覆われ、その緑が陽射しを受けて活き活きしている。
記 2004.7/25